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散らかる部屋は収納量が足りないわけじゃなかった? 〜収納を科学する

収納量が足りないという誤解

リビングのデザインやキッチンのメーカーは誰もが力を入れるけども、おざなりになりがちな収納。
最近は家事楽導線という考えが浸透しているので、比較的使いやすい導線も見られるが、まだ足りて無いと思う。

よく言われるのが「収納が足りなかった」というもの。これは間違っていると思う。
足りない、というものは量的な表現だが、量が足りないということは無いはず。

4人家族なら置くものの量は決まってくる。プラス趣味でアウトドアをする人なら外収納、本をたくさん持つ人なら本棚を作ればいいだけ。
ティッシュボックスのストックを4箱×10セット以上持っていたい、という人はそういない。ヒカキンがトイレにトイレットペーパーをたんまり溜めたいタイプのようだが珍しいだろう。

設計士も人数に応じてどのぐらいの収納量が必要かは分かっており、最低限確保すると思う。(と言いつつ、うちの場合明らかに収納量の提案が足りてなかったが。。)

とするとなぜ足りないとなるか。それは必要な場所に収納が無いからだと思う。

例えば、ダイニングでノートPCを開いて作業をする人がいるとして、ノートPCを収納する場所を作っておかなければどうなるだろうか?

考えてみてほしい。

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答えとして、2つのルートになると思う。

1つはダイニングに置きっぱなしになる。ダイニングテーブルやキッチンカウンターの上、壁に立てかけるといったことになる。
大半の人は面倒なのでこうなることが多いだろう。汚部屋のスタートだ。
加えて、ダイニングは子供が持ち帰るプリント類が集まりやすい場所。それを収納する場所を作らず、紙類が散乱するともう最悪。

2つ目は遠い場所にある収納に持っていく。几帳面でメンタルが強い人だ。
散らからないように収納がある場所にちゃんと持っていくことができる。
素晴らしいが、これは少数派だろうし何より収納に問題があるのは1つ目と共通だろう。

これで分かってもらえたと思うが家が散らかるのは量的な問題であることは少ない。
だって、今どきのノートPCなんて薄いんだから収納を作ろうとすれば大きなクローゼットを作る必要もない。

必要なのはPCと充電器をしまうスペース。キレイにするなら収納内にコンセントを設置し、しまうたびに線をつなげばダイニングに充電ケーブルが出てくることも無い。

このようにどの場所で何をするか、そこで使うものを定義し必要な収納を配置すれば散らかることは大幅に減らせる。

家庭によってどこで何をするかということは異なるが、一例として「この場所にはこんな収納があった方がいいんじゃない?」ということを書いてみたい。

収納は絶対に造作するべき

場所の話に行く前、大前提を伝えたい。

収納は造作するべきということだ。造作は色んなものがあるが、はっきり言って一番造作するべきなのが収納だと思っている。

造作のメリットは以下。

  1. ぴったりサイズになるので無駄がない(同じ6畳というスペースでも既製品を使うと狭くなるが、造作なら最大限6畳を使える)

  2. 変な隙間が無くなるのでゴミが溜まらない。清潔

  3. ここにちょっとだけ収納が欲しいけど、ちょうどいいものが無いという問題が起きない

  4. フロート(脚を浮かせられる)しやすいので広見え効果がある

  5. タンスのように収納ごと倒れる心配がないので地震に強い

ジャストサイズになることでのメリットが3つ、その他がメリットが2つ。

3つ目について、リカバリーができる商品を出していることで有名なのは山崎実業(towerの会社)。ただ、山崎実業にも限界はあるし見栄え的にはオープン収納ばかりになるので生活感が出てしまう。

物理的にも精神的にも整理整頓された綺麗な部屋を維持したいなら造作一択である。

ここをケチって「収納量が足りない。失敗したー」というのはお門違い。ケチったわけではなく設計士から提案が無く、住んでから気づいたというなら可哀そうではあるが。

収納に限らず設計士は万能ではないということを施主は強く理解するべき。意匠、性能等、何かしら設計士が得意な領域はあるはずだが、弱点が確実にあると思う。

意匠はすごいけど収納計画はてんでダメな家はどうなるか。引き渡し時がピークで、引っ越してからは汚部屋となる。せっかくの意匠が台無しになる。

だから信頼しすぎるべきではないと思う。一級建築士資格は家を設計していい許可証であって、いい家を作れるライセンスではない

4つ目、フロートという考え方をぜひ知って欲しい。

同じ畳数でもなぜか広く見える、逆に狭く見える部屋がある。その要因として大きいのが家具が浮いてるかどうか。


5つ目、地震に強いということは面白いと思う。

これは私が設計事務所に相談した際、その事務所のポリシーとして造作収納をできるだけ作る、それによって便利にもなるし地震にも強くなるという話を聞いて感銘を受けたからだ。

