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日向坂46ラジオ投稿から考える、質の高いメールとは 〜1年間のラジオ投稿まとめ〜

2022年8月5日からラジオ投稿を始めて一年が経ちました。一年を振り返り、次の一年の目標を定めるために書いた自分用の記事です。具体的な数値等も挙げているので、人様の参考にもなるかもしれないし、ならないかもしれません。

僕は「霜降り明星のオールナイトニッポン」でいうところの一般職人レベルで、その中の偏差値でも確実に50は下回ってる感触があるので、「その辺の人には世界がこう見えていて、こう考えてるのか」という風に見ていただくといいのかなと思います。他の世界と同じく常連・超常連から見えている景色と僕のそれは全く違うはずなので、この記事から「常連・超常連を目指すヒント」が見えるとは限りません。ご了承ください。

めちゃくちゃ言い訳したところで本題です。自分は送り先を「日向坂」「芸人」「その他」に分けていて、主に「日向坂」と「芸人」に送ってるのでそれらの結果と、たまに目にする「メールの質」みたいな話について感じてることを、日向坂へのラジオ投稿をベースに整理していこうと思います。

以下、投稿を開始した8月を起点に翌年7月いっぱいまでを1シーズンとして扱います。

※注意:1万2千字あります。


ベンチマーク

ラジオ投稿を開始する前に、「どれくらいの成績で有名職人と呼ばれるほどになるのか」を確認するため、以下の記事を参考にしました。

ここからざっくり計算し、以下の数値をベンチマークとしました。

  • 投稿数:25通/日

  • 採用率:5.91%(45採用/月*12ヶ月÷25投稿/日*365日として計算)

22/23シーズン成績

全体

「芸人」「日向坂」「その他」の全てをまとめた成績です。
以下は月ごとの「投稿数」「採用数」「採用率」の推移です。採用率は「採用数/投稿数」です。放送日の都合で、前月に送ったものが翌月の放送で採用された場合、「投稿は前月扱い、採用は翌月扱い」になっています(以後、全てにおいて同条件です)。

22/23シーズン全体の成績推移

総投稿数は5,993、総採用数は152、総採用率は2.53%です。おおよそ投稿数が増えるほど採用数も増えています。ベンチマークの記事でも、採用されるコツに「1個でも多くネタを送ること」が挙げられていました。なぜそうなのかは後ほどメールの質を考える時に見解を述べますが、たしかに正しそうです。
また、「職人採用率」「職人投稿/日」がベンチマークのラインですが、投稿/日がかなり大変で、2月・5月は頑張りましたがその後わかりやすく力尽きてます。総採用率2.53%はベンチマーク5.91%の42%程度と2〜3倍の差があり、生産性で2-3倍も離されていることになります。投稿数でも採用率でも、有名職人の背中はまだまだ遠いことが伺えます。

日向坂ラジオ

続いて「日向坂」に絞って見ていきます。以下がシーズン全体の、番組別の「投稿数」「採用数」「採用率」のグラフです。採用率が高いもの順に並んでます。「採用数」にはAuDeeやアフタートークなど本編外採用も含みます。

日向坂:22/23シーズン番組別成績

総投稿数は2920、総採用数は85、総採用率は2.91%です。総採用率は、ベンチマーク5.91%の49%くらいで半分ほどです。ベンチマークとは生産性に2倍程度の差があるといえます。

内訳を見ると、平均採用率あたりにあるのが「レコメン」です。そこを境に左が好成績群、右が不成績群とすると、比較的メール読みが少ない傾向の番組が不成績群に入ってるように思います。さらに好成績群を見ても、「アッパレやってまーす! 木曜日」(以下、やる木)以外はベンチマークに比べて採用率は63%〜66%程度とさほど高くありません。ということは「メール採用数が多い番組でも結構ボツってるので、採用数が少ない番組だと余計にボツる」ってことかなと思います。イメージでいうと、「序列的に下位番手になることも多く、採用数が多い番組はそれでも乗る可能性はあるけど、少ない場合では切られる」みたいな感じでしょうか。本編外採用なんかはその典型例かと思います。
その本編外採用が発生する番組について、本編採用率を計算したものが以下の図です(「のびらじ」と「サリマカ897」はNABE・AuDeeでの採用が0なので省いています)。

