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皮膚を引き剥がしたい。

夜になると襲ってくる。
自分自身の皮膚を引き剥がしたくなるような、自分自身の周りに迫ってくる何かを追い払いたくなるような、そんな感覚。



視覚や聴覚は自分の想像力で、映像を、音をつくりだせば嫌な記憶に完全に引きずり込まれることはなくなったけれど、肌に触れられたあの感覚は、あの気持ち悪さは、あの痛みは、自分で皮膚を切る以外の方法では拭えない。
切って、切って、切って、血を見て、ようやく現実世界に戻ってこられる。



「触れられるのが怖い」
そう、身近な大人に漏らしたら、こう返ってきた。
「お医者さんになるんだし、患者さんと接触することもあると思うから、慣れないとね」
そう言って二の腕あたりをぽんぽんと叩いてきた。


(そういうのが嫌だって言ってんじゃん)




感じたことない人には分かるわけなんてなかった。
この気持ち悪さ、恐怖感、自己嫌悪。

身体の感覚、辛さというものをもう主治医以外には言わないんだろうな、と思う。
「そんなの気持ちの問題だよ」と軽く扱われてしまうのが怖い。
勝手に相談して勝手に落ち込むくらいなら言わない方がいい。


そんなことを考えていたら、また夜がやってきた。

皮膚を引き剥がしたい。
そう思いながら、また一錠、薬を飲み込む。

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