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五感を使って発想を広げるアート思考

Art thinking weekというイベントに参加しました。今流行りの「アート思考」が気になるビジネスパーソンには打って付けのイベントです。ロジカルシンキングやデザインシンキングにどっぷり浸かっていると、自分の感覚や独自の発想を抑え込んでしまいがちですが、一方で「新しい価値を世の中に生み出せ」と要請されるのが昨今のビジネスシーンでもあります。そこで「アート思考」を学ぶのはいいのですが、そもそものアートの鑑賞を敬遠していると、せっかくのアート思考を使いこなせずに終わるわけですね。そんな問題意識で、五感の使い方を広げるテーマでキュレーションした展示とイベントです。「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」「味覚」といった五感をテーマにワークショップも開催されています。


「アートなんて私には縁遠い」と思っている方、高尚なものに触れて教養のない劣等感を感じることを恐れて、せっかくの機会を逃してしまうのはもったいない。もともとアートの感じ方は自由な訳ですが、「そもそも感じ方以前に、何も感じない」という方は、ワークショップに参加してみると、五感を普段と違う使い方へ誘導してもらえるので、とても貴重な機会です。


私は先週の木曜日、「視覚」のワークショップに参加しました。「視覚」・・。目の前の景色をどう見ているか、もちろん、正確に景色を写し込んで見ていると思い込んでいますよね。


実は、焦点は合っているようで合っていない、また、自分の感情やバイアスのフィルターを通して景色を見ている、というお話がありました。確かに、スマホで自分の部屋の写真を撮ると、「あれ、こんな景色だったっけ」と思いませんか?今いる自分の部屋でさえ、視点やピントはとても曖昧で、視覚がどれだけ恣意的に歪められているかに気づかされます。


ワークショップの中では、アクリル片を使ってブローチを作るというワークがありました。制作時間はたった10分です。視覚に被さっている「自我」のバイアスを排除して、見えている形と色だけに集中するという意図で、10分という制限を設けているわけです。さまざまな色と形のアクリル片からパーツを選定して組み合わせる。「自分」をテーマに幾つかのブローチを作りました。


一緒に制作したペアの方と自分の作ったブローチを並べてみました↓



自分の性格を形で表すとしたら?自分の感情を色で表すとしたら?尖っているか、丸いか、寒色か暖色か、反対色か同系色か。縦か横か、高さは、重なりは。真っ直ぐか斜めか、揃っているかいないか。普段全く使わない感覚を総動員して、一つの表現にまとめあげる。自分の中にそういう発想が眠っていて、それが呼び覚まされたことにワクワクしながら制作しました。


自分をテーマに制作した数パターンのブローチですが、その形にどのような意味をこめているのか、しげしげと見つめ直して、言語に翻訳してみると、また違うレイヤーが被さってきます。


自分を表現するというテーマで作ったこのブローチですが、例えば右下の一つ。青いパーツだけ、とんがった形だけでベースの形を作りました。そして同系色の動きのあるパーツを載せてリズムをつけています。他人からは「落ち着いている」と見える私ですが、とんがった形に拘った所は、外からは見えない「落ち着いていない内面」を表現していたのだと思います。一方で、「落ち着いている」という要素は全く意識していなかったのに、青い色を選んだことと、色を統一したことで、図らずも落ち着きが表現されてしまいました。


こんな感じで「自分という存在のどの要素を切り出して、どういう表現に転換しているのか」と考えてみると、結構な発見がありました。いったん自我を切り離して、視覚に没頭して出来上がった作品を、自我を持った状態で眺めなおすわけですね。感覚と思考を行ったり来たりする、こういう体の使い方を体験して、五感という自分にとってありふれた道具が、どれだけの可能性を秘めているか。解放感に溢れた気分で帰宅しました。


この「発想を転換することで、あらたな可能性に気づく」というのが、アート思考の脳の動かし方なのですが、五感も使うことで、さらに「身体を使う」という感覚に近くなります。凝り固まっていた頭を柔らかくして、普段と違う使い方を試して、その体感をストックする。それによって、ふと、必要になった時に発想の転換ができる。いろいろなアート作品を見て体感をストックすることで、いざというときに瞬発力が出せるんだと思います。


イベントは渋谷駅直結の渋谷QWSにて火曜日まで、21時までです。ワークショップの様子を動画にした録画配信もあるようですので、ご都合のつかない方はそちらをどうぞ。

5名のアーティストとのプレトークのシリーズもあります。これを聞くだけでもアーティストのユニークな思考に触れることができます。視覚のワークショップを担当された青沼優介さんの回のリンクを貼っておきます。

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