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体表のイヴォ



歩いた。今日はたくさん歩いた。

営業先のよっさんが「山ちゃんは結婚できるでしょー大丈夫だよすぐできるよ」とかいう。
人をよく集めるような明るい人だ。
そこにマッサンが「なんの話?」と聞いてくる。

よっさんとマッサンは夫婦で仲がいいようだ。子供がいないっていう同じ境遇もある。
「よっさん呼ぶと嫁ちゃんとか2人ならいいけど、いっぱい連れてくるから困るんだよね。でもやっぱりみんなで呑むの好きだからさ。たまに来て欲しいんだけど、最近こないから」
「ええ、なんだ言ってよマッサン。こないだ届けようかってモノあったんだよ。行くよ今度」
「いきなり来ても入れないけど、電話さえしてくれればいいよ笑」
「アポなしはダメってか笑」
カッカッカと笑うよっさんと膝を抱えるマッサンは小学生の同級生みたいだった。

そういう仲いいな。

そんな感じを見送って、個人宅行ってバタバタしてたら午後、裏路地でラジコンを走らせる少年にあった。

暑い日中の路地裏で1人の少年が何かを足で蹴っていたから、通りすがりに見たら小便のかかったエロ本だった。

そういえば昔、幼なじみの小松と伊藤と団地のゴミ置き場の開かずの間によじ登って、中を除いた時に見た山積みのエロ本と小便臭い匂いを思い出した。立って覗いてたけど、見れないからって腹いせに小便ひっかけてたな。
懐かしいなぁ。
ワンカップの空瓶に枯葉とダンゴムシをたくさん集めて「しゃくしゃくしゃく」って音がたくさんありすぎて「ざーーーっ」に変わるのも面白かった。

そんなことを考えてたら、少年が蜘蛛の巣に引っかかったようで、後ろを振り返ったタイミングで私と目があってびっくりした顔をしつつ、私も蜘蛛の巣に引っかからないよう見渡してたら話かけてくれた。

「このラジコン、水の上も走れるんだ」
「すごいね、かっこいいな」
「前は後進したんだけど、じーちゃんにみてもらってから調子悪い」
「へぇ。でも水に入っても壊れないん?そらすごいな」
「うん。浮くようになってる」
「浮くの?すげぇ、あっ!ちゃんと止まった偉い」

「どこいくの?」
「ちょっと先の裏山の方に行かなきゃいけないんだ」
「そうなんだ」
「うん。またね」


近場の古民家カフェでは、近所の人が集会を開いていた。素敵な空間だけど私は馴染める気がしない。

柴田さん宅で柴犬のゴローくんがお出迎えしてくれた。
撫で回した手が犬臭かった。
どうやら最近、散歩中の大型犬にワザとぶつかって詐欺をする人がいるらしい。

ゴローくんを散歩中ベンチで休憩してたら無言で女性が近づいてきて、犬をぶつけて抱き上げたらしいが、その女性の飼い犬が耳を噛まれたと騒ぎだして別の女性が来たらしい。傷も見てないし血もたれてない。リードも短く伸びないタイプで、勝手に近づいてきたのに遠巻きに歩いてたら襲ってきたと発言し、埒が開かなくて放ったらしいが、事が起きたのが17時で17:45頃に近所の人が見たら血だらけだったと言っていたらしい。
しかもそのあたりで犬の甲高い悲鳴が聞こえたと。
警察や病院は18時頃来たらしい。

後日送られてきた内容証明は傷病名がないし、12針も塗ったとだけ。事故状況も教えてと言ったら拒否するそうなので無視してるとのこと。
詐欺で訴えると言ってた。
柴田さんの予測では、二匹の子犬ダックスだったから、もともと片方が戯れて噛んだ傷をナイフか何かで切ったんじゃないかと。詐欺師に飼われてるその犬がとても可哀想だ。


夕方、歩いて企業に向かうにも足の裏が痛くて駅あたりから辛くなってきた。
行って帰るには筋膜炎になりそうだったから、翌日に変更した。
もしかしたら一世一代のチャンスが待ってるかもしれないけど、なかった場合にダメージがでかい。

風呂なり、食うなり愛犬と戯れるなり耳掃除なり。書いたり。
気付いたら20時だった。

体表のイヴォが気になる。
異形成って癌になる確率12〜15%だって。

この先、いつ死ぬのかいつまで生きるのかわからない。

どんな風に生きたいのか。どんなふうに死にたいのか、具体的なことは出てこないけど、もっともっと好きにいきたい。

写真や絵やモノに触ったり見たり聴いたりするの好き。体を動かして獣のように動き回りたい。
子供やお年寄りなどの、寄りどころ逃げ場になりたい。

感覚的に生きたい。心の動きや空気の流れを掴んでそっと流したい。風を感じてたい。デスクワークは懲り懲りだ。でも、社会情勢や知識として知っていた方がいいことが沢山ある。芸術や文化は経済的安定の元に成り立つ事が多い。

だから、今はたくさん勉強していざ守りたいものができたり活かせるところがあったら存分に発揮できるように生きよう。

少し心が痛い夜だ。

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