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vol.58『ツバメとわたし㉛~レア度ヘビー級~』

(前回作はこちら→『ツバメとわたし㉚』

 わたしは、ちょっとわくわくしだした。完成したツバメの巣をぶっ壊すという血も涙もない鬼のような行為を、雛が巣立つまで見守るという優しくほわほわした天使のような行為にシフトする。あぁ。なんて美しいのだ。

 しかしながら言っておくが、わたしのわくわくポイントはきゃわいい雛ではない。あくまでも、雛が巣立った後の巣がわくわくポイントなのだ。こうやって言っておかないと、間違いなく自分の本来の目的を忘れてしまう。雛の文句なしの可愛さに溺れてしまう。で、溺死してしまう。そう! なんなら、雛は二の次三の次なのだ。実におもしろいあの巣をどうしてやろう。わたしはあれこれ考えだした。


①ツバメ協会とかあったら、珍しい資料ということで買い取ってもらう。
②博物館にツバメの面白生態がわかる資料ということで買い取ってもらう。
③地方のテレビ局にネタとして買い取ってもらう。
④象が鼻で描いた絵並みに、ツバメのレアな巣限定一点物として売り出し、買い取ってもらう。


 すべてのアイデアが、換金という。我ながら、悪いな。黒い。えげつない。世間の人はいくらだったら買うのだろう。巣の相場なんて聞いたことない。そもそもそんなもの売買しても良いのだろうか。法に触れちゃったりするのだろうか。小物入れやオブジェなど、ハンドメイドの鳥の巣はネットでもたくさん出回っている。でも、これは作り物ではない。紛れもない本物。本物志向のマニアの中ではかなりの高額で取引されるとみた! しかも、普通の巣じゃない。ヘビ付きだ。レア度ヘビー級だ。


 そうこう考えているうちに、一日、また一日と時間が過ぎた。二羽のツバメたちは、相変わらず巣でじっとしている。ツバメは、どんな風に卵を産んで孵化させるのだろう。わたしは、ふと、ツバメの生態が気になった。メスが卵を産んだら、オスはどんな行動にでるのだろう。多くの鳥はメスが卵を抱いて温めて孵化させるそうだが、時に、オスがその役割を担う鳥もあるようだ。エンペラーペンギンなどは、メスが卵を産んだ後、オスが約2か月もの間何も食べずに卵を温め続けるという。本当に脱帽。大事に大事に我が子を育てる姿は、感動すら覚える。


 ツバメはどうなんだろう。

 
 やはり、メスが温めるのだろうか。そもそも、二羽のうち、どちらがオスでどちらがメスなのかも判断がつかない。外見的な違いはあるのだろうか。たとえば、オスは喉元の赤いところに実は蝶ネクタイみたいなの模様があるとか、羽を広げると孔雀ばりにラメってるとか。メスは、これといって目立った特徴はないけれど、ものすごく精神的に自立していて、ちょっとやそっとしたことでは全く動じないとか。いやいや。もし、これだとして。メス判断、難度ウルトラ級やん。


 よし。こんな時は便利な文明の利器を使うのだ。


 さっそく、検索欄に「ツバメ オス メス 違い」と入れてポチってみる。えーっと、なになに?


「尾の長い方がオス、短い方がメスです。」


 ……ふ、ふつう。
いや、期待していたわけじゃないけれど。そうなんだ。ツバメ。


(つづく)

最後までお読みいただき、ありがとうございました(*'▽')
『ツバメとわたし㉜』を更新しましたので、よろしくお願いします。

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