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企業がDXに取り組むための仕組みづくり

この記事は、TSUKURUBA Advent Calendar 2022の12/8の記事です。

こんにちは。株式会社ツクルバのデジタル戦略推進室の室長をしているnamitoと申します。

株式会社ツクルバでは、毎年12月に社内でAdvent Calendarを実施していましたが、今年は外部公開することになりました。私達は、cowcamo(カウカモ)ウルカモなどの不動産仲介サービスを中心とした事業会社で、不動産営業職の他にも、私のようなTech系の職種など、様々な職種のメンバーが在籍しています。多種多様なメンバーが今回のAdvent Calendarに参加していますので、興味があればいろんなエントリーを見ていただけると幸いです。

不動産流通DXに本格的に取り組むために

私たちが事業ドメインとしている不動産業界は、他産業と比較してICT化が遅れている分野として知られています。基本的には顧客とのリアルな場での接客を中心として回っており、多岐に渡る業務プロセスの中で多くの非効率な業務にさらされやすい状況にあります。

そのような状況の中で、さらなる企業価値拡大のために、事業に寄り添いながら、あるべき形で業務プロセスを見直し、デジタルの力を使って生産性を向上させていく、つまりDX化を促進させていく必要性が高まり、今年デジタル戦略推進室を立ち上げました。

とはいえ、私や室のメンバーはこれまで内製のプロダクト開発を行っていたメンバーです。DXを推進するために、手探りで方向性を定めていく必要がありました。今回は、DX組織を立ち上げて、方針策定から推進体制を作っていく過程を説明していきたいと思います。

デジタル利活用ビジョンの策定

実行部隊がぶれない方向性を持つにはどうすればいいのでしょうか。
まずは私たちの存在意義・ビジョンをトップダウンから紐解いていきました。
私たちは企業理念として、以下のようなものを体系づけて定義しています。

ツクルバの企業理念体系

足元のビジョン策定の上では、VISION 2025「やがて文化になる事業をつくり続けるリーディングカンパニー」とリンクすることがとても大事なのではないかと考えました。

DXを推進する立場として、間接的に上記のVISIONを実現するために何ができるのか。そして私たちがマネジメント/コントロールできるレバーはなんなのか。それを定義したのが以下の図です。

デジタル利活用のビジョン構造

まず、VISION 2025を実現するために、私たちの部門は、「デジタル人材」、「ソフトウェア/システム資産」、「データ資産」という3つのデジタルリソースをコントロールして、「デジタルリソースの適切な活用やシームレスな業務連携のあるべき姿を創ることによって非効率な業務をなくし、企業価値生産性を大きく高め続ける」ことをミッションとしました。

デジタル人材とは、デジタルを有効活用し、より知的生産活動比率の高い人材を指します。私たちは現状の人材のデジタル利活用度を向上させ、人的なDXを目指します。ソフトウェア/システム資産は、企業の強みに積極投資していてそのコストを柔軟にコントロールできることで、よりROIの高いデジタル資産形成に向かせていく必要があります。そして、データ資産に関しては、企業全体のデータライフサイクルを管理し、データの管理や流通の中で無駄な業務フローを排除し、意思決定精度をあげるための利活用を推進していきます。

これらが以下のようにシナジーを起こすことによって、「目的整合性の高いデジタル投資」「迅速な意思決定」「効率的な業務プロセス」を生み出せている状態を作り出します。

デジタル利活用ビジョン(シナジー)

私たちはこのビジョンをデジタル利活用の中心におき、活動しています。

課題の棚卸し

いざ、DX推進の軸ができたのですが、課題がわからなければソリューションは検討できません。あらためて、以下の2つの観点で全社横断の棚卸しを行いました。

デジタル資産の棚卸し

特にSaaSなどの利用について、これまで横断観点で整理されたことがなく、常に個別最適で導入されてきました。その当時は良かったものについても現時点においては、別の部門同士での機能重複や、SaaS間のデータ連携における非効率な連携による無駄な業務コストの発生、それらを通した投資対効果の悪化などが散見されたため、契約管理の一元化、それぞれのSaaSの利用目的のヒアリング、現時点での方針検討などを行い、課題の拾い出しをしました。

特に直近の状況では、円安の影響も受けてSaaSの契約の見直しが大きなコスト節約になったりする状況のため、ひとつひとつ契約の棚卸しを実施しました。

また、貸与機器などについても、一元整理する中でいくつかの可能性を探っています。例えばPCの利用についても、全社全体で見るとき、クリエイティブ=ものづくり側 / 非クリエイティブ=利用者側と目的が分かれるはずです。それによって、業務におけるスペックやOSの最適な形を見直す必要はあると考えています。(この考え方を元に一部の職種においてChromebookの導入フィージビリティを実施したりしています。また別エントリーでこのあたりの話を書きたいです。)

