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出産当日2

助産院に実家から母もやってきて、「ついにきたねー」なんて言い合って、ちょっとした親戚の集まりみたいだ。先生は夫に、ウィダーインゼリーとチョコレート、とにかくカロリーの高いものを買ってきてと頼んだ。出産の時、血糖値をガンガンにあげるといいそうだけど、大好きな甘いものも、何もかも今とても食べれる状態じゃない。助産院を調べてるとき、旦那さんにしがみついたりして陣痛を耐える写真を結構見たけど、私は陣痛の時男の人に離れてほしかった。先生ともう一人の助産師さんと母、3人で時間を過ごす。産まれるまでまだ時間がかかりそうだから夫には仕事に行ってもらった。

どれくらい時間が経っただろうか。腰が、と言うより下半身全体がもうぶっ壊れそう。体の中で大地震が起きてるみたい。骨を伝ってズズズズ、音が聞こえてきそうなくらい。呼吸に集中しないとパニックになってしまう。(こりゃ次産む時は無痛分娩だ!だからこんな苦しい経験は今生最後、頑張ろう!と、思ったことはひみつ。)

子宮口8cm。お昼過ぎに夫が助産院に戻ってきた。冬なのに私はもう全身汗びっしょり。きつい...とこぼしそうになったとき、もう一人の助産師さんが、

「お母さん、子供3人も産んですごいって思うやろ。」

と優しく声をかけてくれて目が覚めた。そうだ、私が母に一番感謝してることって、私と妹2人を産んでくれたことだ。お母さんもママ達はみんなこれを乗り越えてきたんだ、しっかりしなきゃ!

お産が進みやすいよう、何度か体勢を変えてみようと先生に言われた。

「旦那さんちょっと来て、脚持って」と先生は言い、私が横向きで寝て、片脚を夫が持ち上げるように言った。うわ、赤ちゃんが出てくるところが丸見えだ!流石に見る勇気がなかった夫。後日周りの男性陣にその話をしたら、あり得ない!と大笑いされたらしい。こっちは死ぬ気で頑張ってんのに、まったく失礼な話だよ。

「いきみたくなったらいきんでいいよ」

といわれ、いよいよ赤ちゃんと会える時も近い!と期待するも、ここからが大変。渾身の力でいきむが、なかなか頭が出ない。

「会陰マッサージが全然足りてない。あかんわ、硬い!

せんせー!今あかんとか言わんといてー! 泣) 私は宿題で出されていた会陰マッサージが甘かったことを今激しく後悔した。しかも小鳥ちゃん、頭が大きかったみたいで、なかなか出ない!

何度も何度も踏ん張り、やばい、全力であと何回いきめるかな...と不安がよぎった。それを頭の中で蹴散らして、「小鳥ちゃーん!!!」とこれ以上ないくらいに強く名前を読んだ。

「ほら、笑顔で赤ちゃん迎えるんやで!」

と言われ「はいっ!」と急に冷静になり、髪をきゅっとまとめ直し、もう一度、力の限りいきんだ。そこからはもう一瞬。ツルーン!と出てきて気がつけば私の胸に小鳥ちゃんがいた。午後3時半、ついに小鳥ちゃん誕生!私は「うわぁ!」と声を上げた。3352gだって、大きい!手足も大きい!一生懸命泣いてる、やったぁ!やっぱり男の子だ!

そこにいるみんなで喜び合って、キラキラと金の何かが部屋中に舞っているようだった。夫は、私がこんなに頑張ってくれた!と涙を流していた。私は感動というよりは、ものすごく興奮して達成感でいっぱいに。

体をささっと拭いてもらい、すぐに小鳥ちゃんにおっぱいを吸わせる。必死にちゅうちゅう吸っている!誰に教えてもらうでもなく、すごいなぁ...。君がずっとお腹にいた小鳥ちゃんなのね?愛しさでいっぱいになる。

「泣き言一つ言わず、偉かった!」と先生が褒めてくれた。母にも「静かなお産だったよ」と言われたが、あんなに辛かったのに傍から見たら静かだったの?ギャップがすごいんですけど...。


〜つづく〜

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