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子どもの声はエネルギーそのもの!!②

こんばんは!ボイスコーディネイターの
日高です。        

 前回は赤ちゃんの声に関しての内容だったので、
今回は成長した子どもの印象深かった声について、保育士として勤めていた頃の出来事を書いていこうと思います。



 かつて『乳児院』に勤め始めたばかりの頃、
印象に残った1人の男の子がいました。。
仮にYくんとしておきます。。



 乳児院というのは、児童相談所などで、『何らかの事情で、保護者との生活が困難』と判断された0〜2歳の乳児が入所する施設です。いわば、家庭の代わりを担う施設ですので、保育士や看護師が24時間体制で養育を行っています。


 シフト制で勤務につき、全ての時間帯の流れを覚え勤務に慣れてくると、担任として保育士や看護師一人当たり2〜3人の子どもを集中して養育する事になります。


 さて、Yくんの話に戻りますね。勤めたばかりの私は、当然のことながらまだ自分の担当の子どもはおらず、フリーの先生として休みの先生の担当児を複数の先生方と一緒にお世話する日々でした。


 フリーでも仕事量は多いのですが担当児を持つ
と、食事や身の回りのお世話以外にも、指定病院に付き添ったり、成長を促すプログラムなどを元に目標に沿って個別に取り組んだり、その膨大な記録を作成したり。。全部書いたら今回の話題はこれで終わってしまう程、業務は多岐に渡ります。クラス単位で部屋に分かれ担当児以外の子のお世話もするので、担当児の担任に対する独占欲が爆発し、それが原因で子ども同士のケンカになることもしょっちゅう。。

 
 Yくんは当時2歳半頃でしたが、2歳というと甘え盛りで、自分から先生に抱きついたり、どうにかして自分優先に構ってもらおうとする他の子ども達とは明らかに様子が違っていました。


 普段は殆ど声を発さず冷たい表情で、慣れていない先生には近寄ろうともしません。こちらから近づいて声掛けをしても反応せずに、ぷいっと横を向いたり、その場から去ってしまう。とにかくあの凍りついたような目線や醸し出す雰囲気から、何者も信じられないという思いを体現している、何かとてつもない外界との壁のようなものがひしひしと感じられたのです。



 乳児院へ入所する事情は様々ですが、その当時から『虐待』による入所が最も多く、『経済的な事情』を上回っていました。



 Yくんも虐待を受けており、普段の様子からそういった事情は痛いほど感じ取ることができました。

 そんなYくんですが、担任の先生や慣れた先生に対しては子どもらしい笑い声を上げながら遊んだり、言葉を発して自分から関わろうとする様子が見られました。こういった時間は側で見ていて心から嬉しく思ったものです。



ところが。。

 Yくんは感情の表出をコントロールする事が難しく、原因は些細な事であっても一旦かんしゃくを起こすと暴れ出してしまい、担当の先生でさえそれを鎮めることが困難でした。

 『わぁぁぁぁぁ!!』っと大声でわめき散らし、物を投げたり、蹴ったり叩いたり。。また、頭を壁に打ち付けるので、ケガをしないように止めるのも皆、必死でした。とにかく全身のありとあらゆる力を総動員して思いを訴えようとするYくん。初めてその姿を目の当たりにした私は、これまで見た事もない激しさにただ呆然としていたのを覚えています。


 他人になかなか心を開けないYくんにとって、担任の先生は唯一、心を開いて甘えられる大きな大きな存在だったのです。その先生が交替時間で部屋から去る時は本当に不安そうな表情で、感情を爆発させる時も、こういった場面が多かったように思います。その寂しそうな、絶望感に満ちた泣き声は今だに忘れられません。


 普段は声を発することの少ないYくんだからこそ、その笑い声と泣き声のパワーは凄まじく、繊細な心が放つ、『自分をわかって欲しい』、『自分はここにいるよ』というシグナルを、彼なりに精一杯出していたのです。そんな声を真正面から受け止める事に、大変な重圧も感じた乳児院での経験です。




☆長文、お読み下さり
  ありがとうございます(^人^) 





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