日向坂:22/23シーズン本編外採用

日向坂高校放送部」はそもそも採用数が少ないので参考程度ですが、「ほっとひといき」は本編率が44.4%となっており、AuDee採用の方が多いことが分かります。本編採用分のみで採用率を計算すると1.74%となり、平均を大きく下回るほどに落ち込みます。

やはり次シーズンに向けての課題は「序列で上位番手に乗るよう、いかに盛り上がる内容にできるか」になりそうです。

ちなみに「日向坂46の『ひ』」ですが、なんとなく同じ投稿者をあまり採用しない方針がある気がしているので、2通目からは難易度が高いかなと思い最近はほぼ送らなくなりました。 「ひなちらンぷす」を複数持ってる人はすごいと思います。
また、「日向坂高校放送部」においては、読んだけどカットになったメールというものが存在するようで、放送上(アフタートーク含む)では読まれてないのに送られてきたステッカーが2枚あります。仮にそれを本編外採用相当であるとして合計しても採用率に大きな変化はないので、どっちみちボツが多いという結論は変わりません。

次に、月別の推移を見てみます。

日向坂:22/23シーズン月別推移

全体で見た場合と同じく、おおむね投稿数と採用数は比例しているように思います。6月の採用率だけやけに高いのは、投稿数が少なかったわりに採用数が多かったという偶然の外れ値です。

芸人ラジオ

次に「芸人」です。シーズン全体の番組別グラフが以下です。ちなみに佐久間さんは芸人じゃないですが、その仕事内容や「ラブレター」の内容的に芸人に入れちゃってます。

芸人:22/23シーズン番組別成績

総投稿数は2,738、総採用数は60、総採用率は2.19%です。総採用率はベンチマークの37%とさらに離され、生産性で3倍近い開きがあります。元々日向坂のラジオから送り始めたので、全体的に数が出せてない問題もあります。

ふつおたはほぼ送らず、リアタイもせずリアクションメールも送らないので、基本的にコーナーメールが主です。その採用内訳は以下の通りです。

芸人:22/23シーズンコーナー別採用数

最近はちょっと大変になってきたので、「タダバカ」「むかいの喋り方」は聴くのをやめてしまって、「バナナムーン」「ねごと」「山添寛のサクラバシ919」は投稿だけやめています。現在調子が比較的よいところは維持できるよう頑張りつつ、全体的にもっと採用数を伸ばしていきたいですね。こう書いておいて自分にプレッシャーをかける作戦。

次に月別推移です。投稿数に応じて採用数が上がる傾向は同じです。6月から採用が落ち込み気味で、底力の無さが露呈してるなぁと思います。そして7月からは完全にバテてますね。数が出せてないです。量を安定して出せるようにすることが課題です。

芸人:22/23シーズン月別推移

成績まとめと23/24シーズンへ向けて

生産性で現在、有名職人と比べると日向坂で2倍、芸人で3倍ほどの差があります。質を上げるべく「モノの見方や切り口」の引き出しを増やしていきたいので、いろんなやり方を取り入れて訓練していきたいなと思います。

以前のようにボーッとラジオを聴いていた頃よりも、自分でメールを送るようになった今の方が、採用されている他の方のメールの切り口の多彩さ・目の付け所の鋭さをひしひしと感じます。自分のものが採用されたとしても、同じ並びの他のメールとの差をまざまざと見せつけられるような、そんな日々です。自分的にはまだ論理的な発想法を掴みきれていないので、次のシーズンでは自分なりの得意な発想パターンを身に着け、安定してネタを量産できる状態に達したいなと思います。また、苦手な「自分のエピソードトーク系のネタ」や「あるあるネタ」についても、日常の捉え方そのものに工夫が必要なので、そのフレーミング方法を模索することも次の課題かなと感じています。こういった課題をクリアして採用数を上げつつ、「読まれたけど全然盛り上がってない状態」もできるだけ減らしたいですね。なんとか盛り上げようとパーソナリティが頑張ってくれてるけどどうしようもないあの状態、本当に申し訳ない。

