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日記 力そのものでヤバいやつ

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思い通りにならないからって誰も悪くはない

THA BLUE HERB "COLD CHILLIN'"

少し前に変な試験を受けた。落ちたら来年無職になるらしいが、不思議なことに焦りの感情はなかった。絶対に合格する自信があったわけではなく、むしろめちゃくちゃに怪しい成績がために、先生方から個人的な激励(何?)を受けたほどだ。そんなこと言われても、ある程度勉強したらあとは腹を括って飛び込むしかない気がするのだが。その方がビビってるより楽しいし。

メンタルコーチ兼おれの親友こと jojiニキ

妙な自信があったのは、受験直前期は参考書など開かず、メンタルトレーニングに専念していたからだろうか。これ以上勉強しても効率が悪く、総合的に「強くなる」方が今後にも役立つとの考えによる。『阪神タイガース優勝への軌跡』とかいうドキュメンタリーはもはや何度視聴したか覚えていない。多分youtubeが擦り切れるまで見返したね。

本試験の特徴だが、合格基準が絶対評価ではなく相対評価であるからして、下位の何割かが必ず足切りの憂き目に遭ってしまう。妙な話、私が落ちても別の誰かが働くだけ、あるいは私が受かっても別の誰かが不名誉を被るだけといえる。そりゃやる気も出ない。

仮に私が落ちてさえいれば、全てが丸く収まる気がする。浪人というのは経験したことがなかったし、まぁ折角の機会だから、などと言って、それなりに気楽に過ごしてみせるだろう。私なら余計な焦燥感に駆られはしない、という表現の方がより適切だろうか。

要するに、どうせ誰かが苦しむのなら、それが駆り立てられるように努力を重ねた(にも関わらず、唐突な不運に見舞われる)善良な同胞であることはないだろう。しかしまぁ、何回か受ければ一回くらいなんとかなるのだから、あれほどまで恐れることではないだろうに。

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スキルと人徳との混同は『最弱テイマー』『悪役令嬢レベル99』などの異世界作品を中心に指摘されつつある。前者を始めとする一般的な作品群においては、固有スキルが隠れた有用性を発見することによって名誉の回復が試みられる。過酷な「異世界」と化した現代社会で生き残るための、ミクロな生存戦略としての側面が強いといえよう(※)。

※『最弱テイマー』が所謂ハックを推奨している作品ではなく、むしろ健全な社会への復帰を志向する作品であることを記しておきたい。『ゴミ拾い』アイビーに対して、人々は底抜けに親切だ。被虐待児の怯えを取り除くアニマルセラピーの要素が強い。

不吉な「黒髪」ユミエラ

一歩進んで、『悪役令嬢』では過剰なアップスキリングがギャグとして描かれる。人心を失った「裏ボス」ユミエラは未知の存在として恐れられていたが、ゲーム世界のハックにのめり込み、自己目的化の罠に陥った喜劇的な人物として再解釈される。スキルを駆使して生き残ったその先に、得難い「人徳」の問題が現れている。

参考画像1 特に内容とは関係ない

私しか見ていない『治癒魔法』では単なる治癒に留まらず、スキルとしての擬似的な「人徳」、すなわち治癒魔法使いとしての心得を学ぶ過程が描かれる。人に好かれるスキルの開拓は望ましいことだが、スキルが普及しきった先には、純粋な差異として先天的人徳が要請されるだろう。

先天的人徳と(それによってある程度規定されてしまう)後天的人徳とを可能な限り分離し、個別に評価することは可能だろうか。なんて考えながら、謎に性格まで褒められちゃってる先生のうますぎラップをヘビロテしていた。

なんか空から降ってくるやつ

東京に雪が降ったらしいとのことで、久々にカーテンを開いてみたが、薄汚い水滴が滴っているだけだった。便宜上、私の街にも綺麗な雪が降ったということにしよう(※)。それに直接触れてみたくて柄にもなく外出してみたが、私の想像以上に冬は寒く、厳しいものだった。また一つ学びを得る。

※実際、暗い部屋に篭って浮かれたTwitterを眺めていると、本当にそんな気がしてくる 東京行ったことないのにね

恒例行事であるが、東京に雪が降ると、北国の方々が苦言を呈される。いわく、我々の雪はそんな生易しいものではないぞ、と。確かにタイムラインには、膝まで埋まった脚、吹き荒ぶ暴風、押し潰されてしまいそうな家屋だとかがひっきりなしに流れてくる。その苦労を語る彼らの口調は呆れ交じりでありつつも、妙に穏やかなものを感じさせる。剥き出しの自然と共にある生活はどのようなものなのだろうか。

そういえば、私の街に雪は降らないが、静かな海があった。実家を出て2-3分も歩けばすぐに砂浜だ。犬を散歩するにはちょうどいいし、酔狂な半裸中年男性達がこの時期にサーフィンなどを楽しんでいる空気感も悪くない。波は思いのままにはならないが、乗りこなすくらいは出来なくもないらしい。

とはいえ、海もまた災害である。潮風は鉄を容赦なく錆びつかせ、やがて来る津波は全てを洗い流してしまうだろう。それでも私達はこの街を離れられない。それは海の民の宿命でしかないし、何より、真っさらになったこの街はきっと何よりも美しい。

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参考画像2 特に内容とは関係ない

『愚かな天使は悪魔と踊る』における人並外れたもの"Lalapalooza"たる天使のように、それは突然にやってくる。そして「命名しがたい関係性」「内から湧き上がってくる情動」といった未知(※)を前に、私達は身を委ねるほかない。それは至福の体験である。

※『最弱テイマー』が「名付ける」ことで自然を支配し、対峙せんとする姿勢と対比したい

※『かな天』は方向性のよく似た、擬似SMの『まほあこ』を取り上げてもよかったが、宗教上の理由で断念した。あんな破廉恥なアニメをみんな寄ってたかって褒めちぎっちゃって……

あるいは『どさんこギャル』第5話、美波はちょっとした不注意によってバレンタインのチョコレートを台無しにしてしまう。彼女はこれを自分の責任と主張し涙するが、それは彼女の責任ではなく、むしろ私達が(うっすらと)そう望んだゆえの出来事であると知っている。

翼は唐突に音楽を奏でるが、これは美波の霊的体験として理解できる。それが外部から突然にやってくること、(豊かな教養で覆い隠されてはいるが)彼がほとんど白痴であり視聴者/霊の依代としての機能しか持たないことからも明らかといえよう。

時代は先天的なものを平坦化し、後天的なものをコントロールする方向へと進みつつある。しかし、私はその先の、コツコツと積み上げてきたものが唐突で強大な力によって崩壊してしまうような神秘体験、これを待ち焦がれている。

彼女らはあまりにも無垢である、私はそれに近づきたいと思う。しかし、私は無知を支持しない。故に、悟性によって名状し難いものへと接近することによって。北見のギャルのあり方「どさんこギャル的実践」は無垢への祈りといえよう。そだね〜

真っ白な世界に色をつけることなどは
冬の民にとっては思いのままなのさ

THA BLUE HERB "COLD CHILLIN'"

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