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おまじないの話

おまじないの効果を信じてる人はどれくらいいるのだろうか。
幼い頃やった人はいると思う。わたしも願いが叶う系のおまじないは、やったくちである。当時やったおまじないによって幸福がもたらされた記憶は残念ながらない。忘れてるだけかもしれないが、その程度のドライな関係性であった。


だがしかし、そのドライな関係性がある日ギュッと縮まる事件が起きた。それを今回は綴ってみようと思う。

大人になったわたしは、販売の仕事をしていた。
基本的に自分の物を買いに来るお客様が多い部門であったが、プレゼントを買いに来るお客様もたまたま、配置された職場では多かった。

プレゼント包装で1番気をつけなければいけないことはなにか。包装が美しいことではない、値札を取り忘れないことである。

どうせスマホひとつでものが買える時代だ。値段なんて値札が外されていても調べればわかるものだ。だが、プレゼントを渡す、渡される時間というものは特別なものである。そしてそれを開ける時もまた、特別な時間になるものだ。

よって、その特別な時間にちゃっかりとわたしはいくらで売られておりましたよ、だなんてリアルな数字は持ち込んではいけないのだ。美しい思い出はプライスレス。とにかく値札に関しては特に注意が必要なのである。

ギフト需要が高い売り場であったため、取り外した値札を貼り付けて管理するシートを活用していた。外した値札をシートに貼付し、外し忘れがないか、包み忘れがないかをきっちりかっきり管理していたのだ。そのシートの管理係を七森は勝手にやっていた。ギフトの七森、誰にも呼ばれなかったがそんな2つ名がついてもおかしくないような厳しさで、時にシートを使わないものなどが現れた際には厳しく叱責していたのだ。(ちょっと盛った)

そんなギフトの七森がやらかす事件が起きた。
シートに貼付したはずの値札をまんまと紛失したのである。

確実に外した記憶はあるが肝心の値札がない。
商品は手元にない。急ぎでお願いします、と言われたので、ここぞとばかりに急いで梱包し、既にそのお客様は渡す相手の元へ向かっており、ここにはいない、そんな状況であった。

──ピンチである。

わたしは冷静を装いながら、必死に探した。
大して移動していないのだから、自分の周辺に必ずあるはずだと信じていたからだ。
だが、どこを探しても見つからないのである。

まさか、値札を外してないのでは?
そんな疑惑が脳をかすめる。
だが、値札を外した際のハサミの感覚はまだ右手に残っている…!カッコつけたが、内心は泣きそうであった。

途方に暮れかけていた時に、T先輩が休憩からふらりと帰ってきた。
T先輩は酒とタバコと占いが大好きな、豪快な女性だ。酔って上司と喧嘩をするのは日常茶飯事である。この先輩に相談したら何とかしてくれそうな気がして、早速声をかけてみた。
「姐さん(先輩の呼び方)、いまさっき販売したプレゼントの値札が見つからないんですけど、……大丈夫ですかねぇ?」
なにをどうしたら大丈夫なんだろうか。今ならすぐさまそう思うのだがその当時は大丈夫だと言って欲しかったので、いやらしいわたしはそういう声掛けをした。とにかく安心したかった。だがそんな甘い考えはすぐに吹き飛ぶことになる。
「いや、それかなりマズイっしょ」
そりゃそうだ。誰がどう見ても、やっぱり今の状況は相当にマズイのである。

値札を外した記憶があること、梱包した時に値札がついていたならば、さすがに気づくはずであることなどを必死に弁解をした。弁解をしてる間にそのお客様を死にものぐるいで探した方がまだマシなように思う。だが、言い張っていたのだ、自分の正当性を。先輩はしばらく考えた後、こう言った。
「あ!わたしさー、探し物が見つかるおまじない知ってんだけど!」
一瞬「え」と思った。だがそれは一瞬の事だった。
「マジですか!それやります!教えてくれませんか?!」
藁にもすがる思いで、先輩からおまじないを教わることとなった。


続いちゃいます。。( ◜ᴗ◝)


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