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【小説感想】過ぎる十七の春(著:小野不由美)
本屋で帯に惹かれて購入。
著者の作品は『残穢』、『ゴーストハント』シリーズ、『営繕かるかや怪異譚』を読了済。
ホラーとミステリーの両方を高水準で満たしてくれる印象。
冒頭から風景描写が細かく、しかもそれが名前しか知らない植物だったり、日本家屋や庭園の用語が多すぎて戸惑う。
でも、舞台が美しい自然の中にある古い集落ということが分かればなんとかなった。一つ一つの言葉を調べて読めば情景が鮮明になってより楽しめるかもしれないけど、めっちゃ時間がかかりそう…。
これって新人作家がやってたら少し鬱陶しく感じてしまうかも。
小野不由美先生の場合は「こちらの勉強不足です。申し訳ございません」と思ってしまうが。
著者バイアス良くない。どんな作家さんにも常に謙虚な姿勢で読まないと。
隆が豹変することで平和がだんだん脅かされていき、直樹が菅田家の謎に近づいたと思ったら直樹までもが取り込まれてしまうという展開。
得体の知れないものへの恐怖と謎が深まっていく。
呪詛が解けてから2人が力を合わせて怪異の謎に立ち向かっていくのは、青春ものっぽくて少しワクワクした。
過去帳、血液型、乳児の交換と謎が解かれていく面白さ、なぜ隆の方が先に呪詛に囚われたのかもちゃんと説明されていて分かりやすく、ミステリとしても素晴らしい。
ラストの直接対峙するシーンは没入できて、恐怖やスリルを堪能できた。
最後に2人を守ったのが美紀子の手紙(母であること)というのに感涙。
エピローグで描かれた呪詛の発端の出来事が哀しい。恨む気持ちもわかる。
怪異には原因があって、それを解決すればちゃんと助かるという論理性があるのも好き。
今作もミステリ要素もホラー要素も楽しめる素晴らしい作品。
人物設定とその描写も見事なので入り込める。
ホラー要素が民俗系にかすっているのも自分好みだった。
この作品が30年近く前の作品だということを読了後に知って驚き。
確かに現代的な要素は皆無だったけど、違和感を感じることなく楽しめた。
読者の世代によっては感じるのかな。
現代っ子は怪異にあったらすぐにスマホで動画撮りそうだしな…。
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