見出し画像

ひきのばされた春の眠り


   

花はほんたう畝に子供があたらしい
街は船出して二月は梅が湧き
春はどこかの貝とけだしてゐるゑくぼ
伸びて日脚のひかりの塵が降る森は
あふれだす私語にぼんやり虻がゐる

   ◯

あなた硝煙そして柳が吹き散らす
胸ずつと抱へられては春も薔薇
手が木々に蕾を灯しわすれ霜
星に水あれあざみ野にひびく鈴
巣のくらさ蜂にときどき鳴る海が
だつた手が芹を掴んでゐた彼方

   ◯

変速機影は椿で濃いわれら
花めいて頁に川の長い午
ゆふがたの垂れて街路は硝子の巣
書きことば泪が花冷にわかる




*************

縦書き版はこちらにあります
http://poecri.net/ItemDetails.php?item_id=110



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?