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【アニメ感想】響け!ユーフォニアム(2周目)

4月に1周目を終え、3期に追いついてリアタイしている今日この頃。

同じように一気見した後輩と感想戦をしたのだけど、後輩が気になるポイントとして挙げたシーンの記憶が曖昧でろくに考察できず…。
自分も気になってきたので再視聴することに。
ちょうど総集編映画も観たいと思ってたし。
ただの再編集かと思ってたけど、新規カットの追加や再アフレコも行われたと知ってしまったので。

後輩が気になった点として挙げてくれたのが以下。
①あすか宅での勉強会に向かう前、香織があすかの靴紐を結ぶシーンでのあすかが怖すぎる。伏線になりそうな描写なのに特に何もなくて、あれは何だったのか。
②みぞれは同性愛者なのか。
③あすかはなぜ久美子を半ば強引に自宅での勉強会に誘ったのか。


①香織があすかの靴紐を結ぶシーン

このシーンが記憶に残って無かったので、すぐに該当シーンだけ見返してみた。
確かに怖い…。
逆光で表情がハッキリ見えるわけではないんだけど、久美子もあすかの表情を見て複雑な顔してるし…。
確かにこれは伏線がありそうな描写。
なのに自分は華麗にスルーしてた…。

『届けたいメロディ』はあすかのエピソードを中心に2期の補完もしつつ、監督の意図する通り一本の映画としてしっかり成立していた。
そして気になる靴紐のシーン……はカットされてた(笑)

でも改めて観ていて思ったのは、あすかは単純に母親とのゴタゴタに部員を巻き込みたくなかったんだろうな、と。
晴香と香織が詳細を聞いたり助けようとすることを嫌がっているシーンが他にもいくつかあって、①もその中の一つに過ぎない印象。
香織があすか母の好物を久美子に渡したことで香織の策略が見え、「迷惑はかけない」と言ったのに迷惑をかけてしまっていることへの苛立ちが現れた。
その直後のあすかの「香織って可愛いでしょ?」という発言や、久美子と土手に向かう時に香織の名前が出てきたことから、香織に対しての苛立ちではなさそう。
やっぱり、迷惑をかけてしまったことへの自己嫌悪があの表情をさせたんだと思う。
さらに欲を言えば、最後に晴香と香織と全国の舞台で吹きたかったけどそれが絶望的になり、吹っ切ろうとしてるのに助けようとしてくることへのもどかしさや苛立ち、悔しさが入り交じっていたという熱い友情もあって欲しい。
全国に固執してた理由が父親だけってのも味気ないし。
まぁそれだけだったとしても、あすからしいんだけど。

結論として特に伏線とかではないのかな、と。
そもそも『届けたいメロディ』でカットされていることからも、周りに迷惑をかけることを嫌悪する描写の一つに過ぎないことを裏付けているように思える。
自分がスルーしてたのも前後の話から特段違和感を感じなかったから…だと思いたい。

②みぞれは同性愛者か

後輩からこの話題を出された時はハッキリNOという印象。
それは2周し終えた今でも変わらないかな。
希美への執着ぶりを見ているとそう思う気持ちもわかるが、みぞれの特殊さを加味するとそこまででは無いかな、と。

人が苦手で友達が1人もいない状況で現れた希美。
雛鳥が最初に見たものを親だと認識してしまうのと同じように感じた。
愛情表現もよく分からないから見よう見まねで大好きのハグをしようとしたり、優子が話しかけてくるのをただの同情だと思い込んでいたり。
人付き合いが苦手な人間の行動だと思うと、そこまで異常な執着ではないと思う。
これが普通のコミュ力の人間が同じような執着を見せていたらまた別だけど。

そういう意味ではむしろ麗奈の方が怪しい。
滝先生が好きって要素が無かったら久美子に対するアレはもうソレでしょ。
「特別になりたい」ってことは"普通"を理解しているってことだから。
みぞれの場合は普通を理解していなさそうな上での言動なので許容範囲。
まぁあくまで印象だから実際は分からんけど。
原作もまだ読んでいないので。

しかし改めて2期〜『リズと青い鳥』を見ると、希美って難ありだなぁ。
「部活復帰のためにあすか先輩の許しを得る」という自分ルールに意地になって練習の邪魔してたし、みぞれから避けられるようになった理由にも全く心当たりなさそうだったし、深く考えずに音大進学を口にしてまたみぞれを振り回して優子に叱られる始末(優子先輩マジ有能)。
別の意味でコミュ障なのかもしれない。人付き合いが下手。
希美は希美でどうやったらみぞれと一緒にいられるかを考えての音大進学発言だったとは思うが。
深く考えずにすぐに行動に移すタイプってリーダーとしては悪くないし(補佐する人間がいれば)、なかなか行動できないタイプの人間からは魅力的に映る。
だから中学時代に部長もやっていたし、夏紀も彼女に惹かれたんだと思う。
たくさんの人とコミュニケーションをとれるけど、広く浅く付き合う方法しか知らないから親友のような関係をなかなか持てず、自分に従順なみぞれに固執してるようにすら見える。
あすか先輩は優子を保険にしたみぞれがズルいって表現したけど、無垢なみぞれをカゴの中に閉じ込めようとしてた希美もズルい。
大好きのハグでの「みぞれのオーボエが好き」発言はカゴからの解放かもしれないが、「解放したところで私(希美)への執着は変わらないだろう」と確信を得た上での発言だったようにも思える。
自由なように見えて実は希美からは解放されていない。
両思いの2人の付き合い方が変わっただけだから、別に何も問題はないけど。