メールの「質」とは

以上で22/23シーズンの成績をまとめましたが、メールの採用を語るにあたって、よく「質」の話が出るかと思います。「メールは質が大事だよ」なんて話もありますが、その「質」ってなんだろう?について、個人的な考えを整理したものがこの章です。主に日向坂ラジオに投稿する中で感じたことなので、特に芸人ラジオの純粋お笑いネタメールにはあまり当てはまらないかもしれません。

また、あくまで有名職人と生産性で2-3倍の差をつけられている人間の観点なので、有名職人とはぜんぜん違う観点だったり、本質を外している可能性だったりは大いにあります。その点ご了承ください。

定義:質の高いメール = 採用されるメール

ラジオにメールを送る目的(理由)は、人によって「番組を盛り上げたい」とか「名前を覚えてほしい」とか「ノベルティが欲しい」とか色々あると思います。僕は「ノベルティが欲しい」が発端でした。
それらの目的は「メールを読まれる」ことで初めて達成されることがほとんどなため、そうすると自然に目標は「読まれること」になると思います。メールの内容を工夫することはそのための「手段」にしか過ぎません。メールは必ずしも文学的な表現は必要ないですし、爆笑を取る必要もありません。以上から、送る目的や表現上の巧拙は問わず、あくまで目標である「読まれたかどうか」で質を測るのが一番素直かと思います。

なので、「質の高いメールとは、採用されるメールのことである」と定義したいと思います。

質の高いものが読まれるのではない。読まれたものの質が高いんだ。

ドイツの著名な元サッカー選手であるフランツ・ベッケンバウアーは、「強いものが勝つのではない。勝ったものが強いのだ。」という名言を残したらしいのですが、先ほどの定義からすると、ラジオのメールもそれに近いかもしれません。

すると気になるのは「じゃあ、読まれるメールってどんなの?」ということです。いくつか観点を分けて考えていきます。

質の高さ:基本構造に則るのは大原則

質の高いメール、つまり読まれるメールを目指すにあたっての大原則は、メールの基本構造に則ることです。「ラジオ メール 書き方」などで検索すればたどり着ける情報で、「基本形式に則り、適度な文字数で読みやすく整形され、過剰に装飾されず、1メール1内容になっている」というルールになります。検索して出てくる例を真似ればOKで、オードリーANNのように推奨フォーマットがあればそれに従うのが良いですね。

なぜ基本形式に従ったほうがいいかというと、単純に読みやすいからです。以前、「真夜中の松田さん生配信」に向けてTwitterハッシュタグで投稿を募集していたので全件見たのですが、読みづらい書き方だと内容が頭に入りづらいなと感じました。ラジオのスタッフさんは何百通、番組によっては万単位のメールを「毎週」さばいています。1件1件に長い時間を掛けることができないので、「読みづらっ」となった瞬間、飛ばされる可能性も大いにあるなと思いました。人気番組ほどメールがたくさん来ますし、毎週のことなので、他に代わりはいくらでもあるのが現実だと思います。「仕事なんだからちゃんと内容も読めよ!」という声もあるかもしれませんが、読みにくいものはパーソナリティにとっても読みにくく、リスナーにとっても聴きづらいわけです。スタッフさんは面白いラジオだと思ってもらいたいわけなので、やはり読みやすい・聴きやすいメールを優先して採用する動機があります。書き方でチャンスを失うのはもったいないです。

普段の生活でも、「この人話が長いな」とか「話の筋が分からんな」とか「嫌な話し方だな」とかで、相手の話を聞きたくない時があると思います。メールもそれは同じかなと思います。

もちろんこれは原則なので例外もあり、内容や文脈次第で原則を外れたメールも普通に読まれますし、自分も経験ありますが、相対的に数は圧倒的に少ないと思います。

質の高さ:送り手の視点(絶対値)

送り手からすると、採用を目指してメールを書く時に意識したいことはただひとつ、「盛り上がること」だと思います。

普段の会話や雑談と一緒で、パーソナリティが良い反応をするか?楽しく喋ってくれそうか?興味深い内容になるのか?そこに尽きる気がします。

原則的な話だと、

  • クローズドクエッションよりオープンクエッション

  • 思考や行動特性など人となりが見えやすい「Why」や「How」

  • パーソナリティの興味関心に沿う話題

などがありますが、要はパーソナリティと対面で会話するイメージを持つのがいいんだろうなと思います。

質の高さ:選び手の視点(相対値)

