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ポートランドにはAfuriがある(1)

放浪の末にオレゴン州ポートランドにたどり着き、住み始めて3年目に突入。映画AKIRAのように荒れるアメリカの情勢の中、日々生きる希望をポートランドでコツコツ集めている。住む街のいいところを見つけることは、わたしの人生のいいところを見つけること。1988年生まれ、鎌倉育ち。


海外に旅行するとき、誰だってその土地ならではの食事がしたいと思う。
ポートランドに来たなら、アップルサイダーや、クラフトビール、そしてファームトゥテーブル的な、ポートランド近辺でとれた新鮮素材を使った食事だろうか。

旅の途中、慣れない味につかれてきたりして、日本人なら日本食を探したりもするだろう。けれど、「ここに来てよかった」という充実感は、その土地の文化や環境にねざしたものを飲み食いしてこそ生まれてくる。だから、ちょっと舌や胃腸がつかれてきていても、旅がつづいている間はがんばってまた現地のものを食べようと思うのだ。

しかし、海外に長期間、期限の区切りなく住むと、その辺の感覚は少し変わってくる。帰国日までは現地の食事を思いっきり楽しんで、日本帰ったら日本食食べよう~とはいかないのだ。

「この場所ならではの食を通じて、ここにいる実感がほしい」というモチベーションは、もちろん継続して心の中に存在している。

しかし、海外暮らしも長くなると、それよりも、時折りわきあがる、「故郷の味が食べたい」という欲求の方が、はるかに大きく、切実さをおびてくる。

その欲求は、慣れた味でほっとしたい、祖国をはなれたさみしさを和らげたい、海外の暮らしなんかつかれた、という「安心を求める気持ち」と結びついているから、切実なのだ。

この欲求を満たさなければ、すぐに「コンナトコロニイルノハイヤダ」「もモウムリ」と、海外暮らしのダークサイドにおちていく。それはつらい。

肉じゃが、カレー、味噌汁なんかだと自分でつくってやりすごすこともできるが、むずかしいのは「本格的なラーメンが食べたい」となってしまったときだ。これはむずかしい。本格的なラーメンスープと、本格的な麺は、よっぽどのやる気と時間と練習がないと、なかなか自分じゃつくれない。

ラーメンは、アメリカでも知名度がある日本食メニューで、ラーメンの店自体はたくさんある。アメリカに住んで10年、わたしもたくさん試してきた。でも心から美味しい、と思えるラーメンは本当に少ない。アメリカ人は熱々のスープは苦手なのか、とにかくぬるい。しかもスープがなぜか甘い。麵も具もそんなに美味しくない。イケてないのに値段は高いアメリカのラーメンを食べると、「モウホントウニムリ」とダークサイドへ進む勢いがますます加速してしまう。

しかし、ポートランドは違った。
ポートランドには、Afuriがあるからだ。

(つづく)



はじめまして!アメリカに住んで約11年のNanaoです。ポートランドで日々コツコツと楽しみを見つけて生きてるよ。もしよかったら↑のリンクからInstagramも見てみてね。