造作収納と地震を関連付けて説明している人をあまり見たことがない。

特にSNSでは耐震のことだけ発信している人たちがいるが、その人たちですら収納に触れていない。

品確法でも耐震等級3を取れば倒壊することはまずない。そうすると地震による被害は火災や室内の物が倒れることによる圧死となる。

構造計算した家は無傷で大型タンスが倒れてきて圧死なんて笑い事ではないだろう。

倒壊のことしか議論しない耐震界隈には辟易しているが、そんなのは無視して自衛手段を考えるべきだと思う。

デメリットはコストだけ。しかし集成材を使った大工造作はそう高いものでは無い。同じサイズの既製品の1.5倍以上することもないので、高価なオプションではない。

長いスパン、家が綺麗に保てることを考えたら価格で断念するのは優先順位が間違っていると思う。

キッチンハウスのキッチンを入れるぐらいならまず造作収納からやってほしい。(散らかってでもキッチンハウス入れられればいいという人もいるのかもしれないが)

強いていうなら、ある程度作りこむことになるので所持物や利用シーンの棚卸が必要になる。私自身これは大変な作業だった。

しかし、この言語化をする作業を通じて、どこで何をしているのか整理できた。どこに何をしまう収納が欲しいのか分かった。

この苦痛ともいえる作業を飛ばすことは簡単だが、待ってるのは住んだ後の汚部屋。

あなたはどちらを取りたいだろうか?

この棚卸作業を少しでも楽にするために本題に入る。

散らかりやすいアイテム一覧

ソファの位置が決まってない、テレビを置くスペースが無い。そういう家はないだろう。大型家具であるほど配置は簡単に決まる。

しかし、それが小さかったり普段意識していないものについては後付けで置ける場所に置くということになる。それが汚部屋の始まりとなる。

問題なのはそういう素人施主が考えきれないことをフォローできる設計士がいないことだ。
素人と同じようにソファやテレビの配置は決められるが、掃除機や鏡などの意識しづらいものの配置を決める設計士のいないこといないこと。

残念だがそんなものである。

以下に住んでから「こんなものあったわ」となって散らかりやすいものをリストにする。ここに書いてあるものの場所を決める、置くスペースを事前に作るだけで生活感に溢れる汚い家になるか、整理された家になるかの分かれ道になる。

掃除機

コンセントと併せて場所を決めたい。壁にもたれるように置くのではなくスタンドを必ず使用。

注意したいのは移動導線に配置すること。

掃除機のために移動導線から離れて取りに行くことが必要になると掃除頻度が減る。ゴミが落ちていることに気づいたらすぐに取り出せる位置にすることが重要。

廊下の途中に配置できるとよい。

プリント、書類

子供がいれば大量の紙との格闘になる。それをすぐにしまうことができるスペースは必須。

多くはダイニングで子供と会話するためダイニングにほしい。おすすめはキッチン前面収納の造作。

https://nekonekocube.com/archives/2020/06/29_1530.html

キッチンサイズに合わせての収納なのでサイズが大きく収納量が確保できる。

画像では紙が縦に入れられない高さなのでもう少し欲しいが、この位置にあれば家庭に集まる学校や行政からの書類をすぐにしまうことができるだろう。

収納家具を買うと部屋のどこかが突き出して邪魔になるが、キッチンの前にジャストサイズなので邪魔にならない。

注意点として画像のような開き戸だと扉の開口スペースが必要なのでダイニングテーブルを離す必要がある。

そこまでスペースが取れないなら引き違いの引き戸にするか、オープン収納にすればいい。

ただ、オープン収納は生活感が出てしまう。おしゃれな小物を飾るならオープンでもいいが、プリント類を見せて収納するというのはあり得ないのでオープン収納はお勧めしない。