選び手、つまりスタッフさん目線だと、メールの採用に関しては少なくとも以下のことが言えそうに思います。

  1. 内容の評価が送り手と同じとは限らない

    1. 送り手は良いと思っているけど、選び手は良いと思わない

    2. 送り手は良いと思ってないけど、選び手は良いと思っている

  2. 内容の評価は同じでも、文脈が優先されることがある

    1. 番組の文脈

    2. パーソナリティの文脈

    3. 送り手の文脈

1つ目、「内容の評価が送り手と同じとは限らない」には2パターンあって、「送り手は良いと思っているけど、選び手は良いと思わない」と「送り手は良いと思ってないけど、選び手は良いと思っている」です。前者は誰しもが経験する「面白いと思って言ってみたけどウケなかった」状態と同じです。こちらの記事でも「自信があるものは中々読まれない」と書かれていて、結構あるあるなんだと思います。
後者は、たまに芸人さんなどが話している「アンケートに書いた一番弱いものがなぜか採用された」とか「それ面白いんか?と疑いつつもやってみたらめっちゃ盛り上がった」というようなやつと同じです。おそらく、練りに練った自信のあるメールが不採用になった一方、雑に送ったメールや自信のなかったメールが採用された経験を持つ人はいるんじゃないでしょうか。これはそういうケースです。

2つ目、「内容の評価は同じでも、文脈が優先されることがある」については、少なくとも3つの文脈がある気がしています。

2-1が「番組の文脈」です。
番組でたまたま出た話題が軸となり、それに関連するメールが主に読まれるというパターンの他にも、「届いたメール内容による文脈」というものがある気がします。
たとえばあるコーナーにたくさんメールが届き、パターンA〜Dに分けられるとします。笑えるもの・感動するものといった「感情パターン」や、「自分の話・他人の話・空想の話」などの「視点パターン」など、色々なパターンが考えられますね。すると、メールの傾向とスタッフさんの意向次第で、采配も色々考えられます。以下は一例です。

  • A-B-C-D と全部違うパターンで占める

  • A-A-A-A と全部Aで占める(Aが全部良い、番組的に合ってる、など)

  • A-A-B-B と2パターンで占める(AとBが特に良い、など)

  • A-A-B-A とサンドする(基本Aでいきたいが、Bで展開もほしいなど)

  • A-B-C-D-E と、ホントはEも欲しい

すると、もし「A-A-A-A」なら、Bのメールしか送ってない場合ノーチャンスです。「A-A-B-B」「A-A-B-A」ならC、Dしか送ってない場合ノーチャンスです。スタッフさんが見て「内容は良い」と思われたとしても、「番組的にはそれを入れると流れが悪くなるので、あえて外す」みたいなことはあり得ると思います。
逆に、スタッフさんが「ほんとはA-B-C-D-Eがいいな」と思っている時にEを送っていれば、採用される可能性はかなり高いと思います。さらには、「A-A-A-A」でいこうと思ってたけど、あるメールのBの内容がAを引き立てるのに良かったので「A-A-B-A」にする(内容の良いAが1つ落ちる)、なんてことも有り得そうです。

2-2が「パーソナリティの文脈」です。
パーソナリティに大きな出来事があったとか、何かが起こった、などです。一例を挙げると、丹生ちゃんが「余計な事まで#140」で某ラジオにメールを送った回です。丹生ちゃん回では毎回必ず「ドラゴンボール風次回予告コーナー」があり、リスナーから内容を募っていますが、この回に採用された内容はその某ラジオへメールを送ることを利用したものでした。少なくともこの回については、どんなに他に面白い内容が投稿されていたとしても、「某ラジオにメールを送る」という文脈から外れた内容が採用されることは無かったと思います。お笑いでいう「かぶせ」に近いんでしょうか。「その瞬間のみの文脈」という消費期限の短さゆえ、うまく「かぶせ」がハマると大きな盛り上がりを生むので、選び手視点からしても選ぶ動機があり、採用確率が高くなると思います。
他にも、「どこかへ旅行に行った」とか「珍しい体験をした」など次から次に出てくるので、そういったパーソナリティの文脈が優先されて、メール単体で見れば「今じゃなければ採用されるほど内容が良いもの」が不採用になることもあると思います。

