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親愛なる君へ。年に一度その手紙はこころのポストにやってくる。

誕生日の日付に変わる23時59分。わたしには楽しみなことが増えた。

誕生日なんだから、楽しみな気持ちは当たり前なんじゃい?なんて思うかもしれないが、それ以外にもわくわくする理由があるのだ。

55・56・57・58・59...

「誕生日おめでとう」ちょっと恥ずかしそうに、そしてぶっきらぼうに手紙が渡される。

その人から誕生日に手紙をもらうのは、今年で3回目。「誕生日の日だけね、他の日にはしないよ。特別だからね。」決まって早口でその言葉を言うが、もらう側はそれすらも嬉しくて。ちょっと感動すら覚え「ありがとう」の気持ちでこころのポストが満タンになるのだ。

わたしは小さい頃から手紙を書くのが好きだった。加えてレターセットを集めるのも好きだったので、文房具屋さんに行ってはお気に入りを見つけて、友達やお母さん、遠くに住んでいる従姉妹に送ったりしていた。

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〇〇ちゃんへ 
お元気にしていますか?

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はじまる手紙は、普段では使わないちょっぴり背伸びした言葉使いになり、どこか違う自分になれたようで、小説家のごとく筆を書き進めた。

大人になってからは、めっきり手紙を書くことはなくなってしまった。いつでも簡単に送れるLINEや、ボタンひとつで繋がる電話で事足りてしまうようになったから。

けれど、時としてそれだけでは伝わらない言葉があるんじゃないか、そう感じることがあった。

そんな思いを手紙とともに、ある人に送ったことがある。

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「手紙なんて初めてもらったよ。文才があるんだね。すごいよ!」こころがじわじわと温かくなる嬉しい言葉が返ってきた。

人生で手紙なんて書いたことがない、とその人は言うが、それ以来返事をかかなければというプレッシャーからか、誕生日の日にだけ言葉のプレゼントをくれるようになった。

運動場で子どもたちがのびのびと走り回るような、元気いっぱいの文字と文章を考えるのが苦手だと言いながら、沢山考えてくれたんだろうな、とわかる言葉たち。

普段レターセットなんて持たない人だから、文房具屋さんに行ってわたしが好きそうな柄を選んでくれたのであろう、かわいい動物柄の封筒たち。

いつしかもらう手紙は、わたしのお守りになっていた。仕事で理不尽なことが起きても、つらく落ち込むようなことがあっても、支えてくれる言葉がわたしにはある。

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親愛なる君へ
お元気にしていますか?

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涙を流すほど悲しいこと、作り笑顔しちゃうほどつらいことがないように。泣いちゃうくらい嬉しいこと、笑っちゃうくらい楽しいことで毎日が溢れますように。

そう願い、わたしもその人に言葉を紡ぐのです。


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