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NO.1「森の木琴」


私が映像の仕事をしたいと思うきっかけになった映像。

2011年のカンヌ国際広告祭で金賞を受賞されているので知っている方も多いと思います。
ぜひ静かなところでイヤホンをつけて見て、聴いてほしい。

これほど緊張と癒しの相反する空気二つが共存したものはきっとない、と思う。

自分がこの映像の中にいたら
息をするのも戸惑うような。

それでも、この転がっていく球を
ずっと見つめていたいような。

「森の木琴」はNTTドコモ「TOUCHWOOD SH-08C」という機種のPR映像として制作されたコマーシャルです。モデルはこちら↓

間伐の時に発生する間伐材がデザインの中心となっている端末で、ドコモとオリンパス、シャープ、森林保全団体のmore treeが共同で開発したもの。

健全な森林を保つためには間伐が必要ですが、林業は人材不足である上にコストがかかるため、そのまま放置されている森が多いのが現状。
そこで間伐材をただ捨てず新たに有効活用して環境保護に努めたいとNTTドコモが間伐材の事業化「ドコモの森」の一貫として台数限定で製造していました。

2011年3月10日にサイト公開されると国内外で話題となりましたが、次の日に起きた東日本大震災によりテレビにCMとして流れたのはたったの1回だけ。

それでも葉が揺れる音や水が流れる音、動物の声、そしてそれに重なった木琴に玉が転がる音は多くの人の耳に優しく届き、

長い間そこに堂々と立っている木々の中を小さな球が右往左往しながらも着実に転がってくる画は多くの人に凛とした姿勢を魅せました。

木琴が演奏するのはカンタータ147番『主よ、人の望みの喜びよ』。
穏やかな音色の中にも意思の強さが垣間見れるこの音楽は震災で弱った人々の心に入り込んだことでしょう。

映像作家、写真家、演出家とマルチな活動をされているDRAWING AND MANUAL代表取締役社長菱川勢一さんが監督を務め、
自然の音を素材として組み合わせ音を作るサウンドアーティスト清川進也さんらを中心に
福岡県嘉麻市の森林に全長44メートル、413枚の鍵盤を組み立て傾斜の調整など微調整を繰り返すこと49回。メイキングはこちら↓

制作者が社会に伝えたいこと。”「日本の自然」と「日本人の技」のコラボレーションです。いずれも誇るべき日本の魅力。これから先もずっと、大切にしていきたいものです。”


セリフやコピーがなくても届けたい想いがしっかりあれば世界にも伝わる。

約9年経った今でもその想いは繋がっていく。
だから映像の世界って辞められないんだよなあ。