③あすかが久美子を自宅に誘った理由

これに関してはあすか本人が『響け!ユーフォニアム』を吹く前に答えを言ってましたね。
「久美子がユーフォっぽい子だから話を聞いて欲しくなった」って。
いや、ユーフォっぽいってなんや…。

久美子に呼び出された時、あすかは久美子に対して

(みぞれと希美の時も)結局最後まで見守るだけで、境界線引いて踏み込むことは絶対にしなかった。気になって近付くくせに傷つくのも傷つけるのも怖いからなぁなぁにして安全な場所から見守る。
そんな人間に相手が本音を見せてくれてると思う?

2期第10話「ほうかごオブリガート」より

と発言。
あすかはなんとかして欲しいわけではなく、打算的に行動してバチが当たった惨めな顛末を誰かに聞いて欲しかっただけで、だからこそ踏み込んでこないであろう久美子に話したのではと考えられる。
この時の発言には「これ以上踏み込んでくるな」という牽制があったのかも。

ただ、みぞれの件の評価については、あえて踏み込もうとしなかったのか、踏み込むことができなかったのか、という点において疑問が残る。
上級生相手だし、何よりまだ一年生の久美子にそこまでの技量があったかどうか。
良い策があったとて、そもそも踏み込むことが正解だったのか。
トランペットソロオーディションでは周りの空気に流されることなく麗奈を推薦していたことからも、常に事なかれ主義ではないことはあすかも理解しているはず。

となると、この発言は論理性よりも相手へ攻撃を優先した発言に思える。
改めて呼び出されたかと思えば「みんながそう思ってる」というなんの捻りもない説得をされて嫌気がさし、相手の痛い所を突いて黙らせようとバッサリ斬った感じ。
逆に久美子に踏み込まれてバッサリ斬られちゃうんだけどね。

上記の発言の根拠が乏しいとなると"踏み込んでこない久美子"が理由にならないから、逆に踏み込んできて欲しかったのかなぁ。
夏紀が推測したように「黄前ちゃんならなんとかしてくれる」って。
全国大会出場への想いを断ち切った自分の気持ちを変えてくれるかもって。
元々模試の結果で母親を説得する算段だったのか、久美子の説得があったから母親を説得しようと思ったのか。
1周目ではあすかを過大評価しすぎてて前者だと思ってたけど、今なら後者のような気がする。
理由はハッキリしないけど、結局あすかも久美子に何かしらの魅力を感じていたんだろう。

久美子の魅力とは

多くの登場人物が久美子に惹かれている。
主人公だから当然だけど(笑)

麗奈はその理由を説明してくれている。

普通のフリしてどっか見透かされているような。気づいてなさそうで気づいてるような。そして一番痛い時にポロッと言葉になって出てくる『本気で全国行けると思ってたの?』。
だからなんか引っかかる。ぎゅっと捕まえてその皮剥がしてやるって。

2期第9話「ひびけ!ユーフォニアム」より

人付き合いが苦手なみぞれもなぜか久美子とは自然と交流するようになっていた。
優子からもだんだんと信頼されていき、夏合宿では深い話をしていたし。

最初の頃は周りに流されながらもどこか一歩引いているように見えたけど、それが麗奈の影響からか踏み込むことがだんだん増えていった印象。


後輩ができてからは黄前相談所と言われるほどの活躍ぶり。
美玲の悩みについて1周目のnoteで分かったふうに書きましたが、改めて観たらそこまで単純では無かった。

上手くなるために真剣に部活をやりたいけど、下手くそな葉月やさつきが楽しそうにやってて周りからも好かれている(ように見える)ことに我慢できない。
愛想が良い方が好かれることは自分でもわかっている。
(ここまで的確に言い当てる奏はさすがの洞察力)
美玲は"演奏の評価=人気"もしくは"輪に入れない=評価されていない"という思考。
評価されないことに納得がいかないけど、楽しい雰囲気に加わるのは嫌ってもう辞めていいと思うけど…。

これどうやって解決すんの?って思ってたら「まずはみっちゃんって呼んでもらったら?」と…。
「はぁ?」って奏とハモるレベル(笑)
「それだけで伝わると思うから」って続けて、本当に解決しちゃう。
美玲の言動から変わりたいと思っていることを察して背中を押すという見事な采配。おみそれしました。

