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ポートランドまで369マイル

放浪の末にオレゴン州ポートランドにたどり着き、住み始めて3年目に突入。映画AKIRAのように荒れるアメリカの情勢の中、日々生きる希望をポートランドでコツコツ集めている。住む街のいいところを見つけることは、わたしの人生のいいところを見つけること。1988年生まれ、鎌倉育ち。



2021年の4月。コロナが流行り始めてちょうど1年が経ったころ、そんなに多くはない家財道具の一切と、飼い犬の餅と私たち2人を、愛車のJEEP Libertyに詰め込んだ。6か月間お世話になったフロリダのおばさんの家を出て、アメリカを横断しながら、ポートランドを目指す。

家もない。お金も大してない。わたしはそのとき占星術師として、フリーランスで働いていたけれど、パートナーのマックスは、コロナが始まってから1年間も就職活動を続けていた。

どうする?何か月も2人で話し合ったけれど、いつもケンカになって終わるか、お互い不安で憂鬱な気分になるだけだった。話し合いで彼の仕事が見つかるわけでもなければ、急にお金が増えたりするわけでもない。

でも、2021年の春が来て、もう居候を続けるのは無理そうだ、ということで2人の意見が一致した。いつまでも居座ることで迷惑をかけているし、そろそろ、自分たちのスペースで、自分たちのペースで生活がしたかった。

どうしよう?
これからどこに住む?
オレゴン州のポートランドにしようか。
今までアメリカで訪れた街の中で、一番好きだったじゃない?
ご飯が美味しい、人々がユニーク、自然が豊か、海に近い。

じゃ、そうしよう。
この先について何の見通しも立たないけれど、どこかへ引っ越さなきゃいけないなら、せめて好きな場所を目指そうということになった。
ほとんど何もないからこそ、自由に住む場所を選べる。
そうポジティブに考えることにした。

私の占星術師として稼いだお金と、残っていた貯金を全部使うことになった。退職資金の一部も解約して引っ越し代に充てることにした。

ポートランドにたどりついても、フリーランスでは賃貸契約が結べないだろうし、生活費も足りないから、マックスの仕事がすぐに見つからなければ、かなり大変なことになるだろう。色々な事情で、戻れる場所ももうないのだから。

お金のこともこれからのことも、コロナが流行っている中で旅をすることも全部怖かったけど、アメリカの南東にあるフロリダから、北西にあるオレゴンまでのロードトリップを考えると、やっぱりワクワクした。

その旅路に関しては、これからおいおい書いていきたいと思う。

一か月間、色々な場所を訪れながら、ようやく北カリフォルニアのシャスタにまでたどり着いた。ここが、ポートランドに到着する前のラストストップだ。実は、シャスタは10年ほど前に新婚旅行でたずねた場所でもある。

背の高い木々の森、豊かな水量をほこる滝、どこまでも透明で静かな湖。そして、雪を抱いてやさしくそびえたつシャスタ山。すべてが変わらず美しかった。ここに住んでもいいかなあ、と思ったけれど、やっぱりちょっと田舎すぎるんだよな~。まあ、ポートランドに定住できれば、車で来られるから住まなくてもいいかな。

数日間楽しく滞在して、そして、ついにシャスタを出発する日が来た。
ポートランドでしばらく暮らすためのAir B&Bは借りておいたから、そこを目指して7時間のドライブ。

シャスタの街を出て、高速に入ると、緑のロードサインに「ポートランドまで369マイル」と書いてあった。あと369マイルで、人生の次のチャプターが始まる。かもしれない。美しいシャスタ山があっという間に背後に消えて、見えなくなった。

この出発の日、ちょうど、藤井風の「きらり」がリリースされた。さっそくブルートゥースで繋げてカーステレオで聴く。

荒れ狂う 季節の中も 群衆の中も
君とならば さらり さらり
新しい日々も 拙い過去も 全てがきらり

無くしてしまったものを振り返って ほろり
時には途方に暮れてただ風に吹かれて ゆらり

息せき切ってきたの
行き先は決めたの
迷わずに行きたいけど保証はしないよ
何か分かったようで
何も分かってなくて
だけどそれが分かって本当に良かった

藤井風『きらり』」


マックスはいつも安全運転。だから、7時間より長くかかるかもなあ…
でも、どんなときも、決してスピードを選ばない彼のことを、私はとても信頼している。
餅ちゃんはポートランド気に入るかなあ?
たぶん、大丈夫。

これから先どうなるかなんてわからない。
車の窓から入る、5月のカリフォルニアの爽やかな風が気持ちいい。今はそれでいい。

ポートランドについて3日後、ポートランドの会社から、マックスに内定が出たのでした。


はじめまして!アメリカに住んで約11年のNanaoです。ポートランドで日々コツコツと楽しみを見つけて生きてるよ。もしよかったら↑のリンクからInstagramも見てみてね。