業務プロセス上の課題整理

直接部門の業務プロセスについては、立ち上げフェーズではない事業における、最適化によるポテンシャルの高そうな業務領域で課題のヒアリングを実施しています。立ち上げフェーズの事業については、業務プロセスの最適化の前に型自体を模索している状況なので状況をチェックするにとどめています。

間接部門の業務プロセスについては、主にデータライフサイクルと業務の関連性の観点と、プロセス内の複数のSaaSの使い分け方の観点からヒアリングしていきました。ヒアリングする領域は例えば労務、人事企画、採用、総務などです。
それぞれの業務領域で個別最適した結果、業務内で複数のSaaSを利用することによって、結果無駄な業務プロセスが発生していたり、データ管理不能に陥っていたりすることがよくあるため、本質的な目的に合わせて再整理を提案したりします。

目的指向のタスクフォース体制

課題を整理するとそれぞれ小さなプロジェクトを立ち上げてソリューション検討を行い、実行するわけですが、推進体制上デジタルリソースのオーナーシップが他部門とまたがってしまい、推進課題になりえることもわかってきました。

例えば、SaaSの契約を最適化しようと思ったとき、旗振りは私たちですが、契約やアカウントについては総務部や情シス部門が管理していたりします。また、貸与デバイスの最適化などをしようと思ったときも、情シスが持つヘルプデスク機能なしには運用できません。

そこで私たちは、業務プロセスやコストの最適化などの目標を共有しつつ、私たちDX推進チームと総務、情シス部門でタスクフォースチームを作りました。

DXの実行コンポーネントとタスクフォース

結果としてプロジェクト進行がスムーズになり、高いスループットを出すことができるようになりました。また、生産性向上のために攻めるDX推進チームとそのデジタル資産を管理する情シスの背中合わせの関係も明確になり、今後の組織検討の際に整理すべき課題も明確になったと考えています。

情報管理基盤でのデータドリブンな仕組みづくり

デジタル利活用ビジョンの実現のためには、データ観点の取り組みも重要です。デジタル戦略推進室には、情報管理基盤チームもあり、情報利活用の推進もしています。その中から2点の取り組みを紹介します。

直接部門に対する情報利活用支援

直接部門の業務において、データの分析を意思決定に利用しています。例えば不動産サービスにおいて、物件の価格やスペックを分析すると、自社のサービスでは過去の実績からどのくらいの問い合わせがくるかを予測したり、特定のエリアや物件の広さでの市場価格の予測値から、任意の物件が現在割安な物件かどうかの指標を出すことができます。

情報管理基盤チームでは、直接部門の業務における課題を聞き、上記のようなデータ分析の仕組みを作って、直接部門における意思決定精度を上げる動きをしたりしています。

データ分析基盤の整理とデータ利活用の汎用化

私たちのサービス内に保持されているデータは重要な資産です。これらのデータを分析することで、顧客によりよい価値を提供することができますし、その際の意思決定の精度も上がります。

現状においても、サービスのデータを抽出できる基盤は用意しているものの、多くの職種の混在する社内では、その利用方法にもムラがあったり、分析に時間がかかっている場合も多いです。

今後、集計サイクルの短期化や、より簡単なデータの抽出を目指して、データの分析・可視化基盤の構築に手をつけています。また、同時に、様々な部門でより主体的にデータ利活用できるように、データ利活用人材育成のためのWorking Groupの立ち上げを検討しています。

データ利活用の汎用化の先に、知的生産性比率の高い人材を生み出したいと考えています。

最後に

私たちの会社の期のはじまりは8月のため、一部前年度から取り組み始めていたものもあるものの、実際DXに主眼をおいて本格的に動き出してからは実質4ヶ月ほどになります。

その中でも目的軸の明確化や、体制づくりのおかげでかなり高いスループットを出しながらここまで来ました。

簡単に最適化できることはやりきった中で、今後は本格的にDXによる生産性向上をぐいぐいと進めていかないといけないフェーズに来ています。

いろいろな部門に外から入って最適化を実行していくのは様々な制約があり、しんどい面もありますが、ビジョンの先にある筋肉質になった会社を見ることがとても楽しみでやりがいを感じます。

そんな株式会社ツクルバですが、現在、不動産営業からエンジニア/デザイナーまで多くの職種で採用を行っています。気になった方は是非ともご連絡いただければ幸いです!


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