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六車奈々、会心の一撃!

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タレント・女優の六車奈々によるエッセイ集。子育てをしながら働く、ハプニングと全力投球な日常をエッセイでお伝えします。
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#育児

鬼退治

まもなく15時40分だ。 私は心が落ち着かず、息が苦しくなった。 今日は、節分。 あと数分で、鬼たちが保育園を強襲する。 娘は大泣きするだろう。 怖い思いをするだろう。 そう思うと、胸が苦しくなった。 節分の数週間前から、保育園では準備が始まった。 『節分の日、もしかしたら保育園に本物の鬼が来るかもしれない』 そんな噂を聞いた3歳児クラスの子供たちは、怖くてドキドキした。 森へ柊を探しに行き、鰯と一緒に窓や玄関に飾る。もちろん皆で、豆も買いに行った。 「豆をぶつけて

ウンコ、ウンコ、ウンコ!

あなたは、自分のウンコを初めて見たときのことを覚えているだろうか? 娘は一歳半のとき、期せずして自分のウンコと対面することになった。 ちょうどお風呂に入っていた時、便意を催してしまった娘。急いでトイレに連れて行こうとしたが、二人が体を拭いてからトイレに向かう時間など、あるはずもない。かといって、ウンコを我慢できるような年齢でもない。 「せりちゃん、ここでしていいよ。頑張れー!」 人は教えられなくてもウンコの時にはウンコ座りをする。 娘は口をへの字にしながら、ウンコを頑張

45歳、新たな夢へ

45歳にして、国家試験を受験をした。 受験なんて大学受験以来。かれこれ四半世紀ぶりである。 昨年の12月。私は突如、保育士の資格を取りたいと思った。自分の子育てに役立つことは勿論だが、美人塾の活動をもっと広げていきたかったからだ。 そのためには、取りたい国家資格が二つある。まず一つ目が、保育士の資格だった。 とはいえ、私の毎日は忙しい。昼ドラの主演をやっていた時より忙しいと思う。家事、育児、自分の仕事に加え、主人の仕事まで手伝っている私は、朝から晩までスケジュールがパンパ

関西魂

その日も、娘と公園のブランコで遊んでいた。 早めに保育園へお迎えに行けると決まって公園へ立ち寄り、ブランコで遊ぶ。 ブランコは、娘が一番大好きな遊具だ。 私もたまに一緒にやってみるが、三半規管が衰えたのか、すぐに気持ち悪くなってしまう。子供の頃は、娘と同じくブランコが一番好きだったのに、歳には逆らえない。そんなわけで私は専ら、娘の背中を押してやるのが役目だ。 娘が乗ったブランコを高く持ち上げて手を離すと、ブランコは大きな弧を描いた。この大きな揺れが、娘のお気に入りだ。風を受

賢い女

「え?ハジメさん、毎晩ご飯作ってるんですか?というか、朝も作ってません?」 私は思わず聞き返した。 すかさず、ヨメが答える。 「だってぇ。。。私が作るより、ハジメさんが作った方が美味しいんだものぉ〜。ね?ハジメさん。」 「いやいや、まぁゴハン作るのは好きだしね。」 褒められたハジメは、照れ臭そうにしながらも嬉しそうだ。 このヨメは、自称『天然ボケ』である。 そして自称『ドジ』である。 しかし、本当は違う。 相手を油断させるのがうまいし、人に尽くさせるのがうまい。現

お花を摘みにきたの

私はこう見えて、花が好きだ。 といっても花の名前に詳しいわけでも、花を上手に生けられるわけでもない。ただ気に入った花を買っては、お気に入りの花瓶に飾る程度だが、それでも独身の頃から部屋に花を欠かしたことは無かった。 今の時代、ブリザードフラワーやハーバリウムなど、手をかけなくても生き生きとした美しい花を飾ることはできるが、私はやっぱり生花が一番好きである。 毎日水をかえないといけないが、手間をかけるからこそ愛情が湧く。 いつかは枯れてしまうが、だからこそ命あるものは美しい

しくじり先生

私は、自分の体で後悔していることが三つある。 一つ目は、目だ。 我が家は、父が2.0、母が1.5という視力の良さ。遺伝的に考えれば、私の視力も良いはずである。しかし私の視力は、右目がえげつない乱視の0.8、左目はちょっと乱視の0.05なのだ。 なぜこうなってしまったのか、原因は自分が一番よくわかっている。 小学校の頃、私は漫画本を読むのが大好きだった。母も漫画を読む人だったので、漫画を禁止されたことは一度も無い。注意されたのは、「目が近いよ!もっと離して読みなさい!」だけ

決めた!

