ウソツキ

ー4ー

次の日の朝、いつもよりも早く目が覚めたわたしはしばらく自分のベットでボーっとした後、時間になって起きだし買っておいた菓子パンとコーヒで朝食を済ませ、仕事場に出かけた。

ロッカーで着替えている時、卯木さんが入ってきた。

「おはよう。シフト変わってもらってありがとうね。今日はもうすぐ閉館となるビジネスホテルのロビーの掃除だよ」

「そうですね」

そっけない返答でも卯木さんは優しく接してくれる。わたしたちは会社のロゴが入ったミニのマイクロバスで清掃先に向かう。

卯木さんが隣に座った時、話しかけた。

「あの、卯木さん」

わたしに話かけられて驚いたように目を丸くした。

「なに?」

「喪服ってどこにうってますか?」

「喪服?」

今朝自分のアパートから職場に向かう道中、わたしはずっとお通夜に着ていく服装について悩んでいた。高校生の時に施設の関係者のご家族が亡くなり葬儀に参列したことがあったけれど、その時は学校の制服で間に合った。19歳もう制服で行くわけにもいかないが、就職の面接のときに買いそろえた黒のスーツで代用がきくかなと思っていた。そんなことを考えていたら思いもよらず卯木さんにたずねていた。

「何かあったの?」

「ちょっと知り合いが亡くなって、でも気にしないでください。なんとかしますから。」

そういうと卯木さん

「よかったら、仕事が終わったらうちに来ない?ちょうど妹のがあると思う。喪服なんてそんなに多様するものでもないし、妹にも連絡入れてみるけれど。」

「でも、妹さんに悪いでいいですよ」

「そう?」

「はい。すいません。変な事聞いて、気にしないでください」

そういってその場でそれで終わった。清掃が終わり帰りの車内で卯木さんが喪服の事を気にしてくれて妹さんに連絡を取ってくれたそう。メッセージのやり取りを見せながら、わたしに話してくれた。ホーム画面に移ったスマートフォンの画面には息子さんがサッカーをしている姿だろう…その写真が待ち受けになっている。

「妹もこういってくれてるし…」

わたしはその行為に素直に従うことにした。会社に着き報告を済ませ、着替えてわたしと卯木さんは卯木さんの実家へと向かった。

小さな平屋の一軒家で卯木さんのお母さんだという人が出迎えてくれた。

「あら、かわいらしいお嬢さん。」

「でしょう?」

初めて容姿をほめられて少しだけむずがゆくなった。

「環希から連絡もらって出しておいたわよ。さぁ、早く上がって」

小さいながらも、清潔に整えられてたその家は家庭の匂いがした。物はちゃんとしまわれる場所にしまわれ、程よく掃除も行き届いている。

「環希は少し、笹塚さんより背が高いからどうかなって思ったけれど、喪服だし大丈夫よね」

「ありがとうございます」

少しだけお茶飲んでいってと言われて、引き留められて渋々飲んでいった。

「今時の若い子だもん、おばさんたちとは話あわないわよね。でも話しかけてくれて嬉しかった」

「すいません。頼る人いなくて」

「良いのよ。会社の人たちから聞いてるし。」

わたしは頷いた。

20分ぐらい、卯木さんの話に頷いたり、卯木さんのお母さんの話に応えたり談笑しながらお菓子をお土産にもらい卯木さんの家を後にした。

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