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野草食日記 331 辰巳浜子さんの蕗味噌

私が愛読している「野草の料理」は鎌倉在住の甘糟幸子さんの著書です。
日々の生活の中で四季の移ろいを楽しむように、さりげなく野草を取り入れている暮らしぶりがとても好きなのです。

甘糟幸子さんは甘糟りり子さんのお母さん

流れる時間の中で、家族や近しい人たちのために心をこめる料理。
本を読んでいると、柔らかな春の里山の景色や、コントラストがはっきりした夏の青空と濃い木々の緑、赤や黄色に染まる秋の風景の中で、目の前にある植物に向き合い、夕飯の一品を拵えるその指先を想像して、心の中にポワッと蝋燭の火が灯るような温かさを感じます。

鎌倉には、甘糟幸子さん以外にも四季を感じ、愛でながら日々の食卓を作っていた女性たちが多く、それがひとつの文化を形成していたように感じています。
例えばこちら。

文章も映像も素晴らしく、作られた柿の葉寿司には鎌倉の女性たちの美意識が凝縮されています。
春と秋で季節感は異なりますが、長い歴史の中で、折々の自然を楽しむ人達が、あちらこちらで暮らしを営んでいたに違いないと思うのです。

同じく鎌倉に所縁のある料理研究家、辰巳浜子さんが「料理歳時記」という本の中で柿の葉寿司の作り方を詳しく書かれています。
春と秋の柿の葉の違い、寿司飯にするご飯の水加減、具材の種類や切り方まで、とても丁寧に解説されているのです。
いつか、自分でも作ってみたい。

「料理歳時記」には、食べられる野草についても書かれていて、今年は浜子さんレシピの蕗味噌を作ってみました。
いつもは蕗の董は刻んで炒めてという手順で作りますが、本に載っているのは茹でて刻んで、味醂と共に味噌に混ぜます。

秀逸なのが、ここに擦った胡桃を加えるということ。
私は、食感も生かしたかったので、細かく刻んだ胡桃と荒めに刻んだ胡桃を使いました。
コクがあってとても美味しい蕗味噌です。

3月の野草観察会(週末の部)では、この胡桃入り蕗味噌を小さなおむすびに仕立てて、上から塩漬けの蕗の葉をペタンと貼ってもって行き、参加者の皆さんにお味見していただきました。

4年前に移り住んだ年から、自生していた諸葛菜の種取りをしつつ数を増やし、今年は庭で沢山の紫色の花が咲いています。
2本いただいて、おむすびの上に彩りとして載せてみました。

庭の諸葛菜の一角


野草の勉強や観察会のために使いたいと思います。