見出し画像

間取りの考え方~平屋の大きな屋根の家~ 4.「耐震等級編」

 Sawa~建築士のあたまの中さんのとのリレー記事、第4回目です!
今回は、主に「耐震等級」について説明していこうと思います。


これまでのながれ

1回目 Sawaさんが、平屋の大きな屋根の家の間取りを公開!

2回目 それについて、私:ナミ構造設計が構造をチェック! 

3回目 構造チェックをふまえて、Sawaさんがプランを細かく修正!

 そして、今回が、4回目!
 
Sawaさんのプラン修正をふまえ、構造も最終チェックしようと思います。

最終構造チェック

壁量のチェック


図1 壁量

 壁長さ合計に壁倍率という係数をかけて、存在壁量というものを算出します。駐車場の屋根が無くなったので、その部分の壁が減って、下記のようになりました。
【存在壁量】
 X方向 37.8m x 2.5倍 = 94.50m = 9450cm
 Y方向 18.9m x 2.5倍 = 47.25m = 4725cm

 必要壁量は、床面積や、風を受ける面積などから計算し、下記になります。駐車場の屋根が減ったことによって床面積や風圧面積が小さくなり、必要壁量も減りました。
【地震に対する必要壁量】
 X方向 112㎡ x 11 = 1232cm  < 存在壁量9450cm OK
 Y方向  上に同じ 1232cm  < 存在壁量4725cm OK

【風圧力に対する必要壁量】
 X方向 850cm  < 存在壁量9450cm OK
 Y方向 2750cm  < 存在壁量4725cm OK

 プラン修正後も、十分な壁量があるという結果になりました!

梁のかけ方


図2 梁のかけ方

 梁のかけ方は、前回から駐車場の屋根部分が無しになっただけで、そのほかは全て同じです。
(厳密には屋根の種類などにより変わりますが、今回は、ソーラーパネル無しの金属屋根で設定しています。)

耐震等級について

 Sawaさんから、耐震等級3を取る場合はどうなるか? と質問があったので、それに答えたいと思います。

耐震等級とは?

 そもそも耐震等級とは何か?ということですが、きちんと説明すると長くなってしまうので、ここでは木造住宅に限定して、簡単に解説したいと思います。
 耐震等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で定められた、耐震性能を評価する基準です。
 耐震等級1~耐震等級3まであります。

耐震等級1
 建築基準法の構造基準を満たしている住宅になります。
 建築基準法の確認申請には 
A.壁量計算
B.壁配置のバランス
C.壁が転倒しないための金物の計算
の提出が必要です。

耐震等級2
 建築基準法で想定する地震の1.25倍の地震力に対して倒壊しない住宅になります。
 等級2を取るために審査機関に提出が必要なものは、 
A. 壁量計算 (等級1より1.25倍の壁量が必要)
B. 壁配置のバランス
C. 壁が転倒しないための金物の計算(1.25倍の地震力に対して検討)
に加えて
D. 床や屋根面の構造計算(1.25倍の地震力に対して検討)
E. 梁の構造計算(1.25倍の地震力に対して検討)
F. 基礎の計算(1.25倍の地震力に対して検討)
となります。

耐震等級3
 建築基準法で想定する地震の1.50倍の地震力に対して倒壊しない住宅になります。
 等級3を取るために審査機関に提出が必要なものは、等級2と同様に 
A. 壁量計算 (等級1より1.5倍の壁量が必要)
B. 壁配置のバランス
C. 壁が転倒しないための金物の計算(1.5倍の地震力に対して検討)
D. 床や屋根面の構造計算(1.5倍の地震力に対して検討)
E. 梁の構造計算(1.5倍の地震力に対して検討)
F. 基礎の計算(1.5倍の地震力に対して検討)
となります。

