見出し画像

地震と下ネタ好き友人ホームレスすーさん

 昔とは違い、今のホームレスはレジャーシートや段ボールの家ではなく、街中の隅々に身を寄せる。
 今日は現代版のホームレスを職業としている友人のすーさんと語り合っていた。
 すーさんは元々は成功を収めていたビジネスマンだったらしい。しかしある日突然、全てを失ってしまったそうだ。へえと流して以来、未だに詳しいことはわたしも聞いていない。
 すーさんは、お喋り好きだなあってのが印象的な男で、他のホームレスの人たちと上手く連携をとりながら生活していた。
 現代版のホームレスという立場から、すーさんはわたしに多くのことを教えてくれた。
 そんな現代版ホームレスの男は、ストロング系の缶チューハイを半分ほど胃に流し込んで語り始めた。
「建築物ってな、人間の権威や力を象徴するものだと思うんだ。高いビルや立派な宮殿、それらは誇りや威厳を感じさせる。でもな、地震が来れば、一瞬で全てが崩れ落ちる。そんな時、俺はいつもノアの箱舟を思い出すんだ」
「ノアの箱舟ですか」
「沖君も知ってると思うけど、ノアの箱舟って、神様の命令で大洪水が来る前に建てられた船だ。その箱舟に乗って、ノアと彼の家族、そして動物たちだけが生き残ったって言われてる。俺たちホームレスも、建築物が崩れ去るとき、自分たちの命を守る場所を求めるんだ。だから、ノアの箱舟のような安全な場所が欲しいって思うんだ」
 すーさんはしみじみと語り続ける。
「建築物が崩れても、俺たちホームレスは立ち上がる。生きるために必死になる。だからこそ、ノアの箱舟のような安らぎを求めるんだ。建築物が権威の象徴であるなら、俺たちの生きる意志も、それに負けない強さを持っている。だから、どんな困難が待ち受けていようとも、俺たちは立ち向かう。ノアの箱舟のように、希望を胸に生きていくんだ」
 その時、スマホのアラームが鳴った。地震?
 あたりを見渡していると、揺れた。
「おっおっ」
 すーさんは慌てて立ち上がった。
 揺れが収まった。
「へっへっ、地球がダンスなんか踊ったせいで、大洪水だよ」
 すーさんの股間がチューハイでびっしょり濡れていた。
「俺が立ち上がっても、ここが立ち上がらなきゃ意味ねえんだよな。俺が濡れてどうすんだよ」
 すーさんは股間を押さえると、キレッキレでマイケルジャクソンのスリラーみたいなのを踊り出した。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?