ひきのばされた春の眠り
花はほんたう畝に子供があたらしい
街は船出して二月は梅が湧き
春はどこかの貝とけだしてゐるゑくぼ
伸びて日脚のひかりの塵が降る森は
あふれだす私語にぼんやり虻がゐる
◯
あなた硝煙そして柳が吹き散らす
胸ずつと抱へられては春も薔薇
手が木々に蕾を灯しわすれ霜
星に水あれあざみ野にひびく鈴
巣のくらさ蜂にときどき鳴る海が
だつた手が芹を掴んでゐた彼方
◯
変速機影は椿で濃いわれら
花めいて頁に川の長い午
ゆふがたの垂れて街路は硝子の巣
書きことば泪が花冷にわかる
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