見出し画像

『白い暴動』 を観たら映画『THIS IS ENGLAND』をまた観たくなった話(だが観れない)

動画:『白い暴動』オフィシャルサイトより

1970年代のイギリス。蔓延する人種差別に「おかしくね?」と声をあげたパンクスの若者たちが、10万人規模の反レイシズム音楽フェス開催を成し遂げるまでを追ったドキュメンタリー。

当時イギリスでは極右政党NF(国民戦線)が台頭。国内の経済破綻への不満の捌け口として白人至上主義を掲げ、移民排斥や黒人差別の波が押し寄せていた。

白人至上主義。それを支持した多くは労働者階級の貧しい人々だったという。
その背景には、私たちの想像するよりずっと根深い問題があるのかもしれない。The Clashは『White Riot(白い暴動)』で次のように歌っている。

White riot, I want to riot
(白い暴動だ、暴動を起こしたい)
White riot, a riot of our own
(白い暴動だ、俺たち自身の暴動)

Black man gotta lotta problems
(問題だらけの黒人なら)
But they don't mind throwing a brick
(レンガを投げても構わない)
White people go to school
(白人たちは学校で)
Where they teach you how to be thick
(金持ちのデブになるお勉強さ)

(中略)

All the power's in the hands
(この世のすべての権力は)
of people rich enough to buy it 
(金持ちのやつが握ってる)
While we walk the street 
(俺たちは街をうろつくけれど)
Too chicken to even try it
(向かっていく勇気もない)


差別する側の白人英国人たちも、「階級制度」の中では被差別者の側にあるという痛さ。

上流の人間に反抗することもできず、言われた通りに一生働き続ける。
一方で階級制度の外にいる黒人移民は、声を上げ暴動を起こしている。

彼らを叩く前に、俺たち自身の、暴動を起こすべきじゃないのか?

誰かを責める前に、自分自身の傷や綻びを見つめることは、勇気のいることだ。しかしそこから目を背ければ、人々はいつまでも、同じ過ちを繰り返すのかもしれない。

今年、イギリスはEUを離脱した。

私たちは前に進んだのだろうか、それとも後退したのだろうか。

映画『THIS IS ENGLAND』

ところで、この映画に出てくる「スキンヘッズ」という人達がいる。
頭を丸刈りにして極右を支持するネオナチ的な若者たちだ。
彼らを観ていて、以前見た『THIS IS ENGLAND』という映画を思い出した。

1983年のイギリス中北部、父親をフォークランド紛争で亡くした少年ショーンは町にたむろするスキンヘッズの不良たちと出会う。友達のいなかったショーンは彼らと心を通わせていくが、やがて過激な愛国主義の男コンボの登場で仲間たちは分裂していく……。

孤独な少年がスキンヘッズとの交流で居場所を見出し、その「居場所」にしがみつくあまり、愛国主義に染まっていく様を描いている。

ラストはみぞおちを殴られるみたいな辛さがあるが、ぜひ見て欲しい。

(私もまた観たいと思って動画配信を探したが、されていないようだ…。日本語DVDも絶盤?のようで、どうやらDVDレンタルか中古購入しか視聴する方法がない。名作なのにな…)

画像1

(uplink吉祥寺 / 2020年6月5日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?