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vol.54『ツバメとわたし㉗~そんな巣なら見てみたい~』

(前回作はこちら→『ツバメとわたし㉖』)

 ツバメがヘビを練りこんだ巣を作り始めた。ヘビ、といってもおもちゃのヘビなので作り物である。ヘビをツバメ避けで置いたのにもかかわらず、それを逆手にとってきた。ツバメ、なかなかやりよる。さて、どうしたものか。ツバメには巣を作ってもらいたくはない。が、だ。ヘビの顔が前面に出ている鳥の巣。そんなの見たことも聞いたこともない。あろうことか、好奇心が沸々と湧いてきてしまった。そのままツバメに巣を作らせ、完成品を見ようかな。いや、見たい。見なくちゃ後悔するんじゃないか。

 そんなマンガみたいなツバメの巣、絶対見てみたい。でも、どうしよう。このまま、ツバメに巣を作らせたら車庫は間違いなく巣作りの材料であるワラとドロで汚れる。車庫だけではない。雛が誕生したら、車への被害も大概だ。車にフンが付いて、下手したら、車が錆びてしまうかもしれない。

 わたしは、悩んだ。

 でも、やはり好奇心には勝てない。見たいもんは見たい。見たいのだ。だって、ヘビが練りこまれた巣って。想像しただけで心が鷲掴みにされる。トグロが巻かれた形を存分に生かしたデザイン。鬼才。ツバメの斬新さ、まさに鬼級。もうグッド・デザイン賞。

記者:「ツバメさん!今回、天敵であるヘビを巣に使うという、前代未聞で無謀な取り組みをされましたね。そのことについて、一言お願いします!」

ツバメ:「そうですね。ヘビという巻物を巣に生かすことで、素材の持つ良さを十二分に引き出すことができました。我々ツバメとヘビとは、一般的には相容れない関係性ですが、その相反する二物がわたしのデザインによって見事に融合されました。まさに、フュージョン。これからは、ヘビ界に共生というスタンスを全面に押し出していきたいですね。」

記者:「いや、ほんとに素晴らしい取り組みですね。これからもあっというデザインでわたしたちを驚かせてください!本日はお忙しい中、ありがとうございました!」

みたいなインタビュアーとのやり取りでさえ、イメージできちゃう。


ここまでくると、もうツバメに作らせるしかない。だって、見たいもん。ヘビの顔がついた巣。もう魔除けよね。これは、鬼瓦とか、シャチホコとか、シーサーとか、そういう感覚よね。

ということで、ツバメに巣を作らせることにした。今までのわたしの思いからすると、やや複雑であり不本意ではあるものの、いたしかたない……。

(つづく)


最後までお読みいただき、ありがとうございました!
『ツバメとわたし㉘』を更新しましたので、よろしくお願いします(*'▽')

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