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思いつき1場面物語 私達はまんまるのお月様を眺めました


私は窓際から外を物憂げに眺める彼に声をかけました。
「ねぇ!今日は満月ですよ!」
彼はゆったりした動作でこちらを見て
「えぇ。知っておりますよ。」
と微笑みました。
私はそれを聞いて嬉しくなって
「みんなでお月見しましょうよ!私、声をかけて回ります!」
と言いました。
彼はそれを聞くと、とても面白いという顔をして
「いいですね。では今夜お会いしましょう。」
と言いました。

私はさっそく皆を探しました。
お歌を歌っている街角や、お昼寝をしている軒先、集まる公園、次々声をかけていきます。

「あら、そんなに急いでどうしたの?」
彼女は楽しそうにふくふくと笑いました。
私は色々なところを走り回って乱れた息を整えながら言いました。
「ねぇ!お月様をみんなで見よう!お月見だよ!」
飛び跳ねんばかりの私の様子を見た彼女は楽しそうにコロコロと笑い
「私も行くわ!まだみんなに声をかけるの?」
と言いました。
まだ回ってないないところもあります。
「うん!行きますよ!」
元気よく答えた私に彼女は
「じゃあ、それも一緒に行く!」
と言いました。

彼女と歌など歌いながら大きな木の下を通りかかったときです。彼に会いました。
「やぁ、お嬢さん方。今日はお揃いでどうしたんです?」
彼はいつ見ても優雅です。
「まぁ、お久しぶりです。今日は満月なんですよ!」
私が言うと、彼は楽しそうに
「えぇ、存じておりますよ。」
と答えました。
「だから、みんなでお月見するのよ!あなたも来るでしょ?」
彼女がそう聞くと
「これは。『行かない』とは言えませんね。必ず行きましょう」
と笑って言いました。

私と彼女は次々声をかけていきましました。
美しい足取りの彼女にも会いました。
「うふふ。どうしたんですか?」
彼女は私達にそう聞きました。
「お月見するんです。今夜。いらっしゃるでしょう?」
「みんなくるのよ!素敵な皆様が!」
それを聞いた彼女は嬉しそうに微笑んで
「そうしたら、私も用が済んでから向かいますね」
と言いました。
私達はかならずだよ!と手を振って、もっと声をかけようと皆を探しました。

「なにしてるの?」
彼女は畑でトマトをもぎっておりました。
「お月見するから、みんなにお知らせしているのです!」
「みーんなでお月様を眺めるの!」
彼女はそれを聞くとニコニコと笑って
「私も行きますね。」
と言いました。
そして、私と彼女に採れたてのトマトを渡してくれました。
「歩き回って喉が乾いたでしょう?」
トマトは真っ赤でまんまるです。
有り難う。有り難う。

私と彼女は甘く熟れたトマトを噛りながら、みんなでお月見団子も食べたいね、柔らかい毛布なんかもあるといいねなんてお喋りをたくさんしました。


あっという間にお日様が眠りにつき、
静かにお月様が空をのぼるころ。

風の心地よい草腹を自転車で通りかかった青年は思わずブレーキをかけました。

だって月に照らされる草の海に沢山の猫達が思い思いに寝転がり、お月様の方を向いているのです。

それはまるで人間が、お月見をするかのようでした。

月明かりに照らされて、夜の風に優しく揺られて、お髭がキラキラ輝きます。

まるで小さなお星様。

猫達に気づかれないようにそっと自転車のスタンドをとめたつもりの青年でしたが、

猫達は音にびっくりして、あっという間に散り散りになり草の海はしんとしました。

青年は申し訳ない事をしたなと思いながら、猫達のいたあたりへ行きました。

そして、ふふふと笑いました。

だって、おだんごやら毛布やら、トマトのヘタやらなんやかんや…。

それは間違いなく、猫達のお月見会でした。




これね、本当はもっと沢山描きたかったけど今日は一場面ってことで。
砂鯨を追うもあることだしね。
実はこの一場面の長いの(頭の中は)もしもシリーズだったりするけど、きょうはあんまり強いイメージで書かなかったなぁ。笑

まんまるのお月様の下で
あなたと私はどんな話をするのでしょうね?


サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。