子供の何気ないひとことは、大人をハッとさせることがある。 先日、三歳の娘とお風呂に入っていたとき、 娘が「決〜め〜た!」と言った。 「決めたって、どういう意味?」 と聞いてみると、 「えっとね、上手に考えたことを言うの。」 と答えた。 目から鱗だった。 そうか。決めたと言うのは、上手に考えたことを言うのか。。。 そうだよな。 決めたってことは、それが一番良いと思うからだよな。 それって、上手に考えたことなんだよな。 なんだか私は感動してしまった。 大人になると、たった

ノーメイクの悲劇

私は普段、どすっぴんである。 メイクをするのは仕事する時、人に会う時くらいで、基本的には すっぴんの方が多い。 その日、私は実家でダラけていた。だるだるの家着に、どすっぴん。 仕事柄、人前ではきちんとしないといけないので、家にいる時くらいは 思いきり緩みたい。おやつを食べて、テレビを見て、幸せのユルユル時間を過ごしていると、突然『ピンポーン』と鳴った。 誰だ?玄関を見てみると、宅配便だった。すっぴんだし、 だるだるの家着だし、どうしよう。 30歳当時の私は、関西で色々な番

ビジネスクラスの蟻地獄

仕事で飛行機に乗ることはよくあるが、 ビジネスクラスに乗せてもらうことはなかなか無い。 ところが私は23歳のとき、海外ロケで人生初のビジネスクラスに 乗せてもらった。理由は『タレントさんだから』という太っ腹なもの。 あぁ、神さまありがとう! 私は特別待遇に感謝をし、機内へと乗り込んだ。    「機内食、楽しみ〜!」 ワクワクしながら窓側の席に腰をおろすと、さすがはビジネスクラス。 シートがゆったりしているではないですか。 贅沢気分を満喫していると、 「お。ワシ、奈々ちゃんの

偕老同穴

タミちゃん。 父の母、つまり私にとって父方の祖母の名前である。 漢字で書くと『多美』。多く美しいとは、なかなか厚かましい名前だ。  しかしタミちゃんに言わせると、若い頃はかなり美人だったそうだ。 だから本人曰く、『多美』に名前負けはしていない。 タミちゃんは、お見合い結婚だった。親どうしが決めた相手と、 お見合いで一度会っただけで結婚が決まった。 2回目に会ったのが、結婚式当日。 会場でどの人がお婿さんなのか、顔がわからなかったそうだ。  恋愛期間を経ずに夫婦になった二人

お稲荷さんの不思議なご縁

大学四年の夏、私は親の反対を押し切り、モデルの道に進むことを決めた。高校生からアルバイト感覚で始めたモデルだが、本気でやったら 自分がどこまでできるのか、挑戦してみたかったのだ。 ある日、私は売れっ子モデルの友人と会う約束をしていた。 仮に名前をあやちゃんとしよう。 あやちゃんはスラリと脚が長く、脚モデルもするほどの美脚美人である。 約束の朝、あやちゃんから電話がかかってきた。 「京都のお稲荷さんへ行きたいから、時間をずらしてほしい。」とのこと。 京都のお稲荷さん?私の家

アイドルの追っかけ

その日、私は札幌から東京へ戻るため飛行機の中にいた。 8月とあって満席だ。ガヤガヤと賑やかな機内。 飛び立つまでもう少し時間がかかるだろう。 「KAT-TUNですか?」 いきなり隣の女性が声をかけてきた。 歳の頃は、20代後半か。私より歳下だと思う。 私は意味がわからず、問い返した。 「へ?KAT-TUN?」 「あ、KAT-TUNのコンサートでは無かったのですね、すみません。 実はKAT-TUNの札幌公演を見に行った帰りなんで、もしかしたら 同じかなぁと思って声をかけてしま

本当にあったコワイ話

大抵の子供は、母親が大好きである。 どんなに叱られても、やっぱりお母ちゃんの存在は特別なのだ。 当然のことながら、私も母親が大好きだ。 感謝と愛情と、言葉では言い尽くせない深い想いがある。 他方、母親にとっても子供は特別だ。 私は娘を授かって、初めて自分の命よりも大切なものに出逢った。 今、自分が生きている理由は娘だけだと言っても過言ではないほど、 かけがえのない存在である。 そんな母と子の関係だが、私の祖母『タミちゃん』も御多分に洩れず、 やはり母親が大好きであった。