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勝手に1日1推し 62日目 「家をせおって歩く かんぜん版」


「家をせおって歩く かんぜん版」村上慧     絵本・児童書

いえ、イエ、家。衣食住の住。正に生活の根本。そんな我が家をせおって歩いた記録です。

こんなに興奮したのは久しいです!とっても独創的!!発泡スチロールで作った家をせおい、町から町へ。歩いて歩いて、たまには、トラック乗車、フェリー乗船。お家を置く土地を借り、根を下ろし生活します。家の材料やもろもろの紹介から、持ち物、土地の探し方、お家での過ごし方や眠り方、借りた土地の人たちとの関わり方、この実録と村上さんの考え方が本当に素晴らしく、微笑ましく、最高でした。子どもに分かりやすいように詳しく、真っすぐにイラストと写真で文章で説明、表現されています。誰もが「家をせおって歩く」に挑戦したくなることでしょう。

イラストはどれもドローイングで優しい温かみがあり、親しみやすいです。それなのに、かなり緻密で情報としても役立ちます。文章は実直、素朴で、力強さや作品に対する思いが感じられます。写真の数々においては、何も言うまい、です。見なければ!見て下さい!

本当に「家を置いたところ全集(写真一覧)」は見ものです。とにかくシュールで笑っちゃいます!!涙と鼻水が出るほど笑いました!小さいお家が、意外な場所にちんまりと佇む様が、もぉ、最高です!家in家とか、河原の橋の下とか、洗濯機の横とか駐車場の車の前とか、、、、撮り忘れちゃったりもかわいすぎます。150枚以上整然と居並ぶと、それはそれは圧巻なんです。写真の撮り方1つとっても、面白いんだな。構図が、センス!最高哉。滞在時の様子や状況などの想像、妄想も膨らみますよ~。

家をせおって歩いていれば、そりゃあ色んなことがあるでしょう。写真を撮られてSNSに載ることなんて、朝飯前言うか何と言うか。その誰かの撮った写真も載っているのですが、これにもほんと、もぉ、笑わせられました。ブレてたり、斜めってたり。これ載せるセンス!最高哉。その写真選びのセンス!最高哉。

美術家の村上慧さん。全く存じ上げませんでした。昨年から今年初めに金沢21世紀美術館で「移住を生活する」展を開かれていました。https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=45&d=1786

はー、行きたかった!また個展を開いていただけないだろうか。ひとまず、「移住を生活する」の図録を注文しようと思います。家を置いたところを2015年から2020年までの5年分見れるなんて。絶対欲しい!あと「家をせおって歩いた」も買おう。

これね、見ないと分からないですよ。本当に衝撃的!リンクを貼りましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

最後になりましたが、本書の「おわりに」からの一文です。

私たちは皆それぞれに違うやり方で、どこかに住んでいます。住む場所は変えることができます。住み方だって作ることができます。するといつもと同じ町が全然違うものに見えてきます。私たちはそうやって世界を変えていくことができます。

素晴らしいですね。心に沁みます。住み方だって作ることが出来る、この感性が素敵です。

笑えるってしきりに主張してしまいましたが、村上さんの意図はきっとそこではありません。「間取り図」という考え方をされているんですが、たぶんこういうところだと思います。家を置いた土地を含め、町全体を大きな家として考えるんですって。もし、例えば、定住すべき家がなくても帰る場所を作ることはできる、視野を広げ、考え、行動し続けることで、世界を変えることができるという可能性を提示してくれているように思います。震災に端を発していることからも、複雑な思いが込められていることは確かでしょう。

それでもやっぱり、アートって面白い!とかへんてこりん!とかなんじゃこりゃ!でいいんだろうな、とも思います。子どもたちには、この本の魅力が十分に伝わっていると思うし、大人も難しく考えず、合うなっていうフィーリングで作品を楽しむ方が健全ですもんね!カバーイラストのほのぼの感と内容のそこはかとなさとのギャップも魅力です!

ということで、推します。


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