初心忘るるべからず

 子どもの頃からよく言って聞かされていた言葉が、今になってグッと心に響くことが増えてきた。
そうか、映画や音楽と同様に私達に蓄積されている経験や言葉、学びは必ずしもその時に効果があるのではなくて、本人がそれを必要とする時にサッと現れて私達に手を差し伸べてくれるものなんだな…と今頃になって気付かされている。そう思うと、今私が子どもたちにかける声、話す言葉の一つ一つがいつかこの子たちを助けてくれるのかも知れない、本当に素敵なことだと胸が踊る。

 さて、そんな言葉の一つ。最近思い出しては、正にその通り…と納得する言葉が、『初心忘れるべからず』。
ある講演会で、とても良い言葉を聴いた。
『社会的失敗は、自分の人生にとっての失敗ではない』
その方は入試を例に出していたが、志望校不合格になったことは社会的に見れば残念な結果かも知れない。しかしそれイコールその人の人生そのものに於いて失敗なのか、それはまた別問題という事。志望校でないけど第二希望の学校に行き、そこで素晴らしい出会いがあるかも知れない。思いも寄らない道が拓けるかも知れない。その結果を作るのも、また自分なのだ。

 そんな話を聴きながら、自分を振り返っていた。社会的には残念だと思われること、かなり多い。大学を出た後、自分から進んでフリーターになった。アルバイトをして貯めたお金を持って旅に出て、また戻ってアルバイトをして旅をする…そんな数年間もあった。『どこに就職されたんですか。』と尋ねられたであろう私の両親は、私のことを何と人に説明していたんだろう…今になって思う。
その後務めた会社では、一度大失敗をした。「辞めちゃ何の解決にもならない」と、誠意で返す事の大切さを教えてくれたのは部長。
子どもが出来て始めた英語サークル。一生懸命準備して会場に行ってみたら、私と我が子の二人だけ…という時もあった。
小さな小さな英語教室のスタートメンバーは我が子と姪っ子たちの5人だった。

 周りの人が眉をひそめて気の毒に思うような経験を山ほどしてきた。恥ずかしさも、決まりの悪さもたくさん経験した。でも、社会的な失敗は私の人生にとって失敗ではなく、むしろ宝の山だったのだ。

 今は老若男女、たくさんの生徒さんたちと日々交わり、楽しく学んでいる。でも私は心の中に、いつもあの時の恥ずかしい思い、やるせない思いも一緒に置いておくようにしている。そうして目の前の方々への感謝を胸に、いつも初心を忘れずに歩むことができるのだ。

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