2-3が「送り手の文脈」です。例えば、

「オードリーANNを聴いてる9歳女子です」
「初めてメールします。ブラジルから聴いてます」
「舞台全12公演、すべて観劇しました」

みたいなものです。その要素だけでインパクトがあり、パーソナリティのリアクションが強くなることが予想され、内容自体はオーソドックスでも全然OK、みたいなやつです。どれだけ舞台観劇の感想を美しく綴っても、「全公演見ました」のインパクトには勝てません。

以上のように、選び手からすると「内容の評価が送り手と違う」ことや「文脈的に他を選ぶ理由がある」などの視点があり、送り手の視点だけではメールの採否は必ずしも占えないように思います。

「 一回読まれた・たまに読まれる」と「読まれ続けてる」の視点の違い

以上、「読まれるメールとは何か」について、送り手・選び手それぞれの視点から考えてきました。

もし「一回読まれる」あるいは「たまに読まれる」でいいのなら、送り手視点で盛り上がりそうな内容を送り続ければおそらくいつかは読まれると思います。選び手からしても、文脈的に他のメールを選ぶ理由が無ければ、内容が良いと思うものを素直に採用するはずだからです。

一方で毎週のように採用され続けようと思うなら、送り手視点に加えていろんな文脈を想像して、「こんなメールがあったらより面白くなるんじゃないか?」などと選び手の視点に立っていろんなパターンを出すことで「使いやすいメール」になり、採用される可能性を高めることができるのかなと思います。特に「自分では良いと思ってないけど、選び手からすると良い」ケースは結構あるので、微妙かなと思っていても勇気を出して送ってみるのがよさそうです。

もし毎週のように読まれているけどパターンは必要ないと主張する人がいた場合、それはとんでもない天才か、送り先に競合が異様に少ないかのどちらかだと思うので、僕ら一般人にはあまり参考にならない気がします。

質の上げ方=読まれる可能性の上げ方

以上で「質とは何か?読まれるメールとは何か?」を見てきたところで、じゃあ「質を上げる」には、つまり「読まれる可能性を上げる」には具体的にどうすればいいのかを考えるのがこの章です。

何度も恐縮ですが、あくまで有名職人と生産性で2-3倍の差をつけられている人間の観点なので、有名職人とはぜんぜん違う観点だったり、本質を外している可能性だったりは大いにあります。その点ご了承ください。

送り手視点への対応:客観的に自分を評価する

書いたメールを客観的に評価して修正できれば、読まれる可能性を上げることができると思います。自分自身でやるのは難しいと思うので、第三者に評価してもらうのが一番でしょう。しかし、一般的には「なんか恥ずかしいし頼みづらい」と思います。

そこで使えそうだなと思う手段が、以下の2つです。

  1. 送った内容を忘れた頃に自分で見返す

  2. 声に出して読んでみる

1つ目、「送った内容を忘れた頃に自分で見返す」ですが、これは主に内容そのものを客観的に評価する方法です。自分のメールを自分で客観的に評価するのが難しい理由の一つに、「内容やその文脈を覚えていて、実は説明不足だったり論理に飛躍があったり、思い込みがあったりすることに気づかないから」があると思います。たとえば、「私はXなんですけど、〇〇さんはYですか?」という内容だったとき、第三者が読むとXとYに繋がりが無く、突然Yの話題になったように見えることがあります。しかし書いている途中の本人には頭の中に何らかの文脈があって、XとYに繋がりがあるように感じてしまっていることがあります。これは文脈を忘れた頃に自分で見返すと、「XとY繋がってへんがな」と気づくことが出来ます。一晩寝るだけでも違うと思うので、リアクションメールでなければ一旦時間を置いてからメールを送る習慣にしてもいいかもしれません。

2つ目、「声に出して読んでみる」ですが、これは主に書き方を客観的に評価する方法です。黙読する限りでは特に問題なさそうでも、実際に声に出して読んでみると
「なんかここ読みづらいな」
「長くて読むのしんどいな、この部分ムダだな」
「誤字脱字があるな」
ということが分かって修正できます。
ちなみに、僕はやったことありませんが、「音声読み上げ」で代替できるかもしれません。

