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令和5年12月文楽公演「源平布引滝」文楽鑑賞教室「傾城恋飛脚 新口村の段」シアター1010 2023年12月

『令和の大巡業』の初回公演(?)、初代国立劇場での公演が終了し関東は劇場を変えての公演。北千住は、長年通勤で使用している駅のため、個人的には愛着がありますが、やはり半蔵門に比べて遠い方もいらっしゃるのでTwitterでは評判を気にしていました。劇場のサイズや見やすさ、そして観劇後のお食事やお茶などのアクセス含め、総じて好意的なご意見が多かったので、嬉しいです。

私にとってはアクセスが良いこともあり、本公演「源平布引滝」は、初日と千穐楽、同時開催の文楽鑑賞教室は週末2日連続で参りました!プレイベントにも行きましたのでレポします。

初日前のプレイベント

シアター1010の入っている丸井の前のペディストリアンデッキにて、人形遣いのプレイベントがありお買い物のついでに見物してきました。とっても天気が良く観客も多数の大盛況(嬉しい)。前列で陣取っている方や少し後方で待っている方などこのイベントのために集まった方も多数いらしたように思います。国立劇場のスタッフの方々が背中にマークのついたドカジャン姿でチラシを配っていたのが印象的。

そしてご出演は、玉翔さん、玉延さん、玉征さん。定番の人形解説でしたが、玉翔さんがちょいちょい笑えるフレーズを差し込んできて。(個人的に好きなテイスト) 玉延さん・玉征さんは関東出身の同級生コンビ。玉征さんは松戸のご出身ということなので、北千住は馴染みのある駅でしょうね。

お馴染みの人形解説

▼同級生コンビ。こちらのインタビュー、とても読み応えがあるのでお勧め

実演も定番の二人三番叟ですが舞台がめちゃ近いので、前方の観客の皆さんには、鈴振りのご利益がありそう(笑)。

又平さんお一人(?)のご出演

最後の又平さんの眉毛「いつもよりたくさん動かしてます!」という感じで笑ってしまいました。


国立劇場ウェブサイトにもプレイベントのレポートが。500人程度の方が見物されたそうです。


「源平布引滝」

シアター1010での初日。何となく地方公演と同じしつらえなのかな、と、先入観を持ってましたが、国立劇場を再現していることに感激しました。ぐるりと回って太夫・三味線が登場する装置のついた演台(『出語り床』というそうです)も、若干小規模ながら再現されていて、文楽ファンには嬉しい驚き。字幕は両脇ではなく舞台上部に(文楽劇場と同じですね)。ただ、フォントが違うのが「へぇ」と思ったり。舞台上方の御簾も設置されていました。国立劇場をできるだけ再現しよう、という制作の方々の努力が垣間見れました。


文楽を見に来た!と思える開幕前のこの風景


パンフレットと2月公演のチラシ

特に初日は特別な熱量を感じて感無量。シアター1010は一年に一回は必ず戻ってくる新しい拠点ですし、演者さん達の思いを感じました。

「源平布引滝」初めて見ましたが、途中から若干ファンタジー展開になるし子役が可愛いし、乗馬シーンはあるし・・ということで面白いお話でした。舟のセットなども大掛かりで、劇場の制限はありつつも本公演らしいなぁと。

個人的には太郎吉を担当した玉彦さん、とってもよかったです。わんぱくさ子供らしさ、一方で将来大物になりそうな雰囲気。そして、文司さんのおじいちゃん役。老人役が上手いと場面の雰囲気が定まるなあと発見しました。よく腹にイチモツある矍鑠とした老人がキーパーソンとして出てきますが、今回のおじいちゃんは普通の田舎のおじいちゃん。普通ぽさと田舎らしさがよく出てて、だからこそ、太郎吉くんが糸車に乗って乗馬の真似事をするのがほっこり。田舎の温かみを感じました。

そして、源平布引滝は織太夫さんの思い入れのある演目のようで、語りにこめる集中力がすごかったです。(以下の記事参照)

時代物はお侍さんの派手な動きで迫力満点。特に、瀬尾十郎という悪役。長身の玉助さんが縦横無尽に大きく動いていて、とってもカッコよかったです。玉助さんのお侍役、グイグイ前に出てくる押し出しと躍動感があって、いつも楽しみにしています。

文楽鑑賞教室「傾城恋飛脚 新口村の段」


学生さんの団体などが入る「文楽鑑賞教室」。もちろん一般でもチケットが購入できます。コンパクトな演目と解説コーナーがあるため、入門編としてぴったり。

↓写真がたくさんあって様子がわかります

人間国宝クラスのベテランは出演しないため、文楽ファンにとっては、いつもと違った配役が見られる楽しみがあります。Aプロ、Bプロとダブルキャストですので、見比べる楽しみも。これまでも鑑賞教室公演で目立つ演者さんのファンになったケースが多々あるので、両方のキャストを見にいきました。

演目は「傾城恋飛脚」の「新口村の段」。近松門左衛門の「冥土の飛脚」をベースにしたお話です。主人公の忠兵衛が公金を使い込んで逃避行を重ねて故郷にたどりつくお話。忠兵衛の実父の老人(孫右衛門)が実質的に主人公となる場面です。

学生さんが初めて見るには地味すぎるかも?と思いつつ、最後、雪が降りしきる幕切れはとても美しかったです。

今回は藤太夫さんの語りが圧倒的に沁みました。老人が道を踏み外した息子に向ける親心と世間体との葛藤。声自体の年代もそうですし、ベテランが切々と情を語るというのは良いものだなぁ、と、ついつい涙が溢れました。

そして今回は吉田一輔さんが孫右衛門役に配役されてびっくりでした。普段は娘役が多く可愛くてキュンキュンするわけですが、やはり下のインタビューを見るとご本人も驚きだったようです。(50代中盤の演者さん達は初役で様々な役に挑まれる年代とのことです)そして太夫の方は呂勢太夫さん、最近、きわみ堂など露出が増えてますが、まさに同年代同士の新口村でした。

次世代を担う演者さんが初役へ挑むのを見守る、これも一つの劇団を応援する楽しみですね。


シアター1010について


休演中の豊松清十郎さんが北千住のレポを詳細にブログに書いてらっしゃいます。清十郎さんも関東ご出身ですが、北千住は馴染みが無かった模様。ほっこりするのでご一読を!

家族と一緒に観劇した日は、シアター1010からエスカレーターで2フロア下った丸井のレストラン街でお食事。お昼時だったので割と待ちましたが、こういうレストラン街で観劇後にお食事できるのは半蔵門ではなかなかできなかったので嬉しいです。

ちなみに通勤民なので補足すると、東武線+日比谷線乗り口のコンコース(EQUia エキア)は、あまり混雑していなくておひとり様民が入りやすいお店がたくさんありますので、日比谷線ご利用の方にはお勧めです。

北千住駅はなんと全国でも5番目に乗降客が多い駅ですので、地元民としては、埼玉東部・千葉・茨城・栃木の方面でファンが増えると良いなぁなどと思っております。

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