シェア
その日は、この夏一番の暑さだった。 男は大事なお客様との接待で、ゴルフの真っ最中だ。 ゴルフ場には日陰など殆ど無い。 吹き出す汗を拭いながら、コースを歩いていた。 男とは、私の友人である。仮に名前をヨシオにしよう。 「ナイスショット!」 ヨシオは大声で讃えた。 今回のメンバーは、四人のうち三人が得意先である。 つまりヨシオは、メンバー全てに気を使わねばならなかった。 「いやぁ、さすがです!よく飛びますね〜!」 「今のパット入れちゃいますか!僕なら絶対にスライスだと思って失
二十九歳の私は、結婚の夢も仕事の夢も失い、絶望の淵にいた。 ここまでの話は『六車奈々、会心の一撃!』の、 『変身 https://note.mu/nana_rokusha/n/n1ab6605ba071』 『仕事か結婚か、それが問題だhttps://note.mu/nana_rokusha/n/n589237c50768』 で記している。 もし心の傷が目に見えたとしたら、それはズタズタに切り裂かれ、手の施しようがないほど無残な状態だったろう。後にも先にも、これほどまでに辛い
24歳の私は、売れっ子モデルとして絶好調!大忙しの毎日を送っていた。 そこまでの話は『六車奈々、会心の一撃!~変身~https://note.mu/nana_rokusha/n/n1ab6605ba071』 で記している。 さぁ、いよいよ東京進出だ! 順風満帆な私は、上京を視野に入れ始めた。 そんな矢先、東京でオーディションが入った。やっぱり東京が私を呼んでるのかしらん。 せっかく東京へ行くなら、テレビ局に連れてもらわなきゃ!私は本社の芸能担当マネージャーに連絡をし、ドラ
大学四回生の時、モデルで食べていくと決めた。16歳から始めたモデル業だったが、学生時代は学業と部活中心だったため、実際には月に1〜2本ほどしか仕事をしていなかった。 その間にも、事務所には新人モデルがどんどん入ってくる。新人たちは、最初は先輩の私に低姿勢に接するものの、私に仕事が無いのがわかると、明らかに態度が変わった。 『売れないモデル』。 それが、学生時代の私のポジションだった。 私は悔しかった。 本気でモデルの仕事をしたら、どこまでいけるのか?自分を試してみたかっ
TBS系『カラダのキモチ』でスタジオ収録したときのこと。 その日のゲストは、女優の故・坂口良子さんだった。 私はいつものように、出演者の控え室へご挨拶まわり。 もちろん坂口さんの控え室にもご挨拶に伺った。 坂口良子さんと言えば、大女優。 どんな人だろう。 私はドキドキしながら、ドアをノックした。 「はぁい!どうぞー!」 軽やかな声が聞こえ、その直後スタッフの方がドアを開けて下さった。 中を覗くと、坂口さんは鏡の前でヘアメイクの真っ最中。 「メイク中に、すみません!」 「