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バイデン大統領下で進む原油危機と食料危機の愚策


【要約 引用開始】
●石油価格高騰のウラで密かに進む中東産油国「反米・親ロシア」の動き 6/11(土) 6:02配信【現代ビジネス】
石油価格はなぜ上がり続けるのか
 6月2日、石油輸出国機構…「OPECプラス」は…43万2千バレルの増産ペースを7~8月に同64万8千バレルまで高めることで合意したと報じられた。 
これで本当に増産が進むのであれば、需要と供給の関係から石油価格は下がる方向に動くと見るのが普通だろう。だが、実際には、石油価格はこれに逆らうように大きく上昇した。…
なぜ出てきた情報と逆向きの値動きになるのか…、私はこの「日量64万8千バレルの増産」という合意自体を、マーケットが信用していないということだと思っている。  

「OPECプラス」の(現在の)実際の生産量は目標よりも日量で260万バレル低い状態(だと)、経済産業省経済産業研究所の上席研究員である藤和彦氏は指摘している。つまり、増産するとの表明がなされているはずなのに、現実には減産になっていると見るべきなのだ。…  

(4月~5月)ロシア単独で156万バレルも減少している…ロシア以外も予定より日量100万バレルほど少ない生産量にとどまっている…
結局のところ、産油国は増産する気があまりないのだろう。

なぜ?親米だったはずのGCC諸国が(現在)GCC諸国とロシアとの接近?

※GCCとは、湾岸協力会議統一経済協定のことを言います。GCC加盟国はUAE、サウジアラビア、オマーン、バーレーン、カタール、クウェートの6カ国。

トランプ政権時代には、アメリカ国内で石油の大増産が行われて中東の産油国の経済的利益が圧迫されていたにもかかわらず、両者の関係は良好という奇跡的な現象が起こっていた。

それはアメリカがGCC諸国の敵であるイランに対して強い態度で対峙し、またサウジアラビアの人権問題などを黙認する動きに出ていたことが大きい。その上でトランプはGCC諸国とイスラエルの和解にも動き、解決不能と思われていた中東和平を、実現に向けて大きく前進させる動きも示していた。

GCC諸国にとってトランプのアメリカは、安全保障上の重要なパートナーだったのである。  
ところがバイデン政権になってから…アメリカはイランへの接近を急激に進め、サウジアラビアの人権問題などを大いに問題にするようになり、結果としてGCC諸国はアメリカに反発する動きを強めた。

アメリカに対する反発から中国やロシアに接近し、サウジアラビアは中国との間で、人民元で石油代金の決済を行う話まで始めている。… この中でGCC諸国はロシアの立場を尊重し、ロシアもまたGCC諸国の立場を尊重することが表明された。

…GCC諸国は西側諸国が求める対ロシア経済制裁には加わらないことでロシアを支援し、ロシアはイランに対して国際法の遵守を求める立場を表明することでGCC諸国を支持するという動きに出ているのである。  
イエメン内戦についてもロシアはGCC諸国の立場を支持するとし、イランが支援するフーシ派に背を向ける態度に出た。  

ロシアとイランはともに反米国家として密接な協力関係を築いてきていたから、この動きは意外であった。  
(但し、ロシアとイラン)両国は5月末にも銀行とエネルギーの分野で協力を強化するための3つの覚書に署名していた。…

つい最近もギリシャで拿捕されたロシア籍の船にイランの原油が積み込まれていたのが発覚した… 
従って、今回のGCC諸国とロシアとの合意は、ロシアのリップサービス程度のもので、それほど本格的なものではないと見るべきだとは思う。その程度でもGCC諸国としてはロシアがイランを牽制する後ろ盾になってくれたことを心強く思ったのだろう。  