選び手視点への対応:「パターン量産」と「量質転化」

先述した通り、選び手の視点に立つと手持ちのカード(メール)が多いほど番組作りをしやすいと考えられるので、送り手としては「パターンを出す」ことが重要になると思います。A以外にBとかCがないか?と常に模索することが必要になりそうです。

また、パターンを出すと当然メールを書く量が増えます。量が増えると書き方もだんだん上手くなります。書き方が上手くなると、たとえばAパターンのメールが沢山来てどれか1つを採用したいとき、書き方の差で採用される可能性が上がります。量質転化というやつです。メールを送っている人の中には、「切り口は同じ(ネタ被り)だったけど、自分ではなく他の人のメールが採用された」という経験をした人もいるんじゃないでしょうか?僕は何度もあります。先に届いたメールが優先される事もあるかもしれませんが、特許みたいに先願主義にしないといけない理由も無いので、後から届いたものでも良い書き方ならそちらを採用する動機は十分あると思います。

パターンを意識しだすと、自分以外の採用メールも「なるほど、そういう切り口もあるんだ」と勉強になり、「ならばこの切り口も有り得るよね」と連想が進み、さらに「まとめると切り口Xの部類だから、切り口Yもあり得て、すると切り口C、Dもあるな」など「具体と抽象」を行き来するトレーニングにもなります。勉強や仕事にも活きるかもしれません。以下はそのパターンツリーのイメージですが、思いついた切り口AからBを連想し、それをまとめて帰納的に「分類X」を導いたら、それと並ぶ分類YやZを連想し、そこから演繹的にC、D、E、Fを出していく、みたいな感じです。

パターンツリーのイメージ

ベンチマークの記事で、採用されるコツとして「1個でも多くネタを送ること」が述べられていました。数が多いと「選び手が欲しいパターンにハマる可能性が高まる」のと「量質転化で、パターンが同じでも競り勝つ可能性が上がる」と考えられます。「数を送ると採用されやすい」の本質はこういう事なのかなと、今のところ思っています。

パターンは「深さ」ではなく「幅」を広げる

パターン出しで気をつけると良さそうなのは、原則として「深さではなく、幅を広げる」ことです。以下の図は、切り口Aを深く掘っているイメージです。

パターンを深く掘ってしまっているイメージ

これはたとえば、「好きな食べ物は何ですか?」が切り口Aだとすると、「好きなお菓子は何ですか?」「好きなお鍋は何ですか?」「好きな食べ物第2位は何ですか?」などのように、「好きな食べ物」という切り口は同じで、食べ物だけ変化させているようなものです。もちろん文脈次第ではありますが、原則的には幅を広げる切り口Bのほうが好まれるように思います。

これについて興味深い話が「#6 橋本直と鈴木真海子のCROSS・POD 放送作家オークラさんゲスト回」でありました。「単独ライブのような長時間における漫才の興行化はどうすればいいのか?」という話題の中でオークラさんが、「展開を考えたほうが(客は)より集中できる」「ただ面白いことを2時間やっても飽きる」「笑いの展開というより興味の展開だと思う」という旨の発言をされていて、なるほどなと思いました。

以前「やる木」で「いっぱい脱線するラジオはいいラジオだ」という話が出ていたのですが、脱線するラジオはメールをもとにあれやこれやと盛り上がったあと、「そういえばこれ何の話だったっけ?」とメールを読み直して「あぁそうだった」と思い出すシーンがあります。こういった現象やオークラさんの発言をみるに、人は興味が展開されることを心地よいと感じ、その方が集中できるのかもしれません。

普段の会話でも、たとえば好きな食べ物の話になって、ある人が「お寿司が好き」だとなれば、好きなネタなど一通りお寿司に関する話をした後、「じゃあ好きなお鍋は?」「お寿司の次に好きなものは?」という話を振るより、「嫌いな物は?」とか「外食自体よくするの?」など、少し切り口をずらす話題を振る事が多いかと思います。なぜかというと「興味が展開され、飽きない」からなんだと思います。一方で「好きなお鍋は?」「お寿司の次に好きなものは?」という話題は「興味の展開が無く、飽きる」ことになりそうです。「お寿司」が他に代わるだけで「興味が好きな食べ物に向いている」ことは変わらないからです。

