県内最大の少年少女合唱団から学ぶタレントマネジメントと組織運営

コロナ禍の影響を受けた活動は数多あると思いますが、「合唱」も大きな影響(制約)を受けた活動の1つだと思います。

そんな合唱に長女(小6)は約6年間携わっておりますが、彼女の所属する合唱団は活動制約を受けて厳しい1年を経験したにも関わらず、その求心力は一保護者の視点からは衰えているように見えません。定期演奏会やクリスマスコンサートが中止になって露出が減ってしまっているにも関わらず、入団希望者は途切れず、今日も体験会が開催されています。

県内最大で児童コンクール入賞者を多数排出し、全国大会出場の常連としてあり続けるのはとても凄いことであり、その秘訣について考えてみようと思いました。

タレントマネジメントと組織運営の観点で整理を試みます!

タレントマネジメント

合唱団は、下は幼児(3歳)から大学生までの全120名を超える団員で構成されています。
クラスはジュニア、シニア、全国といったカテゴリーで、詳細に5段階ぐらいに区分されています。人数構成はジュニアが最も多く、クラスが上がるほどメンバー数が少なくなっていくピラミッド型です。

全国メンバーはまさに団の顔。演奏会ではミュージカルも多く演奏しますが、メインの役を担当する方々です。

学生時代の部活に似ているなと思うのが、大人の合唱団に比べて定年がはっきりしていて、進学に合わせて団員が確実に入れ替わっていくところ。毎年多くのお兄ちゃんお姉ちゃんが卒団し、新しいジュニアが入ってきます。

小中高の部活動よりも団に在籍できる期間は長いので、ちょうど部活と大人のサークルの中間的な性質を持っている感じです。

さて、タレントマネジメントにおいては、タレントプールの大きさと適切な階級分けが重要だなと感じています。どんな状況であっても、新メンバーの勧誘の手は緩めていませんでした。その理由として2点考えられます。

・メンバーが多いほど将来の団の中心メンバーとなる子を発掘できる可能性が高まる
・裾野に広がるメンバーの存在が、上級生の活動を支えている。

各階級にそれぞれのレベルに応じた教え方のできる声楽の先生がおられます。しかし、全国メンバーを指揮する先生は、定期的に下のクラスにも顔を出して個別指導を行なっていました。そして、一人一人の歌声や姿勢をみながら、上のクラスへの進級時期を見極めている印象がありました。歌唱では鼻腔や口腔の響きが重要ですが、それには生まれ持ってのものが大きく影響することもあります。そのような子供一人一人の特性を見抜き、抜擢していく姿勢を感じました。多くの団員がいればいるほど、その才能を持った子に出会える確率は高まります。

下級生のメンバーは上級生の活動を支えています。それは精神的にも資金的にも両方の意味があります。

精神的な側面としては、階級が上がるほどに団に求められるコミットメントに影響があります。(これは上にあげた適切な階級分けとリンクします)上級生になると、役が与えられると共に責任も生じます。下級生の指導をしたり、求められる練習量も上がってきます。そんな時に、裾野に広がる後輩たちを見ると代表である自覚が芽生えやすくなるのではないかと思います。

次に資金面です。団としての活動には練習会場の借用や声楽指導の先生方への謝礼など当然費用がかかりますが、それらは団費と寄付によって賄われています。上級生になればなるほど、練習量が多くなり、それだけに費用もかかります。が、団としては団費は練習時間に応じて2段階でしか設定しておらず、結果的にジュニア層の団費が上級生の活動経費を補っている形となっているところがわかってきました。

まとめるとこの団員構成のピラミッド構造を意識することが、タレントマネジメントにとって重要なんですね。どこか他の事例でも使えないかな。ちなみにポストの数は新しい楽曲に挑戦することで増やしている印象を受けました!

組織運営

120名もの団員活動を支えているのが、主に代表からのメール連絡になります。このメール連絡網には、必ず携帯/スマホのアドレスを登録するようにお願いを受けています。PCメールだと、メッセージの読み忘れがあるからでしょう。

それから、保護者による後援会・講師陣・協力的なOBOGの存在...などを書き記していこうと思ったのですが、何か面白みがないので一旦やめますw

前半のピラミッド構造について考えたときに、ふと自身が進めている組織開発でもピラミッド構造が出てくるなぁと思いました。

合唱団の場合は統治者がピラミッド構造の外にいます。
一方、所属する企業には、統治者がピラミッド構造の内側にいます。

統治者が構造の内側にいるか外側にいるか、それによって集団が全く異なる性質を持つのが面白いなと。

合唱団の場合、このピラミッド構造はクラブチーム型だと言えるでしょう。
おそらくサッカークラブでも似たような構造があると思います。1軍、2軍、3軍・・・と実力で分けられる世界。そのような世界では裾野の広がりが大事になりそうな気がします。

「強いクラブチームの作り方」とか「〇〇の競技人口の増やし方」という観点のアプローチに、一般的な組織運営のヒントがあるような気がします。

後者の場合は今探求中です...連載中のマガジン(Change Agentとしての歩み)をご参照ください。


さて今のままでは、なぜ県内最大になりえたかについて言及が足りていないのでもう少し続けます。

・裾野を支えるジュニア層の指導者レベルの高さ

・指導への熱意と少し垣間見える非効率さ(余白)

この二つが実は一番書きたかったことです。

ピラミッド層の裾野を広げることの重要さについては、タレントマネジメントを言及しながら記載しました。本合唱団は、実にジュニアクラスの指導力が高いと感じています。
このクラスには未就学児もたくさん在籍します。幼稚園児の長男をもつ私としても、この年代の子を20分間集中させるのは大変なのに、なんと90分間の練習を実現させています。

関心のひき方がうまいといいますか、歌の力は凄いといいますか。
「はい、ではみんなで欠伸の声を出してみましょう。口を大きく開けてさんはい!は〜ぁ」
「ほら次は頭を糸で引っ張られているような感覚で、頭のてっぺんから声を出していきますよ〜」
こんな感じで、地声とファルセットを先生自身が自在に変えながら指示を出していき、幼い子供達に正しい発声方法を身につかせていきます。

みんなで揃うと、落ち着きのない子供達もしっかり統制を取ろうとするんですね。最初に見学した際に大変驚きました。すごー!

代表の先生の熱意も凄いです。連絡手段はメールと書きましたが、毎週火曜日に次の練習参加の出欠を問うメールを確認し(opt-out型)、その回答状況に応じて練習段取りを練られます。特にコロナ禍では、三密を避けるために、メンバーの限定・場所の確保などで大変な苦労がありました。それでも、合唱団の活動が続けられるように、毎回細かい練習計画を立て、指揮されていました。

そこには非効率さが見え隠れしながらも、それをカバーして有り余る熱量が感じられ、子を団に預ける保護者一同、サポートに回っている印象を受けています。

代表の持つ”余白”は求心力を生みますね。


まだまだコロナ禍の影響は受け続けますが、たとえ公式な行事ができなくなっても、この合唱団のレベルは維持されると思います。

そんな素敵な団で活躍している長女を羨ましく思います。
良い環境でどんどん成長して欲しいですね。



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