注意1
ここでは、手続き上、提出が必要な計算書について記載しています。
計算書の提出が不要なものでも、当然、その安全性を検討しなくてはいけません。(建築士として当然のことです)
例えば、耐震等級1では、D.床(屋根)、E.梁、F.基礎 の計算書提出は不要ですが、それらの検討が不要というわけではなく、DEFについても安全なもので設計することが必要です。
ここでは、地震に対する計算に限定して説明していますが、普段人や家具が乗った時の荷重や、暴風時、積雪時に対する計算書も、もちろん提出します。
また、書類提出が不要であっても、ソーラーパネルや雪など追加でかかる荷重に対する検討、敷地の高低差や埋設物などに対する検討、地下や吹抜け・ロフトなど建物形状を考慮した検討など、その住宅に合わせて、さまざまなことに対して、安全性を確かめることが必要です。

注意1

耐震等級3が耐震等級1と違うところは
●1.5倍の壁量が必要
●1.5倍の地震力に対して、金物・床・梁・基礎の構造計算が必要
ということになります。
(ここで注意して頂きたいのは、「1.5倍の壁量=耐震等級3」ではないことです。そのほかの条件も満たすことが必要です。)

この住宅を耐震等級3にすると

 それでは、この平屋の大きな屋根の家で耐震等級3をとる場合はどうなるか見ていきましょう!

 まず、壁量の計算をします。
 地震に対する必要壁量を1.5倍しても足りるかどうか検討します。
【地震に対する必要壁量】
 X方向 112㎡ x 11 x 1.5倍 = 1848cm  < 存在壁量9450cm OK
 Y方向  
上に同じ 1848cm  < 存在壁量4725cm OK

 もともと余裕のある壁量だったので、必要壁量が1.5倍になっても現状でOKという結果になりました。(ただし、1.5倍の必要壁量を満たしていても、バランスや床の計算によって、さらに壁が必要な場合もあります。)
 これは、平屋だからというのも大きいと思います。
 2階建て、3階建ての1階部分だと、平屋の何倍もの壁量が必要になってきます。2、3階建ての住宅を耐震等級3にする場合には、かなり壁を増やしたり、高耐力仕様の壁にする必要が出てきます。

注意2
ここでは、「壁量計算」という簡略な計算方法のみ説明しています。
実務では、耐震等級2以上をとる場合は、壁量計算に加えて、より詳細な「許容応力度計算」という方法で地震に対する計算をすることが多いです。

注意2

 次に、1.5倍の地震力に対して、金物、屋根(床)、梁、基礎の構造計算が必要です。しかし、それをやっていくと100ページ以上の計算書になってしまうので、それはここでは割愛します。
 ただし、確実なのは、それらの計算についても1.5倍の地震力で計算するので、耐震等級1の時より、高耐力なものが必要になってきます。
 とくに、金物・屋根を高耐力仕様にすることが必要です。(具体的には、大きな金物を使う、火打ち(※1)や受け材を増やす、釘を細かく入れる、などです。)

Q. 耐震等級3を取る場合はどうなるか? という質問に対する答えは
A. 壁量は、今のままでOKです。
 金物は、大きい金物が必要になります。
 屋根は、火打ちを増やす必要があります。

ということになります。

※1 ちなみに、「火打ち(ひうち)」とは、図3のように梁と梁の間に斜め45度にかける部材になります。


図3 火打ち


 今回のプランで、梁伏図(※2)を作成すると、図4 の赤線が火打ちになります。一般的には、天井裏に隠れてしまう部分なので、見た目的にはあまり影響しません。
※2 梁伏図(はりふせず)柱・梁の配置を上から見た図

図4 梁伏図

まとめ

 耐震等級編、いかがでしたでしょうか?
 難しい話が多くなってしまったかもしれません。

 コラボ記事、なんと次回は、Sawaさんとの「対談記事」になります!
 今回のコラボ企画をふまえ、先日、某所でSawaさんと、今回の感想や今後について対談してきました! と言ってもただのおしゃべりでしたが。
(「対談記事」というとなんか有名人みたいでわくわく♪)

 どうぞ、お楽しみに。

 今回の記事に関するご意見や質問も、どんどんお待ちしています。

こちらがシリーズのつづき、対談記事です↓


コラボ記事はこちらにまとめています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?