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動物愛護管理法改正|犬猫の数値規制4つのポイント

7月10日に環境省の動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会が開催されました。今回、主に繁殖・販売業者が対象になる数値基準の素案が出るため、私も傍聴してきました。

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具体的な数値規制の基準案は、年内の愛護部会とパブコメの実施を経て決まり2021年6月に施行されます。その際にポイントとなりそうな点を整理しました。

法改正と数値規制の目的

2019年の動物愛護管理法改正のポイントとしては、8週齢規制(日本犬除く)、マイクロチップの義務化、自治体側で所有者不明の犬猫の引き取り拒否可、罰則の強化、数値規制などがあります。

中でも現在多くの関心を集めているのが「数値規制」です。劣悪環境での繁殖・販売が横行する中、犬猫の飼養・管理の明確な基準を設け改善を図ることが目的です。正しく機能すれば、パピーミル等の悪質な事業者の排除に繋がり、ペット流通市場の健全化の後押しになります。

しかし、数値基準が犬猫にとっての適正な飼養基準であることと同じくらい重要なのが、実際に自治体が運用できる「統一化された基準」であることです。

人間にとって肌触りの良い数値を作るのではなく、行政が立入検査等を行う際に定量的に判断できるかも考慮すべき点ですね。

数値規制の基準案の前提

■対象範囲
犬猫の取り扱う事業者全般
・ブリーダー、ペットショップに限らず猫カフェ等の展示業も対象
・第一種に限らず第二種の保護団体等にも準用される

■数値基準案の目的
・悪質な事業者の排除のため、自治体がチェックしやすい明確な基準を設定する

Point_1 飼育ケージ・運動スペース等のサイズ規定

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犬が普段過ごすケージは、まず運動スペースとの分離型一体型(平飼い)に分け、それぞれサイズ基準が定められます。閉じ込め型の飼育を防ぐため、運動スペースの確保と運動自体も義務化されます。

それぞれの基準を見てみましょう。

■運動スペース分離型の基準案
寝床・休息用のケージと運動スペースが分離したタイプ

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[縦×横×高さ]
犬:体長の2倍×体長の1.5倍×体高の2倍
猫:体長の2倍×体長の1.5倍×体高の3倍※

※ 棚を設け2段以上の構造とする。猫の場合は上下運動を行うことを前提に設定

分離型の場合運動スペースは(後述の)一体型の基準と同一以上の広さとし、1日3時間以上は運動スペースで自由に運動させることを義務付けされます。しかし検討会では「運動したい時にする、休みたい時に休むなど、自由な行動選択ができる環境も大切だ」という意見も挙げられていました。

■運動スペース一体型(平飼い)の基準案
寝床・休息用のケージと運動スペースが一体化したタイプ

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犬:分離型ケージサイズの床面積6倍×高さ体高の2倍(※1)
猫:分離型ケージサイズの床面積2倍×高さ体高の4倍(※2)

※1 2頭まで飼養可能で、3頭以上の場合は1頭あたり3倍の床面積を追加
※2 2つ以上の棚を設けて3段以上の構造にする。3頭以上の場合は1頭あたりの床面積に相当する分を追加

Point_2 従業員1人あたりの頭数制限

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コスト削減のため人件費を抑え、犬猫のケアが疎かになるケースは少なくありません。そのため、従業員一人当たりの頭数が定められます。

基準の設定は8時間労働を基本とし、1頭当たりの平均作業時間を想定し算出されています。

■動物の飼養・保管に必要な従業員数

犬:一人当たり繁殖犬15頭、販売犬20頭まで
猫:一人当たり繁殖犬25頭、販売犬30頭まで

※親犬猫と同居している子犬・子猫は頭数に含まず
※犬猫を使用する場合の規定は今後要検討
※課題のある事業者の上限値強化と優良な事業者の上限値緩和を検討

検討会では「社会化期間では人との接触や様々な刺激が大切。必要最低限の算出で良いか検討が必要」と専門家からの指摘もありました。

また、個別の施設や個体管理状況によって都道府県頭が飼養頭数の上限値を減少or増加させる規定も検討されているようです(環境省令で定める基準の範囲内で)。

まだまだ議論が必要な項目の一つですね。

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Point_3 繁殖犬猫の繁殖回数

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劣悪環境での過剰繁殖による犬猫母体への負担は深刻に捉えられています。数値基準を設けることによって最も改善したい項目の一つです。

■繁殖回数・方法
犬:メスの交配は6歳まで(満7歳未満)
満7歳時点で障害出産回数が6回未満の場合は7歳まで
猫:メスの交配は6歳まで(満7歳未満)
満7歳時点で障害出産回数が10回未満の場合は7歳まで

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この項目は素案公開後も活発に議論が行われている部分ですが、犬猫で繁殖生理の特徴は異なる点、譲渡がしやすい年齢でのリタイア促進、立入検査時に行政による確認のしやすさ等が考慮されているようです。

この基準は繁殖業者の運営に大きく影響します。専門家の医学的な知見と最低限の基準として機能するため細かな検討が必要になってきます。

Point_4 獣医師関連の項目

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今回は、定期的な獣医師による健康診断の義務付け(年一回)、出産時に帝王切開を行う場合は実施した獣医師による出生証明書の交付を受ける義務付けも行われます。

獣医師の通報義務も加わり、みだりに殺されたと思われるケースや虐待と判断した場合、通報することが義務化されます。また、改正時にネグレクトも虐待と判断できるよう明記されるため、定期的な健診が義務付けられることで、発覚の可能性が高くなるのではないかと考えています(適切に運用された場合ですが)。

数値規制の期待と懸念点まとめ

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■数値規制の期待
・具体的な基準による悪質な業者排除
・今まで曖昧であった悪質と優良の明確化に向けた議論

■数値規制の懸念点
・各自治体現場での現実的な運用
・繁殖業者の同時期廃業による崩壊連鎖
・保護団体(第二種)にも準用


現在も「犬猫の適正飼養数値はこうあるべき」という議論は盛んに行われています。その中で個人的に懸念していることもあります。

例えば、仮に今回の素案からアップデートされなくても、廃業する業者は多いと予想できます。もちろん「最低限の数値基準もクリアできない業者は廃業すべき」という意見には同意見です。

しかし、

・廃業する業者が放棄する犬猫たちのセーフティネットの構築
・予想される廃業件数と集中時期
・一時的な殺処分の増加懸念に対する対応策
・(コロナ禍ですでに過酷な運営状況の)保護団体の崩壊連鎖を防ぐ方法

など、数値基準のアップデートと共に対応策を議論すべき懸念は多いと感じています。素案が出た以上、来年以降の動きを検討している事業者は多いでしょう。

私たちは普段OMUSUBI(お結び)という保護犬猫マッチング事業を通し、保護団体さんと協力しながら譲渡促進を行なっています。繁殖・販売レイヤー、飼育(検討)者レイヤー、保護レイヤーの中で噴出する課題は異なりますが、業界業種横断で取り組む必要があると感じています。

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新しく生まれる数値規制へ適応するために市場が動くことは、健全化に必要なことです。しかしその弾みで行き場を失う犬猫たちの存在も忘れず、自分たちのできることや必要な連携を生んでいきたいです。

P.S.
所々、資料の端に噛み跡があるのは愛猫の仕業です…🙏



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