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プロテストはだれのため?

放浪の末にオレゴン州ポートランドにたどり着き、住み始めて3年目に突入。映画AKIRAのように荒れるアメリカの情勢の中、日々生きる希望をポートランドでコツコツ集めている。住む街のいいところを見つけることは、わたしの人生のいいところを見つけること。1988年生まれ、鎌倉育ち。


無料で配られていたポスター

イスラエル軍によるガザ侵攻が始まった10月7日以降、わたしはInstagram にくぎづけになっている。大手メディアを介さない、パレスチナ人による現地の情報を、リアルタイムで見つけることができるからだ。

インターネットやInstagramで得られる情報量はほんとうに圧倒的だし、見すぎもよくないとは思いつつ、「強者」でなくても、自らの手で真実を世界に届けられる時代になったのだな、と、時代の変化を強く感じている。

空爆によって破壊されるガザの街並みや、病院、そして、攻撃能力のほとんどなさそうな子どもや妊婦までが死んでいく様子をInstagramで見ていると、「イスラエル側の正当防衛」とはとてもじゃないけど言えないと思った。

しかし、わたしが住んでいるアメリカは、日本円にして約2兆円をイスラエルへの緊急支援として計上することになった。働いても家賃が払えない人たちや、医療や学費の高騰で苦しんでいる人たちがたくさんいるのに、なんで海外で人を殺すのに、国家予算を使わなきゃいけないんだろう?

この状況を、iPhoneでただ眺めているだけでは、無力感に押しつぶされそうになる。そう思って、最近は一週間に一回くらい、パレスチナに連帯を示すための、プロテストに行くようになった。

政治的な集まりに行くのは本当はちょっと怖かった。色々な考えの人がいるだろうし、極端な思想に巻き込まれたらどうしよう…とか、そんな心配もしていた。

みんなで練り歩く

わたしが実際に行ってみて感じたのは、人のあたたかさみたいなものだった。クッキーや、サンドイッチ、飲み物を無料で配る参加者もいれば、プロテストに参加する人が安全に行進できるように、交通整理をしてくれる人もいる。ケガ人が出たときのために、救急セットを持ち歩いている人も。何回か顔を出すうちに、顔見知りみたいなものもできる。

毎回、集まる人々の多様性にも心を打たれる。パレスチナ系アメリカ人はもちろん、ユダヤ人たちもやってくる。ネイティブアメリカン、アジア人、黒人、白人など、人種もさまざまな人たちが、「パレスチナ人を殺すなかれ、パレスチナを抑圧から解放せよ」と集う。ユダヤ人の人たちや、LGBTQ+の人たちは、パレスチナを支持すると仲間や家族など身内から批判されることが多いと私は聞いている。彼らは、そのリスクを選んでまでプロテストにくる。年齢層も、子ども、学生、社会人、老人まで幅広い。車椅子の人も来ている。

こんなに色々な人が同じ場所に集まるのは、多様性で有名なアメリカでも、なかなかないことなんじゃないかと思う。

プロテストに行ってもう一つわたしが強く感じたことは、自分の意見やものの見方を形作るプロセスには、孤独がつきものだということ。そして、同じ考えを表明する人と集まることによって、その孤独はやわらぐということだ。

一緒に声をあげていく

インターネットを通じて、SNS、ウェビナーなど、外に行かなくても、世の中で起きていることや社会問題について、たくさんの情報収集ができるようになった。

でも、そのサイバースペースから自分のリアルの生活に帰ってきたとき、誰が自分と同じ価値観で生きているか?誰と話を共有できるか?全然わからなくて、わたしは戸惑うことが最近多くなってきた。

勇気を出して、気になってるソーシャルイシューを話題にしても、空振りしたり。そのうちに、当たり障りのない会話を選ぶ自分が嫌いになったり、わたしの周りにはわたしと同じ興味をもつ人っていないのかな?と寂しさを感じたり。何かに興味を持てば持つほど、それと同時に疎外感も感じてしまう。

でも、プロテストに行ってパレスチナの今の状況について、「やっぱり、これを黙って容認はできないよなあ」と思っているたくさんの人たちと、リアルの世界で交差できたことによって、なんだかわたしはとても安心したのだった。自分と同じ思いを抱えている人は、画面の向こうだけじゃなくて、わたしが暮らす街にもいるんだ、と。

だから、パレスチナに連帯するためのプロテストに行くのは、もちろんパレスチナのためではあるけれど、パレスチナのことに関心がある自分のためでもあるんだと、今は考えている。


プロテストでもらったひよこ豆のサンドイッチがおいしかった度
★★★★★(☆5つ中5つ)




はじめまして!アメリカに住んで約11年のNanaoです。ポートランドで日々コツコツと楽しみを見つけて生きてるよ。もしよかったら↑のリンクからInstagramも見てみてね。