料理本や郵便用の印鑑などもここでいい。

筆記用具

プリントと関連して書くものは必要なので予め準備。キッチン前面収納に置けばいいと思う。

医療キット

台所で指を切ったり、子供が遊んでて怪我をするなど起きたときに応急処置は早くしたい。
例えば、廊下の階段下収納に置いてしまうと取るまで時間がかかったり、ドアを開ける動作が必要になり使い勝手が悪い。

セオリー通り、使う場所に収納をするということを考えると事故が起きやすいLDKに置くべき。

しつこくて申し訳ないが、キッチン前面収納に置けば解決。

ノートPC

スタディスペースか、専用スペース作らずにダイニングテーブルやソファで使う人もいるだろう。

いずれにしても、使う場所にしまうスペースを取っておきたい。

ダンボール置き場

忘れがち。土間収納なのかどこに置くのか決めないと廊下に雑然と置くことになる

おもちゃ

リビングで散らかる。

キッチン前面収納にするのか、リビングに収納するのか決めておきたい。

ダウンリビングだと床高の差で収納を作ることもできる。

https://www.sekisuihouse.co.jp/kodate/ideas/detail/0190/

リビング併設の和室だけで遊ばせる、リビングはいつもきれいというゾーニングも併用したい。

ポイントは子供が自分で出し入れできる高さ、位置にすること。

自発的にしまってくれるかはその子によるが、少なくともやろうとしたらしまえる収納があるようにしたい。
そうしておけば親が出し入れすることなく、自分でしまうという習慣をつけやすい。

当然だが、遊ぶ場所から離れた場所に収納を作ってもしょうがないので遊ぶ場所に設置が必要。

全身鏡

洗面所ではなく服の身支度で使うもの。大きいので後から買うと邪魔になること必至。

スタンド型ではなく、壁掛けにしたい。スタンド型は鏡の足元に埃が溜まりやすく、ロボット掃除機も入れないので掃除もしづらい。(埃が溜まる状態を考えただけでイライラする)

使いたい場所が玄関なのかファミクロなのかは人による。

問題はある程度何もない壁が無いと壁付けができないこと。

奥の手として、高額だが建具と鏡が一体化した神谷のドアを使う手もある。(鏡スペースを取ることが不可能だったので私はこれを採用した)

ドアは必ず壁になるので鏡がついていると壁が無くても必ず設置できる、という面白い発想で生まれている商品。

電動自転車充電器

持っている人に限るが、充電器はそれなりのサイズになりコンセントも必要なので初めから計画したい。

番外編 服の収納

服はファミクロか各部屋収納になる。これは人によってどっちがいいという考えが違うと思うが、各部屋収納の方が洗濯後の収納において便利ということは無いと思う。

プライバシーを保ちたい、寝室で着替えたいという場合は各部屋収納となる。実際、ファミクロに服があっても部屋に持って行って着替えるなら各部屋収納の方がいいかもしれない。

ただ、収納と着替えは別で考えたい。どちらを優先したいかだ。

私は収納を優先してファミクロを作る。

なぜかというと、今まで服が散らからずに済んだことがないからだ。

服の乾燥は洗濯乾燥機を使っていて新居でも同様の運用だが、洗濯機から収納までの距離が遠いために服を溜めてしまう。

乾燥したあとすぐにしまいたい。何なら畳みたくもないのでほぼハンガーで収納したい。

そのためファミクロを選択した。

距離が遠くても苦にならないという人なら各部屋収納でもいいとは思う。

ただコストでいうとクローゼットの建具は高く、ファミクロは室内に入る建具1つで済むのでトータルコストはファミクロに軍配が上がる。

コストをかけてでも各部屋収納にしたいかはよく考えてもらいたい。

ファミクロを作ったとしても次の日に着る服をかける程度の収納を各部屋に作ることはできるので、収納が0ということではない。

最後に

最低でも掃除機、プリント、ダンボール、おもちゃの4つは決めておきたい。せめてこれだけでも決めておけば大きく散らかることは無い。

逆に住んでからこの4つの配置を考えているようでは遅い。

他に思いつけば追加したい。

基本的にキッチン前面収納主義者なので、これなしに綺麗なLDKを保つのは不可能と考えている。

大型収納を後から買ってもいいが、邪魔になるのは間違いない。せっかく確保したLDKの広さを収納のために圧迫したくないので、造作をお勧めする。


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