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市川翔の物語外伝☆俺の能力は五感を超えているがそれがどうした

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市川翔自身の言葉をしたためる。彼の脳裏を駆けめぐる言葉を。事実も想像も、あらゆる思考が言葉に変換されて表現されてゆく。彼にとって、言葉は思念。ときに言葉は、現象そのものとなる。そ…
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#人間

災難か否か

あつまるな できるだけ はなれていろ 声をかけるな 用がすんだら さっさといけ 誰もそんなことは 言っていないって? バスに乗ろうが 電車に乗ろうが 誰もが粛々と スマホに瞳を凝らし お互いの顔を見ようともしない かつて うるさいくらいに コミュニケーションに いそがしかった人々は いったいどこへ 行ったというのだ いまでは 子どもの視線までもが 無機質な画面に 吸い込まれている その顔には 天真爛漫なはずの 表情はない 誰もが粛々と 従っている それら諸事情は

目に映る世界

子どものころに見ていた世界があった 少しだけ大人になったころ まわりを眺めてみると 子どものころに見ていたのと同じ 大人たちの世界がそこにあった もう少し大人になって 改めてまわりを眺めてみると 子どものころに見てきた大人たちが 同じようにそこにいた おかしいな ふと 思いにふけっていた 人類は 果たして進化しているのかな やがて 中堅どころの大人になっていた俺は 今度は 若き大人たちに視線を移してみた するとどうだろう そこにも かつて子どもの頃に見ていた 大

異なるもの

ここでは 誰も彼もが 不機嫌そうな表情をして ひどく焦っているかのように 急ぎ足で移動している 目的地に向かうための 手段を利用するという 共通の動機を持ち 俺たちは ただここで すれ違うにすぎない存在だ あらゆる方向に てんでばらばらに歩いてはいるが それぞれにそれぞれの 目的地がある 俺たちは行動する生き物 人類 白髪まじりのものもいれば 脂ぎったものもいる つるつるの肌に シミひとつ、シワの一本もないものもいる だが こうしてざっと見渡してみても 特別な違