見出し画像

宇宙航空部品製作メーカーが作ったエンドピンストッパーを使ってみた話。

床にエンドピンを刺せない場所での練習に必要不可欠なエンドピンストッパー。
普段愛用しているものに満足しすぎて、新しいものを探そうとも思わなかった私の前に、とあるご縁でやってきた高級エンドピンストッパーの話をしてみようかと思う。

金と銀の小粋なやつら

画像1

やってきたのは株式会社由紀精密による 「YUKI ENDPIN STOPPER」2種。
レアメタル無垢材切り出しという、なんとも贅沢な作りとなっている。
金色に輝く真鍮製と、銀色に煌めくステンレス製の2種類で、お値段おひとつ¥13,860-(税込)。高 the 級!!

最近Amazonでもウォールナットやメープルなどを使った1万円を超えてくるエンドピンストッパーを見かけるようになってきたけれど、高級ストッパー流行ってるのかしら・・

安定のブラックホールも

ちなみに私が日常的に愛用しているのはこちら。

画像2

「ブラックホール」の愛称で親しまれているポピュラーなエンドピンストッパー、お値段¥2300くらい。
まるっとゴムでできていて、どんな床でもすべらないし、軽くて持ち歩きもしやすいので、私はおうち用と持ち歩き用に2つ所有している。
(ちなみにホコリがつくと滑りやすくなるので、気になったら床に接する面を台所用洗剤で洗うとしっかり止まるようになります)

ストッパーにこだわるつもりはなかった

私はずっと、楽器のポテンシャルを引き出すセッティングや調整が音を良くするのであって、パーツがもたらす変化は微々たるもんだと思っていた。

部品に凝るなら、まずは弦と松脂。そして駒や指板の高さ調整、弓の毛量や素材など発音に直接関係のあるパーツだろうし、あとはエンドピンくらいだろうか。

仕事仲間にはピンの素材に凝ってオーダーメイドしている人も見かけるし、合金の割合で音が違うとかいろいろ話は聞いてきた。
けれども、普段からバロック弓かモダン弓か、エンドピンを着けるか取るかしか選択肢のない私には、エンドピンの素材まであれこれ試してみる境地には至らずだった。
ましてストッパーは(以下略)

ロマンがありすぎた。

そんな研究不熱心な私のもとへ、とあるご縁でやってきた「YUKI ENDPIN STOPPER」である。

会社のホームページを見ると、ねじ加工からその歴史をスタートさせ、2020年現在、航空宇宙関連部品・医療機器関連部品・電機・電子機械部品・人工衛星etc...
あらゆる精密機器の部品を手掛ける、The ジャパニーズものづくりの会社であることがわかる。
開発N氏がこのエンドピンストッパーを見せてくださったとき、そのお話ぶりから精密機器部品メーカーの音への挑戦、そして本気の遊び心を感じざるを得なかった。

宇宙に行ける技術を持つ会社で作られたエンドピンストッパーなんて、夢があるじゃあないですか。

そしてこの夢あるエンドピンストッパーの記事を書きたいと開発N氏にお話したところ、まさに製作加工中の写真をご提供いただくことができた。
それがこちら。

画像3

この機械を使って金属の塊を回転させ、工具を当てて削り出す。
こうした技法を、旋削加工と呼ぶらしい。
旋削加工により生み出されたエンドピンストッパーは、充実した金属の密度感と、ころんとした丸みあるフォルムがとても美しい。
そして凹のエンドピンホールまで、なめらかな触り心地。

私は初見で「かわいいな」と思った。

ロマンありすぎた(2回目)。

画像4

真鍮製は時間の経過とともに独特の風合いに変色していきます。 末永くご使用いただき、共に過ごす時間を感じて頂きたいと思います。(Amazon商品サイトより引用)

この記事を書くにあたり、商品紹介を目を皿にして読んでいたところ、見つけた文章である。
商品サイトにこんな素敵な文章を入れてくるなんて素敵すぎませんか・・
モノとの出逢いに意味を感じたい私のような人間を、一撃で射抜いてくる「意図」!

お手入れしながらその風合いや経年変化を愛でることは、モノを愛する者の特権であることを私はよく知っている。

シルバーだって、18金だって、プラチナだって、いつまでもピカピカであることはない。だから柔らかい布で汚れを落としたり、洗ったり、仕上げ直しをしたりする。そうして自分と共に歳を重ねてきた小さな装飾品への愛着が育っていくのだ。
特に真鍮は、何とも言えない深い味わいの見た目に変化していく金属だし、その様から人と共に「育つ」金属であるともいえる。

チェロを弾く「音の喜び」と共に、持ち物を「長く愛することの喜び」をもたらしてくれるなんて、とんでもないエンドピンストッパーである。
チェロまわりの小物で、こんなロマンあふれる商品には今まで出会ったことはあっただろうか。

開発した方々のプロダクトへの思い、私にはめちゃくちゃ届いてます。
ありがとうありがとう・・・(涙)

実食、じゃなかった実奏

画像5

実際に使ってみたところ、真鍮製は倍音が増えて響きが遠鳴りする。
残響のないスタジオなどで、手元の響きを足したい時によさそうだ。
そしてステンレス製は部屋鳴りがストレートにまとまる。

最近は自室でYouTube収録する用にステンレスを愛用中。
私のエンドピンがステンレス製なこともあって、相性が良い気がしている。

どちらも使った瞬間から響きにふわりと包まれる感じがあるので、防音に気を使う自宅練習で響きの感じがイマイチつかめないという方にもお勧めできる。
チタンや真鍮の合金でエンドピンをオーダーするのはやはり値が張るので、お部屋中心で演奏する人ならば、まずストッパーを良いものに変えてみるというのも、今後は選択肢に入ってくるのではないだろうか。

ちなみにエンドピンのある楽器ならば、チェロに限らず使うことができる。
例えばコントラバスやバスクラリネット、コントラファゴットなども使用OKとのこと。
一度他の楽器で使用した音を聞いてみたいので、そのうち友達のとこに持っていって使用感レポしてみようかな、と思っている。

プロフェッショナル視点からの使用上の注意

無垢材だからこそ、落下注意
「YUKI ENDPIN STOPPER」は金属の無垢材切り出しで作られているので、かなりの重量がある。
総ゴム製で超軽量なブラックホールのように、間違っても「ぽーい」と床にぶん投げたりは出来ない。
それこそ床にホールがあいてしまうので落下には十分注意が必要だ。
そして手が滑って楽器や弓にストライクをかます事態にはくれぐれも気をつけてほしいところ。
あと、持ち歩きにはそれなりに覚悟がいる重さであることをご承知おきくだされ、というところでしょうか。

床設置面の滑り止めについては、今のところ工夫が必要

ストッパーの裏側、床設置面については無垢材剥き出しの状態で届くので、ツルツルである。床設置面にゴムシートを両面テープで貼り付けるか、滑り止めマットの上で使用するなど、使用者側の工夫が必要である。
私はゴムシートを貼る、ブラッホールの上に乗せるなどで使用している。

箱から出してすぐに使える状態ではないので、この点に関しては商品改良を強くリクエスト。今後に期待したいと思っている。

以上の注意点を踏まえても、音でのリターンは大きなメリットだ。
ぜひこの響きの軽やかさと幅広さを体験してみていただきたい。

商品詳細は以下リンクから。

真鍮はこちら

ステンレスはこちら

みんな大好き安定の「ブラックホール」



頂戴したサポートは、より良い音楽・演奏コンテンツをお届けするべく製作費として使わせていただきます。ご支援・応援のほど、よろしくお願いいたします!