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#24 キルギスでガチの羊飼いになる 3

翌朝、5時半頃チョンアタが他の羊飼いに指示を飛ばす声で目が覚める。ナナ!行くぞ!と言われ急いで日焼け止めを顔に塗りたくる。ラッキーな事に、昨夜は風も雨もない穏やかな夜だったので、びっくりするほど寒くなくよく眠れた。若手の羊飼いがジェスチャーで寒くなかった?と聞いてくる。彼は寒かったらしい。そりゃそうだ、寝袋も何もなく着の身着のまま地面に横たわって寝たのだから。寝袋とヨガマット用意していただきありがとうございました。昨日は悲しくなったけど、お陰様でよく眠れました。

チョンアタが孫くんが乗っていた馬に乗れと言ってくる。2日連続ロバじゃないのはありがたいが、この馬明らかに小馬。顔が幼い。多分まだ1歳ぐらい。大丈夫なのか…驚いてすっ飛んでったりしないのか…

明らかに小馬

準備が整うと羊飼い達は家畜達を川に誘導し始めた。CBTのツアー時とは違うルートだ。羊飼い達は声をあげ、鞭を鳴らして羊達に川を渡るように促すが、川幅が広いため羊達は躊躇してなかなか渡り始めない。すると1人の羊飼いが羊を捕まえて対岸へ連れていく。対岸の羊が鳴く声とけたたましく追い立てられる声に促されて、ダムが決壊するかのごとく羊達が一斉に川を渡り始める。最後の方で一頭が川に流されて悲鳴を上げながら下流に流されていってしまった。急いで1人の羊飼いが馬を走らせ、川から羊を引き上げる。本当に羊飼いもその馬も逞しい。

渡河渋滞
一度流れ始めれば後は早い

対岸は4駆も走れるオフロード。車道の横の丘を羊達と歩く。

朝日と共に歩く

丘に挟まれた道が終わると、開けた平原に辿り着き、そこで朝ごはん。キルギスは短時間であっという間に景色が変わるからすごい。

絶景のなか朝ごはん
朝食後離れた場所にいる牛を集めに走る
羊達を集めて進む

朝食後、羊達を渓谷へと導く。チョンアタが空を見上げて、凄いだろう、写真を撮れと言ってくる。絶景を見慣れている羊飼い達にとってもこの渓谷の景色は素晴らしいものらしい。そして狭い渓谷の間を1,300頭もの羊達が駆け抜ける姿は圧巻!羊飼いになった気分に浸れる…

渓谷を見上げるチョンアタ
羊羊
羊羊羊
聳え立つ渓谷
羊と渓谷
今にも落ちてきそうな岩が乗っている

渓谷を抜けたところで雷鳴が丘の向こうから聞こえてきた。山の天気は変わりやすい。あっという間にシトシト雨が降り始める。道の途中に羊飼いの小屋がでてきた。今の季節は誰も暮らしていないようでひっそりとしている。燃料となる家畜のフンが積み上げられた場所には屋根があった。チョンアタが木製のゲートを開けて中に入ると積み上げられているフンの塊を地面に投げて座れと促してくる。ランチにするようだ。

みぞれまじりの冷たい雨

食事は基本、クムス(馬の発酵乳)、アイラン(飲むヨーグルト)、パンに干し肉。これしか持ってきてない。荷物は最小限。干し肉は貴重だからめっちゃ食べろ食べろ言われる。今まで断ってきたけど、チョンアタに手渡されて断りきれずひと噛み。普通に羊肉なはずなのだが、ありえない獣臭でとても食べられるものではなかった。こっそり背中に隠して後で犬にあげた。雨は酷くはならず、ランチ後出発。

