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実家のゴキブリが可哀想な話

我ながらすごい題名だが、そんなリアルな虫描写はしないので読んでみてほしい。
ゴキブリが苦手な方は私の描いたヘッダーの子だと思うとマシだと思う。

虫描写より、我が実家の汚さのほうが具合がわるくなるかもしれない。


私は実家に用事がないと行かない。

親との折り合いというのもあるが、純粋に汚宅だからだ。


そう、あれは数年前に行った時のことだ…(ここ数年実家には行ってない。用がなくて。)

過去一番、荒れていた。

冬に行ったのにかすかに異臭の漂うダイニング(お勝手と呼んでいた)は足元に洋服と、ゴミと……ネズミの形跡があった。なんならネズミと対面した。チュウ。

幼き私と妹のお年玉を勝手に使い購入されたドラム式洗濯機が不似合いだ。
物置にされていて、可哀想すぎる。(我が実家の間取りは変テコ。いつか書きたい。)

テーブルの上にはいつ使われたのか不明の皿やコップが所狭しと並び、雑多に置かれた物は埃と油でベトベトしている。使われていない食器棚はホコリまみれ。梅雨になると蟻が雨避け引っ越しにやってくる。

たまに天井の何かが剥がれ落ちてくる…。
蛾が入ってきた時が一番激しい。

……まぁ、夏じゃないだけマシだ。
夏はコバエパラダイスだもの。

ねずみ達の何かをかじる音を絶えず聞くダイニングの辛うじて綺麗な椅子の上にお土産をそっと置き、私は母が居るであろう2階をめざす。

母は2階の自分の部屋にほぼ引き籠もりだ。
父と母はあの狭い家の中で、ほぼ合わないで生活をしているらしい。

廊下も狭い暗い、物が散らばる危険ゾーン。
階段の側面の板はいくつか外れてしまっている。
汚いだけじゃなく、単純に古い…。
窓が少なすぎる。

私は急な階段に向かって歩みを進めた。 
そして、気がつく。

階段の途中に彼(もしくは彼女)がいることに。

ゴキブリである。
我が家に侵入するゴキブリはやたらデカイ。
チャバネではない。
立派なクロゴキブリだ。

静かにとまっている。
どうする?私。
緊張が走る。
ゴキブリとは何時だって真剣勝負。

しかし、よく見てみれば彼(もしくは彼女)は既に事切れていた。

なんと!!

屈強なゴキブリでさえ命を失うとは…
とんだ実家である。

とりあえず、その亡骸を避けて2階に向かった。
母はゴミに埋もれるようなベットの上で窓を開けタバコをふかしていた。

いつか火事になる。

とりあえず、挨拶をしてお土産を椅子に置いたことを話す。
母は有り難うという。
ベットから立ち上がる気はまだないらしい。

そして、母に階段の途中のゴキブリの亡骸についてたずねた。

「ねぇ、階段でゴキブリ死んでるけど?」

母はのんびりタバコの煙を外に逃し私にこたえた。

「あー。あれ?2,3日前にママが踏んじゃったんだよね〜。」

なんと!!
あの亡骸は2、3日も放置されてるのか!!
しかも踏んだのかーいっ!!

呆れた。
驚きはしなかった。
そんな気はしていた。

「片してあげなよ…」

と言うと

「え〜koedaとっといてよ〜」

と言われた。

娘、数年ぶりの実家で可哀想なゴキブリの亡骸をゴミ箱に埋葬。

可哀想すぎる。
この家は虫のパラダイスでありながら、地獄でもあるのか……。

あぁ、とある言葉が頭に浮かぶ。

『善意で舗装された道は地獄に繋がっている』

善意ではないが、虫達からすると過ごしやすい我が実家。思わず寄ってきてしまう我が実家。虫嫌いな人のお宅より追い出されないですむ我が実家。

しかし、それは優しいようで優しくないのだった。デンジャラスだぜ。

あのね、……外のがマシだと思うのよ。

そうだ。別の時にも亡骸をみつけた。

実家のゴミの上を元気に歩く今は亡きミニチュアダックスのカレン(17歳で老衰。よくあのゴミ屋敷で……あの子は強い犬だった)の部屋に、それは干からびて放置されていた。


か、可哀想に!!

完璧に!!干からびている!!

勿論その時も母に

「ねぇ…ゴキブリが行き倒れて亡くなってるよ?」

と申した。
母はゴキブリを目視すると

「ほんとだ〜。このあいだなんか、お風呂場でママの足の上通ったからさ、お湯で流してやったんだ!」

と、いらぬゴキブリエピソードトークをかましてきた。

やはり、驚きはしなかった。
呆れたけど。
そして我が家のお風呂場がゴキブリスポットなのは私が幼少の時からである(ぶち壊れた換気扇を、無理やり取って出来た穴を塞いでいないため侵入し放題………)


ほんとだ〜と言われたゴキブリがゴミ箱に埋葬されたかどうかは知らない……。
私も毎度、埋葬してやるほど優しくない。


というわけで、我が実家のゴキブリは可哀想なのである。



ちなみに、私はゴキブリとは何時も真剣勝負だ。
彼らが壁に登るのが先か、私が仕留めるのが先か。

相手を熟知したほうが場を制する。
テリトリー争いである。

ゴキブリは滑空飛行しかできない。
地面にいる時は飛べることを忘れているらしい。危機に陥ると思い出すらしい。
なんか可愛い。

ちなみに、毎日触覚や足の手入れは怠らないゴキブリは案外埃っぽいのが苦手である。
乾燥も苦手である。
故に何でも食べるけど、塩は食べない。
なんか可愛い。

あと、ゴキブリを見た時に奇声をあげ、大げさな動きをするとそれを認識し『え?ここの人間まじヤバい!こわっ!』となって、仲間にそれを伝え、みんな寄り付かなくなったりする。
平和的なゴキブリとの距離のとり方である。
なんか可愛い。


私はゴキブリも可愛いところがあると思っている。コンビニで後輩とゴキブリのファンブック的な物を立ち読みし、二人で「可愛いね!」となった思い出。(因みにその後輩は、同じ誕生日の仲間)

私の大事なものを齧らなければ、別にいい。

しかし、彼らは齧るのである。
何でも齧るのである。
だから、真剣勝負!!

ここ数年は先手必勝。

玄関や窓枠にゴキブリが来ないスプレーを撒き、彼らに不評な家を作っている。
北関東にはアシダカ軍曹はいないからね。(いるところもあるのかな?)
いたらスプレーなんてまかないで軍曹に任せたい。

あ、だめだ。夫は虫嫌いなんだった…






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