こういう人間の特性を踏まえると、深さを掘るよりも幅を広げる方がいいんだろうなと思います。

当然ですが、番組の流れ的に深く掘ることが前提になっている文脈なら掘ったほうが良いです。あくまで一般論としては幅を広げるほうが好まれるだろうなというお話です。

質についてまとめ

「質の高いメールは採用されるメールである」とすると、「一回だけ」や「たまに」ではなく「採用され続ける(=高い質であり続ける)」ためには、送り手と選び手の視点の違いを認識する必要があると思います。その違いを意識し、いかに自分を客観的に見れるか、いかにいろんなパターンを提案して番組を盛り上げる手助けができるかが大事になってくるように思いました。

ということで、これからもいろんな切り口でいろんな提案ができるよう、精進していきたいと思います。もしかしたら一年後にぜんぜん違うことを言ってるかもしれませんが、メールを送る個人的な動機である「ノベルティ欲しいな」とか「番組を盛り上げたいな」という気持ちは変わってないんじゃないかなぁと思います。

もしあなたがラジオのメールに興味はありつつまだ送ってみたことがないのであれば、軽い気持ちで送ってみませんか?最初の一通目を送る時は確かに緊張しますが、一度送ってしまえばあとはもう気持ち的にユルユルです。ポンポン送れてしまいます。どんなに恥ずかしい内容を送って不採用になっても、それを見るのはスタッフさんだけ。こっそり闇に葬ってくれるので世に出ることもないし、何も恥じることはありません。僕自身、数で見れば6千通ほど送って、約6千通が不採用になっているわけですが、それでも図太く生きています。
バズらせていいねやリツイートを稼ぐのも気持ちよいと思いますが、あなたの好きなパーソナリティに名前を読み上げられるのも、なかなか嬉しいもんですよ。

ラジオ余談

ここからはあんまり本題と関係ない、ラジオにメールを送ってて感じることをつらつらと書いた余談です。

自分のメール内容を超える瞬間

特に芸人さんや手練れのパーソナリティのラジオ番組で、「あのメールをここまでのクオリティに仕上げてくれるのか!」と感動することがあります。

芸人さんやアーティストだと、その高すぎる表現能力で、元のメールの5倍、あるいは10倍くらいメールの内容を面白くしてくれることがあります。自分ですら意識していなかったのに、「そんな読み方があるのか!」「そんな間の使い方をしてくれるのか!」と感動するんですね。あいみょんやAマッソの加納さんの読み方がすごすぎてシンプルに「天才すぎる」ってなったんですが、「作家の仕事ってこういう楽しさなのかも」ってちょっと勘違いしちゃうくらい、新感覚な体験でした。

ほかには、手練れのパーソナリティの場合、送った質問内容をそのまま話題とするのではなく、メールを元に本質的な内容を引き出す質問に再構成してくれる瞬間があります。聞き手としての力が優れまくっているゆえ、メールをたたき台としてもっと人を掘り下げることができる質問にリデザインしてくれるんですね。秋元康さんのラジオにメールを送った時にこれを感じたんですが、自分の薄っぺらさを見透かされたようでビビり散らかしたのと同時に、ブレストじゃないですけど自分の拙速な内容がより良い問いを生むきっかけになれたような感覚にもなり、それがすごく嬉しかったです。

単に採用されて嬉しいだけじゃない楽しみがあるんだなと、これらのことから感じました。

辿り着く先は自己分析

メールを送ってて少し大変だなと感じるのは、選び手からのフィードバックが原則「採用 or 不採用」の二値しかないことです。箸にも棒にも掛からない状態なのか、悪くはないけど良くもないのか、いい線いってるけど惜しいのか、ホントに最後の最後で競り負けたのか、その辺のグラデーションは分かりません。番組側にメール教育の義務は無いので当たり前ですし、その辺は採用されたものを分析して自分で見当をつけ改善していく必要があるんですが、これは突き詰めると結局「自己分析にたどり着くんだなぁ」と感じます。何が得意で、何が不得意なのか。いかに不得意な戦いを避けて、得意な領域に持ち込むか。センスのある人にはそんな過程はいらないのかもしれませんが、僕みたいな一般人には必要になる過程だなと思いました。

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