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だめアニメ愛好会:低予算の矜持編

前回の反省+作品選考

2023回目の夏が始まったというのに、未だにブブキのことを考えていた。あのアニメはロボアニメというより、武器化のニュアンスを取り入れたバディものに分類されるのかもしれない。ジャンルをそのように捉えると問題点を整理しやすくなる。

端的にコンビが魅力的じゃないのが相当まずい。ふつうバディものといえば、2人の関係性こそがメインの見どころとなる。ブブキでは人間とブブキのコンビ、心臓と手足のコンビが描かれたが、どちらも十分ではない。

"イシ" きみたちがそう呼ぶもの

ブブキブランキ 星の巨人 ED "so beautiful ;-)"

前者に関しては、登場人物の意思が感じづらく、特にブブキ側にキャラクター性が皆無である点が問題だ。どうこねくり回しても、彼らは意思をほとんど持たない謎の生物としか解釈しようがない。バディものなのに相棒は虚無、これでは魅力が半減だ。

6話 石好きの不思議ちゃん静流
石/意思のモチーフはMyGOに受け継がれた

仮にブブキを犬猫(あるいはトロフィーワイフ)のようなものとして、人間達が勝手に成長する物語としてもなかなか渋い。ブブキは可愛くも可哀想でもなく、護ってあげたくなる要素が特にない。要するにただの武器となんら変わりない。

「右手ちゃん」はちょっとかわいい
むしろこいつに護られっぱなしじゃなかった?

人間側のキャラクターの魅力もまぁない。彼らの葛藤も多少描かれてはいるが、世界がごちゃついている間に、いつの間にか成長(※)してしまっている。彼らが悩みを昇華できたのか、冒険の意味があったのかと問われれば、よくわからない。

※していない説もある

後者に関しては、人数が1対4である点が良くない。一般的には男女1対1のバディを設定して、彼らが恋愛感情を含め相互に関係し合うストーリーを描くものが多い。1対4だと単純に多いので、相当意志が統一されていないとわかりづらい。

良い例として、『ダイナゼノン』はグダグダの序盤を経て、最終的に謎の一体感があった。各個人の悩みが一つの意志にまとまっていくストーリーには唸らされる。一方、本作はずっと「宝島行くべ〜」くらいのノリで変化がなく、イマイチ視聴者が置いてけぼりだ。

とにかく、シンプルにキャラクターに魅力がなさすぎるし、感情の変化や成長(=意思/意志)がわからない。ロボットがドンパチやっているうちに、なんか解決して終わってしまった。最終回だけはいい感じの雰囲気で謎にスッキリしたが、よく考えたらぶん投げENDだったので後からクソほど腹が立ってくる。

このラストは延々と擦り続ける

……疲れた。

疲労が抜けない時は古典的な男主人公×美少女ヒロインのバディものを見るといいらしい。確かにあれならキスして終われば最低限の納得感はある。情けないことだが、なんかハッピーエンドでエモくてエロければ、多分私は満足してしまうのだ。

とはいえ、美少女側の成長をしっかり描いてくれる作品の方がより現代的で好ましい。最近も『水星の魔女』に対して「1話が先進的な雰囲気だったのにラストが保守的すぎるだろ」というような批判が散見される(※)。女性主人公で何かやってくれる、そんな期待が裏切られてアンチに反転しているパターンだ。

※私は逆張りで水星本編をまだ見ていないが、評価が二分されすぎていて、さすがに自分の目で確かめないといけない気がしている。1話しか見ないで雑に叩いていた件についてはこれでチャラにしてほしい。

ならば逆に、コテコテの女性ヒロインなのに新しい何かをやってくれる作品を見れば、物凄く感動できるかもしれない。いい意味で期待を裏切ってくれる作品、それはだめアニメ愛好会がずっと探し求めているものでもある。

"少女の価値を世界に示せ"

2019年の意義、それは10年台の総括。間違いなく支配的なジャンルであった、ライトノベル原作アニメについても、自己批評的な作品があることを知った。すなわち、粗製濫造された意思のない少女ではなく、自らの手で未来を掴み取ろうとする意志ある一人の人間を。

読み進める前に1話かOPだけ試しに見てほしい

アサシンズプライドはその批評性も魅力的だが、なによりOP(※)の出来がイイ!これでクソアニメなわけがない、むしろ覇権レベルまである。この出来で大コケしたら責任を取ってブブキをもう一周してもいい。

※クソアニメに限って相対的にOPの出来が良く見える現象が報告されている。

・アブソリュート・デュオ(2015)
未だ語られる絶対的OP×クソ本編の稀有な例
新妹魔王、ファフニール、ワールドブレイクと共に2015冬クール、クソラノベ原作四天王の一角を担った

・C³ -シーキューブ-(2011)
大沼心(シャフト→Silver Link)先生がなんか1クールでOP2本書いた 
本編は誰も覚えてない

アサプラ 脚本に矜持を感じない

全然クソでした
ブブキ2周目決定です

明らかに悪いアニメではあるが、ところどころに原作の素晴らしさが滲み出ている。先に悪い点を述べてしまおう、脚本が最悪だ。

といっても、大筋はこのテキストに詳しい。なんせわざわざ原作まで購入して批評する気合いの入りっぷりだ。私はあくまで捕捉的な内容に留める。

とにかく5話の駆け足っぷりが凄まじい。原作2巻(選抜戦編)のいかにもアニメ映えしそうな内容をほとんど1話で消化し切ってしまった。クラスメイトとの和解、修行、vs妹、vs他校選抜、vs刺客…… 5-9話までフルに費やしても足りるかどうかのボリュームだ。

原作2巻はかなり重要なエピソードだ。本作は無能力者メリダが学園の底辺からのし上がっていく物語である。2話で一応初勝利をあげたものの、4話でも描写されている通り、未だその実力は疑問視されている。

原作2巻の内容は、まさしく彼女の実力が認められ、学園の代表者として受け入れられるためのストーリーであるはずだ。その過程をバッサリ省略してしまうというのは、英雄譚として致命的ではないだろうか。

まぁ、早足で消化した分、別のエピソードを挿入する余地が生まれたとも言える。第6話では、成長したメリダの勇姿が見られるのではないだろうか。

メリダさん(13歳)の勇姿 ダメだろ

本当にくたばってほしい。何故この微エロ回に1話丸々費やしてしまったんだ。天才の妹と決戦して、騎士としての精神と実力を認めさせる話削ってまでやることがこれか? 

