音に乗せて
彼女は言葉で表現することが得意ではない。つい、余計なことを口走ってしまったり、心にもないことを放ってしまう事がある。言葉に角があると言われ、自分ではそんなつもりがなくても、相手はそう感じていなかったと、何度も傷ついた経験がある。
そんな時に音楽が彼女を救ってくれた。インドで古くから親しまれている『キールタン』が、彼女の心を軽くした。
誰に聞かせるわけでも、評価をされるものでもない。キールタンは自分の内側にいる神様に向けて、愛と感謝を伝える祈りのうた。マントラの響きはとても美しい。言葉の意味を深く理解していなくても、細胞に響く感覚がある。
だから深く深く唄う時は、不思議と涙が出てくる。その度に彼女は、一枚重たい服を脱ぎ捨てられた様な感覚になるのだ。
『キールタン』を通して、祈り、愛し、命を捧げる、それを彼女は学んでいる。
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