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あなただけが知っている「好きを仕事に」する方法

もう、うんざりなんですよ。
「好きを仕事に」ってメッセージ。

だって、今耐え忍びながら頑張ってる時にこれが目に入ったら、自分のことを否定されてる気がしません?  雇われの身を抜け出して、自分の人生を生きるんだ! っていうポジティブさは素敵なんですが、その裏側にある「好きなことを仕事にしたら、楽しくなるはず」という切ない願望がちらっと見えると、ううっ、辛いんです。そこまでして仕事しなくちゃいけないの? って。

こんなことを冒頭から書くわたしは仕事が好きじゃないのかというと、逆に大好きです。自慢ではなくあくまで事実として聞いていただけたらと思うのですが、わたしは独立して12年、自分が代表を務める会社はもうすぐ8期目。フォトグラファーとしてキャリアを築き、自分のスタジオを都心に構え、誰にも強制されることなく自分のペースで生活を送っています。肝心のお金の自由は、まだまだですけど。ともあれ写真を撮ることは好きで得意な方なので、「好きを仕事に」できたという意味では、成功者です。

そんな自分が世の中の「好きを仕事に」を見渡した時、ざらりとした違和感が拭えませんでした。言われていることは正しいのだけど、どこかぼやけた感じというか。
「好きを仕事に」が声高に叫ばれだして結構経つのに、どうしてまだ辛そうな人が多いんだろう? そこで自分にとって「好き」の解像度を高めていったところ、気づいたのです。

自分の欲しいものを知らないと、幸せは遠回りになる、と。

「好きを仕事に」論者がよく挙げるメリットは「好きなことなら辛い仕事も楽しくなって、収入が上がる。そうなると幸せな人生が手に入る」ということです。

一見正しいです。
というか、実際その通りです。

が、わたしの違和感はここにありました。

「幸せな人生」って、それ?

たしかに、辛さが消えて、収入が上がったら、できることは増えます。
選択肢は多ければ多い方が、正解を選び取る確率は高くなります。

例えば、あなたはお昼ご飯を食べに定食屋に行きました。
ちなみにわたしは大戸屋の常連です。
お昼時、程よくお腹がすいたあなたはメニューを開きます。
ミックスグリル、焼き魚、サイコロステーキ、野菜炒め、食欲をそそる熱々料理がならんでいます。手持ちのお金が増えれば、メニューの中から好きなものを注文することができます。

満足度はこの時点でまあまあ高いですね。
ところが、落とし穴がありました。

実はこの日、あなたは冷やし中華が食べたかったのです。
あまりにも暑すぎて、本当は冷たい麺を勢いよくかきこまないと満足できない体でした。

熱々の定食を平らげて、店外にでた時に向かいのポスターに気づきます。
「冷やし中華 750円」
ああ、冷やし中華が良かったな…

冷やし中華が食べたいと分かっていたら、最初から街中華に入ったのに! もう、後の祭りです。実際に目の前にきっかけがあれば、ああ、それが欲しかった、と認識することはできますが、後の祭り。ぼんやりと何か食べようかな、ではダメなんです。定食屋に席をとってメニューを開いた時点で、本当の望みは絶たれました。自分は何が食べたいのか、具体的にイメージしなければならなかったのです。

「好きを仕事に」も、同じことが言えます。

自分の幸せとは何か。
好きなことを仕事にすることで本当にそれは叶うのか。
今一度、自分を疑ってみるのも悪くありません。世の中の流れが止まった今ですから、立ち止まって自分を疑ってみるのも一興です。

仕事を楽しくしないと、幸せになれないのでしょうか?
楽しいことは人生に不可欠だけれども、それが仕事じゃなくてもいいんじゃない?

好きなことをして生きているわたしの場合、仕事はフォトグラファーということになっています。というのは、やっていることがたくさんあるから。これまでフリーランスや自分の会社でお金をいただいた経験をあげてみると、ライター、ヘアメイク、イベントオーガナイザー、芸能プロデューサー、人材コーディネーター、補助金コンサル。散らばってますよね。何の人だかさっぱりわかりません。

でも、自分の中では「好き」なことで一貫しています。

なぜかというと、この散らばった経歴の底を繋いでいるのは「自由」。

好きな時に、
好きな事を、
好きな人と、
好きなだけしたい。

一見傍若無人な自由奔放ぶり。
それが、わたしの「好き」です。
具体的な肩書や職種はありません。

社長をしているのも、それが自分の「好き」を実現させるのに一番都合が良いからで、会社を大きくしたいなどの一連の上昇志向とは無縁です。

もちろん、仕事が大変そうだと周りから見られる時もあります。実際、リスクやプレッシャーは常にあり、タスクに追われて忙殺されることも珍しくありません。でも、それも心のどこかで楽しめてしまうものです。だって、好きな事だから。

それこそが「好き」の力に他なりません。

わたしの場合は「自由」が原動力となっていますが、人によってそれは様々ですよね。

素敵な人と出会いたい。
自分を高めたい。
刺激的な日々を送りたい。
自分を認めて欲しい。
安定した環境でのんびり暮らしたい。
誰にも会わないで何もしたくない。

どんなに突拍子もないことでも、自分勝手に見えることも、その人の心の中心に根ざしているものこそが正しいとわたしは思います。

「好きを仕事に」できたら最高ですが、それには自分が心から求める「好き」と、手段としての「仕事」がマッチしていることが必須です。ここがずれている場合、目標は達成したのに満たされなかったり、途中で燃え尽きてしまう悲劇が必ず起こります。

もし、あなたに今イメージしている「好きを仕事に」があったら、自分にインタビューしてみてください。

自分はどうなりたいのか?
どんな状態が心地良いのか?
何が自分を駆り立てるのか?
もしかしたら、仕事以外でもそうなれるのではないか?

好きを仕事にすることは、正しい方法の一つではあります。
でも、それが今の自分の問題を解決するとは限りません。

世の中には優れた本や講演が多いので、大まかな指針や心の支えとして大いに役に立ちます。成功した人が発信しているものは、たしかにその人にとっての正解です。

だけどそれは「あなたにとっての」答えではありません。

答えは自分の中にあります。
さあ、問いましょう。

自分にとっての「好き」って、何だろう?

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