2023/1/23 埼玉県蕨市 池端先生講演会メモ

蕨市「生涯学習」テーマで招聘された池端先生の講演会を拝聴したと
きのメモの書き起こしです。

池端先生が蕨市にお住まいで地域の演劇活動に協力されていたり、当時の市長さんが「麒麟がくる」の大ファンということで実現した企画のようで、講演会のテーマ「生涯学習」と「脚本家のお仕事」を結び付けた講演内容でした。登壇者は池端先生のみ。
所々つながらない部分もありますが、よろしければどーぞ☺️!
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【市長からの依頼「麒麟がくる」の話について。】
・究極は登場人物がどういう生き方をするか。「人間を描く」が脚本を書くテーマ。
・20歳から脚本の仕事をし、30歳からNHKで仕事してきた。
・大河ドラマをやると3年かかる。
・「坂の上の雲」の助手・・・ドラマ部長から「大河をやろう」という話があったのが2019年。「室町の終わり頃をやりたいよね。」という話に。
・池袋の喫茶店でヒソヒソ話で主人公を誰にするか。信長、家康、秀吉は無い・・・足利の最後やりたい。
池:「義昭はどうか?」 
P:「地味でしょ。道三主役は?」
池:「道三主役だと1年もたない。光秀だと道三の近くにいたし、信長にも仕えた。」
P:「光秀は暗い」
池:「明るくする!」

・徳川家康…江戸時代に作られた歴史書は信用できん。信長はヒーロー扱いだが本当にいい人だったのか?
信長公記は家臣が書いたので、負け戦のことは書いていない。それを全部ひっくりかえそうと思った。

池:「光秀は面白いかもよ?」
P:「光秀誰がやるの?」
夏目漱石をやってた長谷川博己は光秀っぽい。神経質そう。(過去の履歴書から)神経質だけど、ちょっといい男。ミステリアスで。
大河は主役誰がやるのかがとても大事。主役から他のキャストを決めていく。信長は敵。

・100冊以上の本を読み、次の1年で構想を作る。最初の10話でここまで。
「信長・道三会見まで10話」とか。「道三は16話くらいで死ぬ」とか。
・NHK理事承認で池端年代表を出す。
「本能寺はどこでやるのか?」⇒「最後でしょ!」
僕は死ぬところは見たくない。(光秀が死んだところを)見た人もいないし。
・下書きを始めたのが2年前。最終回撮影ギリギリまで書いていた。2020年11月。 撮影に半月はかかる。


【脚本作成の流れ】
・・・ここで35話「義昭、まよいの中で」の画像がモニターに映される・・・

脚本が出来てから1話につき2~3ヵ所、歴史検証が入る。
 ↓
準備稿UP
 ↓
スタッフ200人に配る
 ↓
決定稿。
1話に2週間かける。

【役者さんへ出演依頼するときの話】
・「まんぷく」やってた長谷川博己は「ずっと関西で撮影で暮らしていて、帰ってすぐ撮影はやだ。疲れちゃうから。」
長谷川本人にPと演出と僕と3人で博己に会って、ごはん食べながら「やんなさいよ」と。
「漱石やってもらっているから、池端先生が言うなら仕方ない」雰囲気。
2~3時間説得した。
・長谷川博己に決まったらNHKは諸手をあげて賛成。そこからキャストを決めていった。

【光秀で何を書くか?】
・光秀は裏通りを歩く人だな、と。足利尊氏と同じように、歴史的に抹殺される。その尊氏についていく人がいた。悪い人ならついていかない。
・・・というように、悪く言われる人は面白い。
光秀も40歳まで、誰も知らない人だった。直観的に光秀は面白いと思ったが「信長を殺した薄暗い人」のパターンが出来ていた。
・資料を読むと、光秀は足利と信長ふたりに仕えていた。
・光秀は「源氏」の流れ。信長は「平氏」。家康は「源氏」。平安朝以降,だいたい源氏が政権をとっていた。武士社会では「オレは源氏だ。」というと都合がよかった。
足利尊氏は源氏。光秀は源氏だというと信用される。武士社会では源平抜きでは考えられない。光秀は源氏(足利)を支える気持ちになったのでは。
・40歳のとき、光秀は信長によって世に出してもらった。他説もあるがはっきりしない。

・「何年、何月、〇〇のときに、△△はどこにいた」表…香盤表のような一覧表を作る。そこからそれぞれの人物を作ってから下書きに入る。
やっていて楽しくてしょうがない!(仮説が全部、歴史考証に認められていく。)
・歴史の人物がどこで、どの瞬間、何を考えていたのかはわからない。そこを埋めていく面白さ。

【(ハセヒロの)1年間撮影中の疑問】
・光秀ってそんな格好よくないじゃん。信長はかっこいい。久秀は面白い。光秀はヒーローではない。40歳から世に出てきて、側に信長がいるし。
・博己がしょっちゅう電話してくる。後半は特に「ボク、カッコよくないですよね?」「信長、帰蝶は人気」
池:「主人公は主食。ご飯。周りはおかず(なので濃い味でいい)。最後に本能寺があるんだから!ガマン!」

・今の日本もそうだよ。日本人はどの時代でも同じような悩みがあった。朝鮮、百済、新羅の争いでも日本は迷った。そういう歴史があった。
この時代もそう。中国があって、どこかから鉄砲が流れてきて。これ使ったほうが有利だ、とか。キリスト教伝道師が来て、信長は「これは面白いな」と。だが当時の朝廷は喜ばない。
・信長はヨーロッパから武器を手に入れると有利になる・・・というのと同じ。日本は今でも左右の国を見ながら生きている。博己にもそうだと。
「足利につくか、信長につくか?朝廷につくか?」その中心にいる光秀像を作った。
・40話過ぎたあたりから光秀が立ってくる。
博己「いいですねー!」
最期の4話はノリにのってやっていた。樹を切るところとか。
・大河ドラマは今の人とどこか同じ。呼吸をしている感じを作らないと受け入れられ難い。

・人物としては光秀は二流。信長は一流。(※池端先生の中で。)
僕は緒形拳と30年間親しかった。緒形さんは二流だよね。師匠の辰巳柳太郎は一流。緒形拳は何故か舞台では映えない人だった。緒形さんは「自分は辰巳になれない」と思っていた。緒形さんは一流を知っている二流なのがすごい。ヒーローをやりなさんな。緒形が尊敬していたのは笠智衆。

【生涯学習について】
・楽しいことをやればいい。好きなことをやればいいけど、絶対というものは見つからない。そこに至るプロセスが楽しめればいい。
真理に達することはできないが、そこに至るプロセスが一生かけて楽しめればいいというのが生涯学習かと思う。

・絶対のヒーローは演じようとしても無理。光秀のように迷いながら本能寺という答えを出す。それが正しいかは分からないが。どう生きたか?がドラマ。

ー終わりー

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