自己観察のススメ

私にはかかりつけの歯医者というものが未だ無い。
とは言え、歯のトラブルが無い訳でもない。
数カ月前、初めて訪れた歯医者で「嚙む力が強いですねー」と言われたのだが、そんなことは他人と比べようもなく、また今までの人生で自分の噛む力についてなど考えた事すらない私は「へー?」としか思わなかった。
今回は歯の治療を通して自分の無意識の行動を知る事になったお話。

鏡を見れば自分の姿形くらいは見れるけれど、自分の内側のこと、思考や行動のクセなどは意識してみなければ知らないままだ。
自分のことなのだけれど、他人をイラつかせ「○○ちゃんっていつもそうだよねっ!」と多くはお小言、希に褒め言葉として言われ初めて気が付くというお粗末なありさま。
自分の事は何にも知らずに 他人の事はなんでも知ってる~♪
BUCK-TICKの敦ちゃんもそう歌っていたナ。

本筋とはズレるけれど、まずは受診に至る背景を。
歯医者を尋ねたのは勿論治療のため。遡る事10年以上前。歯が痛くて目が覚めるという、もはや虫歯を超越した虫歯を育てていた時、虫歯ばかりは自分でどうもしようがないと観念し、さらにその昔親知らずを抜いた歯医者を尋ねた。
詰め物をしてもらい「今日はガムとかお餅とか粘着系の食べ物はやめてくださいね~」と見送られ、私は言いつけを守った。
ガムもお餅も日常的に食べないので問題なし。

が、しかし。その日のうちに取れてしまい再び歯医者の門をくぐることに。
「すみません…取れちゃいました…」と。
私は確かに言いつけを守っている。とは言え、穏やかで丁寧にお話を聞いてくださる先生の技術を責める気にもなれない時、人はこれを何度まで繰り返せるだろうか。私は3回が限度だった。
イラつくほどの痛みからは解放されすっかり快適になった私は、虫歯の治療はしてくれているならもういっか…と他の歯医者へいく事もせず、奥歯に穴をあけた状態のまま何年も過ごしてきた。
これが更なる虫歯に進化しなかった事に感謝せねばならいだろう。

3年前、大きな穴を口腔内にのこしたまま手術を受けるために総合病院の口腔外科を受診し「回復したら、この穴はかかりつけの歯科医でちゃんと治療してくださいね」と、かかりつけ医にお手紙まで書いてくださったにもかかわらず、そのお手紙は我が家に眠り続けた。
ところが、思いがけず再び手術をすることになり総合病院の口腔外科を受診せねばならなくなり、「やばい!歯医者に行っていないのがバレる」と慌てて穴を埋めることにし、穏やかで優しかった先生には申し訳ないが、簡単に取れて欲しくないと、近場の新たな歯医者の門をくぐり「この穴埋めてください!」とお願いした。

というわけで、新たな歯医者では女医さんのお世話になった。
女医さんは頭もいいだけでなく、なぜに美しい顔立ちの方が多いのだろう?
何度か通い、いよいよ終わりが見えてきた日。
穴に詰め物を詰め「じゃあ、これでしばらく待っててくださいね」と告げられ待つこと数分。
ピピピピッ♪ピピピピッ♪というアラームと共に現れた衛生士さんか助手さんかわからない方が「今日はこれでお終いです」とエプロンを外そうとしてくれたのだけど‥‥「いや、無理でふ。くっふぃひゃいまひた」と私。
なんとも私は待っている間、無意識のうちに歯を食いしばっていたようで、詰め物を媒体に上下の歯をくっつけてしまっていたのだ。
歯が開かない。故に口も開かない‥‥。
歯の詰め物なんて初めてでもないけれど、どうしてこうなった!?

その後、「あーやっぱり強いんだねー」と言われながらくっつけてしまった上下をセパレートして再び先生にやり直しをしていただいたことは言うまでもない。
きっと、先生のご家庭で「今日の患者さんさ~歯をくっつけちゃってさぁ~」と夕飯の話題に私が登場したのではないかと思う。

そんな珍事から、私は無意識に歯を食いしばってるのか?と日常生活で自分の状態を観察してみることにしたのだが、間違いなかった。
私は何故だが常に歯を食いしばっている。
玉ねぎを切る時も、車の運転をしている時も、モフモフのネコ動画を見ている時でさえ気が付けば歯を食いしばっているのだ。
一体何と闘っているのだ?と自分で自分に「ご苦労様!」と言いたくなるくらい気が付けば力が入っている。
幸い、歯ぎしりはしないし、睡眠中の歯ぎしりを指摘された事もないので人様に不快さを与えてはいないようだけれど、なんだかごめんね私と思うのであった。

自分の無意識クセを一つ知ったという収穫はあったものの、長年のしかも無意識のクセはなかなか治らない。別に直す必要のないことかもしれないけれど、常に力ませているのかと思うと「もっとリラックスしようよ~」と背中をポンポンしてあげたい衝動にかられ、時折自分の状態を意識するという新たな習慣ができつつある。
無意識クセってほかにも沢山あるんだろうけど、深層心理の表れだと思えばこそ力が入って踏ん張っているならばもっと労わってあげたい。
自己観察。セルフ・ウォッチング。セルフ・モニタリング。
何が適切な言い回しか今はしっくりきていないけれど、1日の中でほんの数分でも自分で自分を見ることは、自分探しの旅に出るよりもはるかに自分への発見がある。


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