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連続1場面物語。 『サイドᗷ 』カナタ

熱気に包まれる体育館。
わけもわからず盛り上がる新入生。
いつ練習したんだよって言いたくなるほど
揃った合いの手の同級生達。

あっという間に散る桜の花が珍しく遅咲きで
大きめの窓の向こうが優しい薄紅色の光にそまっている。
どんなスポットライトより綺麗だと思った。

少しだけ冷える昼のステージで
俺らは何処よりも熱い場所にいた。
きっと世界の中で一番熱かった。

真ん中で飛んで跳ねるアイツは楽しそうで、
まるでこれが最後だっていうみたいに全力で、
ただひたすらに眩しかった。



「かっちゃん!!」

雑踏の中で、懐かしい声がした。
振り返ると悠一だった。

「おぉ!無事抜けてこれたんだな!」

仕事が立て込んでいるとlineしてきた友達は少し疲れた顔に笑みを浮かべ

「おぅ!僕、優秀だからな!終わらせてやったぜー!」

カバンを叩く。
なんなんだよ。その、昔からカバン叩く癖。
俺は思わず心でツッコミを入れて笑う。

かわってない。

「かわってないなぁ〜」

「そう?かっちゃんもかわってないよ!相変わらずイケメン〜!!」

人懐っこい笑顔。 
調子のいい感じ。
あの頃、一緒にバンドをやっていた時と、少しも変わらないと思った。

「ゴッドも来るって?」
「あぁ、来るってさ」
「揃うの久々だね!!」
「そうだなぁ〜…」
「思い出すよなぁ」
「あぁ…」
「かっちゃんが、母ちゃんだった日々」
「…お前らを産んだ覚えはありません」
「あははっ、それそれっ!かっちゃんったら、それだよな〜」

身を包んでいるのはお互いスーツなのに、錯覚で制服な気がしてくる。
何時もは重い革靴も、あの頃みたいに軽く感じる。

「なのに、くぐる暖簾はラーメン屋じゃなく、居酒屋だもんなぁ」

「へっ?なに??」

「いやぁ、大人になったなぁってね」


俺が司に初めてあったのは、高校1年の時だった。

その日は気持ちのいい晴天で、俺は新しくできた友達と一緒になってガキみたいに校庭でドッチボールなんかしていたんだ。

「あっち〜。駄目だぁ、俺、先に教室戻るわ」

「やーい!カタナのもやし〜っ!」
「なんだよーカナタァ!スタミナないなぁっ!」
「うるせー。俺は無理はしない派なのっ!」

正直言うと、少し飽き出していた。
もうすぐゴールデンウィーク。
入学式から数週間が経った。
中学生の頃は、高校生はもっと大人びた生き物だと勝手に思っていた。
けれど、蓋を開けてみれば中学生の頃と何も変わらない。
いろいろなとこから人が集まるから、知らない奴らもいて、目新しくて、最初は楽しかった。

「でも、昼休みにドッチやるのはかわんねぇ〜…」

そう呟きながら、入った教室。
誰もいないと思って油断していた。


俺は、きっと、一生その光景を忘れないんだと、その時強く思った。

開け放たれた窓。
柔く揺れる白いカーテン。
透ける陽の光。
誰もいない教室の机の上にそいつは座っていた。
ギターを抱え弾いて。
気持ちよさそうに歌を歌って。

まるで上等な映画のワンシーンみたいに格好良かった。

そいつは、俺が教室のドアを開けて数秒後にこちらを見た。

そして悪戯そうに笑った。

「あ、人来ちゃったか。」

「あ、なんか、すまんっ」

「いやいや、謝んなよ。なんも、悪いことしてないだろ?」

「いや、せっかく?気持ちよく歌ってるの邪魔したわ」

俺は、そろそろと静かに教室に入って、恐る恐るそいつに近づく。
そいつはどう見ても同級生。
そいつはどう見てもクラスメイト。

「高橋…ギター弾くんだな」

なのに、何故か凄く緊張した。

「うん。つか、よく名前覚えてるな。同中じゃないのに」

「あー…俺、人の名前覚えるの得意なんだよ。つうか、もう数週間もいるし、覚えるでしょ?」

「へーっ!いいね!俺はすぐ忘れちゃう」

橋本。
橋本司。
お前のことは、名前覚えるのが苦手なやつだって覚えていると思うぞ?と俺は思う。

派手なやつではない。
女子がイケメンだって騒いでるけど。
でも、気取ってなくてイイやつだって、同小の男子達が言っていた。

なのに、入学早々、何があったのか知らないが校長室の窓ガラスを割った。

そんで、ついたあだ名が「怪獣」だ。
勿論、本人の前では誰も呼ばない。
裏でコソコソ話すのに使うんだ。

目の前の怪獣は、とても怪獣にはみえない。
もっと、儚い…なんつーか、散ってく桜みたいに……

「おーい。」

「あ、ごめん、ボーッとしたわ」
 
「春だもんなぁ。ボーッとするよなぁ」  

橋本は笑ってそう言ってギターを弾き出した。
俺は何故か黙って隣の席に座った。
橋本は満足そうに頷くと、気持ちよさそうに歌いだした。


             



《この一場面物語は場面はバラバラでも続きます》

高校生やったことないから、高校生活を詳しくはかけなくて、バンドやったことないから、バンド活動は詳しくかけなくて、でも、私の頭の中で生まれた彼らのほんの小さな物語を書こうと思いました。

毎日は…書かないかな。
頭の中で思いついたら、思いついた端から書いていきます。

結末は決まってるんだけれど、大筋は決まってるんだけど、名前とか思いつきで決めてるし、このあとの中身も思いつきでかわるのです。

ひとつ。
これを書こうとおもったのは、ある歌の歌詞を聴いたとき映像が流れたから。
だから、その歌を聴きながら読むといい感じに……なるといいな。笑

言語は映像に
映像は言語に 

それが私の頭の中で
感じ取る世界がきれい。

体験できなかったぶん
想像していく。

きっとこんなことないよって
誰かは笑っても
私は私の作る物語を発信してみたりする。

読んでくれて有難う。

サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。