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初めての冬

冬を、わたしはまだ知らなかったのかもしれない。

目の前は一面、モノクロの世界だった。雪の白さと木の影の黒さでグレーがかって見えた。命あるのは、わたしといっしょに行った友人だけだと思ってしまうくらい、色がなかった。それでも流れ続けて凍らない水と、降り続ける雪と、雪から凌ぐ守りとなってくれた木々に、自然の生命、エネルギーを、ぬくもりを感じた。

綺麗に並ぶ木々に雪が降り積もる景色は、絵本の中だけだと思っていたけど、それもこの景色を見た誰かが書いたもののはず。

そんな当たり前のことを、
わたしは知っていたようで、知らなかったようだ。

雪を踏むミシミシという音も
雪の中にある動物の足跡も
自分の足跡が、降る雪でなくなっていくことさえも、
初めての体験だった。
初めて自分の身体で見て、聴いた経験。

そこで気づいた。
わたしは冬を知らなかったんだと。

よくよく見るとそのモノクロの世界にも、濃淡や質感の違い、そして他の色彩があることにも気付く。今積もった雪は白く、踏まれて少し固まった雪は灰色。その踏まれて凍った雪は表面にザラ付きがあるが、凍った氷柱は透明感と艶感がある。雪の下の葉の深緑色も木の幹の茶色も、近ければしっかり色が見える。

絵本の中の白と黒で描かれていた世界は、
やはりモノクロで、そして鮮やかだった。

雪が降り続ける中、わたしたちは1時間ほど歩いていた。止まっていたら、150cmほどのわたしたちも雪に埋もれていたかもしれない。そんな豪雪の中でもずっと、わたしは心が踊っていた。「すごいね、すごいね」と、心から湧き上がる喜びに、手は冷たかったけど身体は暖かかった。

冬、なんて25回も送って知ってるつもりだったのに、今年、わたしは初めての冬を経験した。

知っているつもり、の知らないことなんて
まだまだたくさんあるんだ。

まだ知らない季節がある。
まだ知らない景色がある。
そんなまだ見ぬ世界を
わたしは余すことなく見続けたい。



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