…親米だったGCC諸国が明確に反米に鞍替えし、アメリカよりもロシアを頼りにする動きに出たことは注目しておく必要がある。

西側が増産すれば解決する話なのに 

 この観点から「OPECプラス」の増産ペース拡大合意の報道(は)…西側の反発を招かないための口先の話でしかないということが見えてくる。…  
この問題を解決するにはどうすればいいか。西側が増産すれば一番早い。アメリカ、カナダ、ヨーロッパなどには石油資源はたくさんあるわけだから、ここを掘りさえすればいいだけである。それなのに掘らないのは、例の「気候変動」の問題があって、自国の石油増産にはなかなか走れない縛りを西側が付けているからだ。  

不都合な真実を言えば、こうした運動を盛り立ててきた環境保護団体には、中国やロシアが後ろから手を伸ばして影響力を行使しているということがある。西側でこうした運動が盛り上がり、西側での資源採掘が止まれば、資源国であるロシアは潤う。…  

アメリカでは石油の増産がなかなか進められない一方で、石油の精製能力も落ち込んでいる。石油関連の投資を「悪」だとみなす潮流に飲み込まれ、必要な増産すらままならないようになっているのである。  
供給能力の上限まで需要が拡大する中で、アメリカのガソリン価格は現在1リットルあたり160円程度まで高騰した。夏季のドライブシーズンが本格化する中で、8月には1リットルあたり200円以上に上がるのではないかと、前述の藤和彦氏は述べている。  

この国内問題を回避するために、アメリカはとんでもないことをやるかもしれない。というのも、バイデン政権が「国内の燃料価格の高騰を緩和するため、原油と石油製品の輸出制限することを除外していない」と言い出したからである。アメリカは現在、日量1000万バレル以上の石油製品と原油を輸出しているが、ここにメスをいれるかもしれないと言っているわけだ。

GCC諸国の動きを軽視すべきではない

秋の中間選挙で米民主党が歴史的敗北を喫するのは確実だと思われているが、この敗北を幾分かでも取り戻そうとして、国内価格対策に打って出ることは大いにありうるだろう。そんなことが行われたら、世界的なパニックが起きるのは避けられない。ここに至っても、問題の本質的な解決のために、石油の国内での増産に積極的には動かないのが、アメリカのバイデン政権なのである。   

なお、ロシアの石油は販売先のシフトが進み、6月には増産に向かうようだ。これが世界経済の混乱を抑制するものとして作用することになるだろうが、そんなあり方でいいのだろうか。  

IEAの発表は間違っていて、ロシアは実は5月からすでに増産しているとの話もある。偽装的な輸出がカウントされていない可能性もある。海上で積荷をすり替えるなどの手法により、アメリカにさえロシア産の石油が到着していると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じた。  

EUはロシアの原油については制裁の発動後6ヵ月、精製した石油製品については8ヵ月を経て、輸入を禁止することを打ち出したが、ロシア産の原油の穴を埋めてくれるはずのGCC諸国が、ロシアと歩調を合わせるようになっていることの意味を、軽視すべきではない。GCC諸国が増産してくれなければ、全てのスキームが崩れることになるからだ。  

西側の金融機関が石油関連の投融資を事実上禁止することで、GCC諸国は自分たちが増産しなくてもシェアを食われる心配をしなくてもいい環境になっている。西側諸国内のみならず、世界中での石油資源の新開発にブレーキがかかっているのである。だったら増産なんかわざわざやらずに、高値で取引できる環境を長く維持した方がいいに決まっている。  

エネルギーで苦しい状態が続くことをフランスやドイツは本音では回避したいと考えていて、プーチンとの間で停戦をめぐる動きを進めるようになった。  

ドイツはウクライナへの重火器の提供を渋々ながら認めたはずだが、実はウクライナには一切届いていないという話もある。本来進めるべき方向とやっていることがあべこべで、ロシアとの妥協を念頭にロシアに対する刺激を避けようと動いているのである。  
強権国家をのさばらせないために、従来の脱炭素路線を30年間延期しようと主張すれば、この戦争の展望が大きく変わるのに、そんな発言をするリスクは誰も取りたくないようだ。  

プーチン・ロシアが生き残り、強権国家の暴走を経済制裁では止められないという挫折を西側が味わい、制裁に参加しなかった国々がおいしい思いをしたという最悪の選択に向かって、世界は動いてしまうのかもしれない。  

