【オーディブル読書】『錦繡』宮本輝
宮本輝は大阪をよう分かってる。そんなにたくさん読んだわけではないけれど、大阪の地名、方言など、私には馴染み深い。それでいてせつない。どうしようもできない大きな力が運命を作っていく。この本もそんな本でした。
業という言葉が何回か出てきたが、その業というもののために人は理性を失い思わぬ方向へと堕落してしまうのかもしれません。では業を持って生まれた人間はどうしたら幸せになれるのでしょうか?
『錦繍』は10年前に離婚した二人が、偶然出会ったのをきっかけに元妻が元夫に手紙を出したことから始まる14通のやりとりの話です。手紙だけが事実を語っています。事実かどうかははっきりしません。なぜなら、書いたものの言葉で書かれているので主観が入っているからです。
離婚に至ったいきさつやその思い、妻の父のエピソード、夫の今の彼女の話。行きつく間もなく語られる手紙に興味をそそられ、聴きつづけました。人の手紙を盗み読みするような好奇心があったのです。それにしても言葉が丁寧で上品でこんな手紙は書けないと思いました。
やはり浮気、不倫は絶対だめだと思うけれど、小説の中では綺麗に描かれているのだけがどうももやもやしてしまいます。個人的にはれいこさん(今の彼女)が強くて優しい女性だと思います。