ついでにこの辺からシンプルに作画が破滅し、本当にOPしか褒めるところがなくなってきた。ついでに、のノリで作画崩壊するなよ。

7-9話も変な事件(なんか吸血鬼がどうとか)が主軸なので、メリダにイマイチフォーカスが向かない。世界観とサブヒロインの話までやる尺の余裕なかっただろ。

12話 低速戦闘シーンはスカスカのガバガバ
貼りたくない なんかもう厄が移りそう

10-12話は原作3巻(司法試験編)の内容であり、ぽっと出のラスボス(誰?)との決戦だ。もはやバトルシーン以外に語ることはないのだが、唐突にアリスインワンダーランドの世界観にしたせいで、絵本レベルの作画が大悪目立ちしている。終戦です。

と思ったら急に画風が違いすぎる変な敵が
3秒くらいで画面通過して消えた 銃の悪魔?
崩してる分めっちゃ動くラストバトルに見えるが
動かないわりに崩れてるだけの大馬鹿

悪い点 総括

無能力者が高潔な精神と尖ったスタイルで真正面から成り上がっていくストーリー。B級ラノベアニメでは、本作のほかに『落第騎士の英雄譚』が挙げられるだろう。尺も予算も限られたなかで、原作を再構成し、描くべき演出(時には色と音すら!)を絞ってハイクオリティに仕上げた『落第騎士』の思い切りは、まさしく無能力者の戦い方として理想的だった。

落第騎士は冗談抜きで面白いので見なさい
全てのだめラノベを救ったまである英雄です
efとC3の大沼心大先生が創造なされた
本当にありがとう

あれだけの良作と比較してしまうと、どうしても本作は内容を絞り切れなかった印象になる。一言でいえば、だめアニメとしての矜持、限られた予算でなんとかしようとする意志が感じられなかった。低予算の作品が置きにいけば、そりゃ無難以下の代物になるわな。

良い点 

描写が全く足りていないので、私の妄想補完200%でアクロバットに擁護させていただく。比較対象もブブキなので相当甘い。

先生-生徒ものはあまり見たことがないのでわからないが、よくできたシステムだと思う。無双と成り上がりという矛盾した物語を2人の主人公に分割させることで、お得な視聴体験ができた。格下戦は飽きてしまう、格上戦はストレスを感じてしまう、両者の短所をうまく相殺している印象だ。

1話は文句なしに良かった。作画も良いし、メリダ様の折れない意志(※)にすっかり感情移入させられる。彼女のキャラクター性は魅力的で、テンプレなろう系男主人公の「先生」が絆されていくのも納得だ。私もすっかり萌え萌えである。

※予算の都合上、彼女のハートに十分には応えられなかったのが本当に惜しい

ストーリーも筋が通っている。無能力者のメリダが力を得て、後継者として認められる。本作のポイントは、借り物の微弱な能力をベースに、あくまで自らの力で強くなる点にある。

一から十まで手助けするのではなく、被支援者の力を信じて、生活を再建するための基礎を整えるに留める。これはまさしく福祉の文脈に他ならない。あくまで自分の足で黒猫/メリダを立ち上がらせようとした主人公は、暗殺者でありながら「先生」としての矜持を携えている。

1話 手を取らなかったメリダ

"少女の価値を世界に示せ"

そのキャッチフレーズに込められた確かな意志を本作からは感じ取れる。誰しも一人で立ち上がる力を持っている、一方的な救済の手なんてお断りだ。それは孤独な暗殺者たる先生の矜持とも重ねられる。

諦めろ、という救いの言葉は時に傲慢たりうる

本作はアサシンだけでなく、パラディンの矜持も見事に(※)描ききった(※)。弱きメリダを信じた先生、光に生きるものとして闇の存在たる先生を救おうとするメリダ。たとえ弱者や異人、人外たるランカンフロープであろうと、彼らは全ての存在の内に眠る光を信じている。

※諸説ある

"Share the light", 自らの光を信じて共に立ちあがろうと叫ぶ高潔さ、それ故に彼らは真のパラディンなのだ……

呂布カルマも見てます

ごめん まともに本編見てたらこんな感想は出てこないと思う この項は目瞑って書きました

批評文は作品が描いたもの、描こうとしたものについて述べ、描写の不足した部分については自らの想像力で補うことになる。批評文から本編という共通項を差し引いた時、自分でも自覚していなかった思想がまろび出る。

無のアニメには何ひとつ描かれていない、まるで真っ白なキャンバスのように。故にアサシンズプライド批評には筆者の意思が色濃く反映される。

仮におっぱいズプライド批評を書き上げてしまったスケベがいるならば深く反省してほしい。君はお乳のことばかり考えて、そのくせ作画の変なB級アニメを見ている変態だ。

いや でも ちゃんと見ただけ偉いよ

評価:3点(1話で90点 あと全部マイナス)

予算がないから仕方ない 意志は感じた
ブブキよりはマシ

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