自分で壁を作っておいてめんどくせーな。
とか思ったけどよく考えたら高校一年生。
自分の判断に自信なんて持てないから背中を押してほしいんだろう。
楽しそうにやってるからって不真面目なわけではないし、葉月達にも上手くなりたい気持ちはあるってところまでは見えていない。
そういう視野の狭さも若さゆえなのかな。

奏の「美玲が合わせる必要なんてない。正しいから。」という発言に同意。
葉月たちが間違っているわけではなく、部活のあり方としてはどちらも正しい。
どちらも正しい中でどちらかが歩み寄らなきゃいけないというのには違和感を覚える。
ただ、久美子は美玲が変わりたがっていることを見抜きこの采配をとった。
自分や奏の思考では美玲の可能性を広げることができなかった。
洞察力では久美子の方が一枚上手。参りました。


そんな奏も久美子に惹きつけられていく。
オーディションで手加減して吹く理由を理路整然と話し、「下手な先輩は存在自体が罪」というパワーワードも吐き出す。
夏紀の「北宇治にそんな風に考える奴はいない」って言葉では説得不可。
中学時代に経験したことを思うと、この言葉を信用しろって言う方が無理だろう。昨年に一悶着あったことも事実だし。

黄前采配は、自分の中学時代の経験との類似性を見出し、一気に奏に斬り込んでいく。
このシリーズ屈指の名シーンで、洞察力の鋭い奏が久美子を分析してくれている。

久美子先輩は私と同じだと思っていました。一歩引いて感情的にならずに。上手く立ち回って、敵を作らないようにして。ただ頑張っても意味無いって分かってて。

「誓いのフィナーレ」より

久美子も奏が自分に似ていると感じていたのかもしれない。と言うより過去の自分を見ているような。
そして「"ただ頑張っても意味ない"は上手くなるのに邪魔」という久美子自身の気持ちをぶつけていく。
「結果が出なくても頑張りを認めてくれる人間がいること」「少なくとも久美子と夏紀は奏の味方であること」これが奏の望む答えだったのね。

過去の自分がかけて欲しかった言葉を奏にかけたのかな。
自身の本音をぶつけていくことはあすかを説得する際に学んだこと。
そして上手くなりたいと思うようになったのは麗奈の影響。
2人の影響で久美子は成長したと思う。


久美子の凄さを書いただけで魅力に全然迫れていない…。
観察眼と鋭い洞察力をもち、自身の経験と本音を上手く織り交ぜて解決に導くって感じ?
そもそもあすかが言ってた「なぁなぁにする」ってのもスキルが必要よ?
相手や状況を見て着地点を探るわけだし。
なぁなぁにできてた人間が解決法を導く術を身につけたらそりゃ強いよ。

あれこれ考えてた時に他の方のnoteを拝見して、しっくりきたのがあって。
久美子はロジックと非ロジック、その両方を読み取れる稀有なタイプである』と。
なるほど。
論理的に考えちゃうと答えが出せない問題でも、非論理的な部分を理解できれば解決できることもある。
美玲の悩みなんてまさにそうだな、と。

論理的に登場人物を理解しようとしてもしきれない。
それこそがこの作品のリアリティを生み出しているのでは。
1周目の時に感じた各登場人物の人間臭さは、論理的な部分と非論理的な部分を巧みに描いていたから抱いたのかもしれない。
実際の人間も論理的な部分と非論理的な部分を併せ持っているから。
論理的な部分はすぐ共有可能だけど、非論理的な部分は感覚的なもので共有しにくい。
その理解が及ばない部分の存在に人間味を感じていたのかもしれない。

実生活でも各個人が持つ非論理的な部分を共有(もしくは許容)できるかどうかが付き合いを続ける上で重要なキーになっていると思う。
久美子はきっと理解できる論理的な部分と非論理的な部分のレンジが広いんだろう。


3期も佳境に入って、黒江真由という難解な人物が物語を掻き乱している。
面白くてしょうがない。
黒江真由という人間がどういう人間か少しずつ明かされてはいるが、あすか以上に掴みどころがなくて怖い。
久美子も扱いにくそうにしてるし。

そして久石奏。
この作品は"推し"じゃなくて"好感"だとか偉そうなことを1周目のnoteで書いたんですけど、奏が推しです。
1周目の時からうすうす気づいてはいたけど、2周目と3期で確信。
論理的思考と鋭い洞察力、味方になった時の頼もしさ。
『アンサンブルコンテスト』でのシャドーボクシングなにあれ。かわいすぎる。
合宿の早朝、『響け!ユーフォニアム』を聴くのは彼女であって欲しかった…。

久美子の関西大会でのソリ落選は想定内とはいえズッシリくる…。
不穏な空気が続いているけど、どう着地するのか非常に楽しみ。
早くあすかからもらった魔法のチケット使って欲しい。


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