そうした結果が生まれたとすれば、それを一番喜ぶのは中国であり、力による暴走をますます加速させることになりかねない。
朝香 豊(経済評論家)

【引用終わり】
「自国の安全は、経済に優先する」とは、真実のようです。

と、同時に「自国の国体を守るためには、安全をも犠牲にする」場合もあるわけです。

だからウクライナは、自国の自由・民主(=国体)を優先させて、2014年にロシアにクリミア半島を奪われてからは、自国経済に被害が出ても、それまで最大の貿易相手国だったロシアとの貿易を減少させてきていました。そして、2022年にロシア軍が侵攻してくると、「ロシアのプーチン大統領を批判したら、逮捕される・拷問される・etc、そんな国になるのは嫌だ。自由で民主的な今のウクライナの国体を守りたい」と、ロシア軍と戦っているのであります。

 これはGCC諸国・特にサウジアラビアでも同じようです。

「サウジアラビア(の支配層)は、現在の王政によるスンニ派イスラム支配という国体を守りたい」のであります。ですから、イランのシーア派革命勢力が中東で勢力を拡大させようと暗躍することで、「サウジアラビアの国体が攻撃されている」と、認識するのは当然です。だからこそ、隣のイエメンがイランのシーア派革命勢力に乗っ取られそうになった時に、戦争を仕掛けたのであります。

そして、「サウジの国体(王政)維持に好意的で、ひそかに力をかしてくれていた、トランプ政権がアメリカ国内で石油を増産して石油価格が下がり、サウジ経済に被害が出ても、親米国家として友好状態にあった」のであります。

 そのサウジアラビアを中心とするGCC諸国が、「(ロシアがイランと袂を分かつというのは、嘘に決まっているのに) 嘘でもいいから、ロシアの支持も欲しい」と、親米から米ロ中立(もしくは高みの見物)に流れてゆくのですから、バイデン政権は世界を俯瞰した外交が全くできていないということになります。

 今、世界のリーダー国のなすべきことは、この戦争によるエネルギーの不足を解消すること・食料の不足を解消す目事であります。

 バイデン政権には、その2つともができます。
まず、西側友好国に向かって、「自由を守る非常のときであるので、石油を大増産しよう」と呼びかけることです。

 そして、有志国に呼び掛けて護送船団をくんで、ウクライナのオデッサに眠る小麦を飢餓が始まったアフリカ諸国に届けることです。

 私には、バイデン大統領が「脱炭素教にかぶれてしまって、今世界を救う行動ができない」ということは、ロシアのプーチン大統領が「『ロシアは大国教』にかぶれてしまって、隣国ウクライナに攻め込んで世界に恐怖とインフレ不況と飢餓を発生させている」ことと、相似形のように見えています。

 バイデン大統領が、「選挙で選ばれた政治家のなすべきことは、(人々が苦しむ)自分の理想の実現を求めるものではなく、(より多くの人たちが暮らしやすくするために) 現実に対してどう対処するかである」ということがわかってくれてさえいれば…と、私は願っているのでありますが、どうも「サウジが敵対国になっても、人権を騒ぐ」「世界がエネルギー不足になっても、アメリカで原油・天然ガスの増産を抑える」ような実際の行動をするところを観ると、「自分の理想の実現を求める」時にはた迷惑になるタイプの政治家さんのようにしか見えません。

 私には、今、アメリカ大統領のいうべきことは「千年前・二千年前、今より海面が2メートル高くて地球が暖かった時には、人類はその人口を増やしていた。だから、気候変動を恐れるのはやめよう。けれど、自由がなければ、我々の心が死んでしまう。食料がなければ、生きられない。だから、原油を増産して、アフリカにウクライナの小麦を届けよう」だと思うのですが…。
バイデン大統領は、そんな事を言う気配がありません。

「中国とロシアよりは、アメリカの方がましだ」なので、日米安全保障条約を支持している一人の日本人としては、とても残念です。
 

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