「め」の字

針状の道具で、紙に6つの穴をあける。そうして出来上がるのが「め」の字である。
私の愛用する文字・点字では、6つの点の組み合わせで文字を表現する。その6つの点すべてで表されるのが「め」なのだ。

盲学校に入学して、初めて宿題というものが出されたとき。私は拍子抜けした。
先生に差し出されたのは、その「め」の字が並んだ紙だった。そしてこう言われたのだ。「これを指でたどるのが今日の宿題」。
何それ?学校の勉強ってもっと難しいことをするものだと思ってたのに。そんなのが宿題?
何か物足りなかった。

実はこれ、点字をスムーズに読むための大切な訓練。指でたどるということに慣れる必要があるからだ。
でもそのときの私にそんなことなどわかるはずもなく…。
「ちょろいわー」とか思いながら、テレビなんか見ながら、パパッと適当にたどってその宿題を終わらせた。
これが過酷な点字ライフの始まりだとは想像もしないで……。

さて、何が過酷だったのか。それは、「め書き」である。
め書き。「め」を2分間ひたすら打ち続けるという謎の訓練。
点字を覚えるのにはそれほど苦労しなかったけれど、これだけは地獄だった。
「めめめめめめめ」って。機械にでもなったような気分。そして疲れる。
もう、相当疲れる!

私が人生で一番たくさん書いた文字。それは間違いなく「め」だ。
一番嫌いな文字。それも間違いなく「め」だ。
…「め」の字に罪はないのに。

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