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伊藤社長 栽培へのこだわり 

 前回は七久里農園 誕生のものがたりをお伝えしました。

今回は、美味しい野菜作りに欠かせない「土」や栽培のこだわり、廃棄野菜への取り組みをお伝えします。

栽培のこだわり

 小学校の時に行った知り合いの農家が有機農業をやっていたこともあり、その頃から有機農業がいいなと思っていました。
 
 大学院でも、堆肥の勉強をしたこともあり、有機で野菜を作りたいと考えていましたが、七久里農園を始めた頃は、栽培量を増やして収入を得ることが大事だと思い、化学肥料の農業をやっていました。
 
 でも「やっぱり有機農業をやりたい」と思い、化学肥料や農薬をやめて作物を作っていた時期がありました。
 
 3年間有機栽培を続けると「有機JAS」が取れるのでそれを目指していたんです。それで、3年間無農薬で作っていたのですが、ネコブセンチュウという地面の中に発生するセンチュウが増えてしまって、トマトが収穫できなくなってしまいました。
 
 そうなってしまっては経営的に成り立たないので、今度は炭素資材やミネラル資材を購入して、その資材を使って作った商品を業者に買ってもらうことにしました。
 
 基本的に、農園ではトマトを中心に秋冬にはネギや白菜などを委託栽培しているので 作る野菜に合わせて肥料を選択してより美味しい野菜が獲れるように工夫しています。


 

土の様子を見る伊藤社長

ビーツを栽培し始めたきっかけを教えてください。


 ビーツの栽培は今年(2022年)から始めました。
ビーツスムージー等の加工品を製造する事業を引き継いだことがきっかけでしたが調べていくと
 
「ビーツってなんだかすごいぞ!」とすっかりハマってしまい、まずは自分の手で栽培をすることにしました。
 


収穫したての旬のビーツ

最初に育てる野菜は社長自ら栽培されるのですね。

 そうですね。ビーツは俺がやる!って言って(笑)基本は最初に作る野菜は自分でやらないと気が休まらないので。
 

実は、ビーツは有機肥料で作りやすい野菜なんです。


 ビーツは、土中の硝酸イオンを吸ってタンパク質に変えて成長するのですが、硝酸イオンは多すぎると野菜にいい影響を与えないことがあるんです。
 有機肥料で育てると、硝酸イオンが一気に出てこないので、ビーツがゆっくり育ちます。
 
 そのため有機肥料で育てるメリットが多いと考え、農園では、ビーツの栽培中は、農薬を使用せずに、貝化石や鶏糞、魚粉など有機肥料のみを使用しています。栽培期間中は除草剤も使わないので、草取りは社員が丁寧に手で行っています。

 ななくり農園のビーツを安心して召し上がっていただきたいので独自の安全基準を設けて【Redパワービーツ®】と言う名前で商標登録をしてあります。

【Redパワービーツ®】
①栽培期間中は農薬を使わない
②貝化石、鶏糞、魚粉などの有機肥料のみによって栽培する
③栽培期間中は除草剤を使わず、手で草とりを行う
④ベタレイン(ベタシアニン色素)を最も多く含む品種
「デトロイト・ダークレッドビーツ」を使用する
⑤ビーツの育成に適した冷涼な気候の長野県で栽培する
 


 

まだまだ試行錯誤のビーツ栽培


 ビーツは今年から栽培を始めたので、今はまだ手探り状態なんです。
 根菜類は、人参でも大根でも一般的には、肥料はちょっと少なめの方が良い根菜類が育つと言われています。

 昔、カブを作っていた時に、窒素の量によって味や形が変わるか試していたんです。カブの場合は、葉っぱが出ている部分や首の締まり具合を見て、味の良し悪しがある程度判断出来たのですが、ビーツの場合はどの状態がいいのか今の時点では分かりにくいですね。
 
 たまに、真っ白いビーツが1畝に1個取れることがあります。形も丸いものや縦長の物など、色、形共に安定していませんが、今後、様々なメーカーが品種改良することでもう少し綺麗な形が固定されてくると思います。
 
 

伊藤社長はなぜビーツに惹かれたのでしょうか?


 やっぱり栄養価が高いことですね。
ベタシアニンの抗酸化力や、血管に良い硝酸塩(NO3)が豊富なところもポイントですね。真っ赤な色も元気をくれるしワクワクしますよね。


ハウスでビーツを育てる伊藤社長



 

トマトジュースのことについてお聞かせください。


 ななくり農園のトマトは、生食用の桃太郎トマトを使用しています。
加工用ではないので、ジュースにしてもトマト本来の味に近く、
甘くて飲みやすいのかなと思います。
 
 色味に関しては、桃太郎トマトはピンク系で加工用トマトは赤系なんです。加工トマトで作った方が真っ赤なトマトジュースになりますが、私達が作ったものは薄い赤みたいになってしまうので、見た目上は加工用トマトに比べるとそこまでかなと思うんですけども味は絶対に美味しいと思います。
 
 

トマトジュースに使われる「桃太郎トマト」

なぜトマトジュースが生まれたのでしょうか。

 トマトを栽培していると、流通に出せない格外品が出てくるんですよね、どうしても。ちょっと形が悪いとか割れてるとかそういうものを、食べたら美味しいけれども流通には出せないという物を、加工品にしたところがスタートなんです。
 
(ななくり農園のトマトジュースは、ベルギーの品評会で銀賞を受賞しています。伊藤友子さんが作った思い入れのあるトマトジュースについてはこちらの記事でご紹介しています。)
⇒トマトジュースの記事(準備中)
 

 一番頭を悩ませているのは廃棄野菜ですね。


 廃棄物がそんなに多くない時は袋詰めにして直売所に出したりするんですけど、やっぱりすごい大量の場合は、直売所でさばききれないので、廃棄になることが多いですね。
 
 きゅうりは曲がっていても加工用で出せるので、きゅうりはいいんですけど、トマトやピーマン、ナスなど加工用に出来ないものは捨ててしまうので、今はそこが課題です。
 

廃棄野菜の取り組み


 食品廃棄の量を減らすため、フードロス対策事業を立ち上げた会社と提携して、規格外のピーマンを使用してお弁当を作ってもらったり、フードロスの課題に取り組み始めました。
  
 今後も廃棄野菜を減らす取り組みはしていきたいです。