再び太陽が顔を出すと、楽園のような丘を降る。

家畜達の楽園
ゾロゾロ

景色を楽しみたいところだが、10歳の孫くん、私に馬を取られ、自分はロバに乗らなければいけなくなった事が不満でならない。今日一日チョンアタが乗り替われと言っていると嘘をついたり、俺の馬だぞ返せ!と怒ってみたり(他の羊飼い達にオルモンの馬だよと突っ込まれていた)、ロバが運んでいる私の荷物をこれお前のだろ?乗り替わらないとここに捨てていくぞ?と脅してみたり、手を替え品を替え馬に乗せろと言ってきているのだが、ここに来て、お願い!ちょっとだけだから変わってください!と泣き落としにかかってきた。仕方がない…少しだけなら変わってあげよう。私の馬を霧の中で見失ったのは君だが、君はまだ10歳、責任が重すぎたと言えば重すぎたし、今日はかなりの距離をすでに移動したから、残りはロバでも行けるかもと言う事で、折れて乗り変わる事に。孫くんは大喜びで馬を走らせる。私がロバに乗ろうとすると、若手羊飼いのおじ様が俺の馬貸してやるよ。俺がロバに乗るから。と言っておじ様の馬を貸してくれる事に。ありがたいがこの馬なんとスタリオン。1歳の若駒も怖いが、スタリオンも超怖い。鞭使っちゃダメだよ?すっ飛んでっちゃうからね。とジェスチャーと口笛で注意される。

私の代わりにロバに乗るおじ様
おじ様のスタリオン。金色の美しい馬だった。ムキムキ

しばらく進んでまたひと休み。馬から鞍を下ろしたところを見ると、それなりに長く休むみたい。皆野原に寝転がって昼寝を始める。チョンアタと羊達が見当たらない。今何時間?チョンアタは?と聞くと、羊を追っているとの回答。

奇岩群の下で一休み
ロバの上に立ってポーズを決める孫くん

遠く雷鳴が聞こえる。また一雨きそうだ…雨降り始める前に移動しようよ〜とひとりソワソワしているのは私だけで、みんなのーんびり昼寝中。そんななか、どこからともなく別の羊飼いが現れた。羊飼いって本当にすごい。え?どこから来たの?え?どうやって、いつのまにあの山の上に辿り着いたの?って神出鬼没度合いにびっくりする。よく見るとあれ?後ろに乗っている君、オルモン君のいとこじゃん!

どこからともなく現れた羊飼い2人

ナナやっほ〜といとこ君。彼らの話に寄ると、少し行ったところにユルトがあるらしく、こんなところで寝っ転がってるぐらいなら、ユルトに行って茶しばこうぜ〜とのお誘い。おじい様とおじ様羊飼いが、俺らここで待ってるから、お前ら(若手羊飼い、14歳少年羊飼い、孫くん、私)行ってきてイイよ〜と言ってくれた。歩いていけるっぽい距離だと言われたが、丘を越えて見てみると歩くにはかなり遠い。仕方がないので戻って馬に乗る。鞍を全頭につけるのは面倒くさいので1頭に2人乗って遠くに見えるユルトを目指す。歩き始めて5分ほど、あっという間に黒い雲が立ち込めて、横殴りの強風と共にみぞれが降り始める。若手羊飼いが私と馬に同乗していた14歳少年羊飼いに、私をユルトに連れていくように指示をする。一瞬にしてびしょ濡れになりながらなんとかユルトに到着。

嵐の中ユルトに到着

少年は私を降ろし、ユルトのおばあちゃんに2、3言説明すると嵐の中来た道を戻っていってしまった。えぇ?!どこ行くの?!大丈夫!?おばあちゃんは私に着替えを渡し、ストーブの側に濡れた洋服をかけ、パンを焼いてくれた。

干される私の服
貸してもらった替えの靴下とペットの小ヤギ
パンを焼いてくれるおばあちゃん
泊めてくれたユルトのご主人

しばらくすると、チョンアタ、羊飼いのおじい様、孫くんがユルトにやってきてお茶を飲み始めた。雨は小降りになっては来たがまだ降り続いている。チャイの後チョンアタとおじい様は外に出ると双眼鏡を覗きながら何やら話し合いを始め、また馬に乗って行ってしまった。ユルトの少年と遊んでいた孫くんと私がユルトに取り残される。時刻は15時ごろだったが、その後チョンアタ達が戻ってくることはなかった。私と孫くんはそのまま夕飯をご馳走になり、ユルト内で就寝。みんなはどこに行ったんだろう?雨は強くなったり弱くなったりを繰り返している。大丈夫なんだろうか?

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