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鉄道ファンに投稿予定だった「奥出雲おろち号食べ鉄道中記」

note開設しての初投稿です。既に皆様も報道でご存じかと思いますが、旧国鉄型のディーゼル機関車と客車を使ったJR西日本の木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」が2023年で運行を終了すると発表がありました。木次線だけでなく島根県の貴重な観光資源として役割を果たしてきただけに、ローカル線の存続という観点でも考えさせられる出来事になるのは確実です。投稿の1回目は2018年の11月にこの列車に乗ってきたときの乗車記をまとめています。鉄道ファンに投稿予定だったのですが、家庭の都合で流れてしまったので、改めて幻(?)になってしまった記事を掲載しますのでご覧くださいませ。


奥出雲おろち号 食べ鉄道中記

奥出雲おろち号(以下、おろち号)は、平成10(1998)年の運行開始以来、平成30(2018)年の4月で20周年となり、木次線の名物列車として、島根県の貴重な観光資源の一つとなっている。本列車は、トロッコ列車として有名だが、実は車内販売や事前予約の食事などが充実しており、食楽列車としての一面も併せ持つ。筆者は、11月中旬に食にテーマを当ててこの列車に乗り、レポートをまとめた。

■おろち号に乗るまで
おろち号は木次発着(日曜日と特定日は出雲市からの延長運転あり)なので、前日の宿泊先である米子からスーパーまつかぜ1号に乗り込み宍道に向かう。宍道からは9時10分発の各駅停車に乗り30分強で木次に到着。到着後、前日に予約しておいたスーパーマルマン木次店のスタッフさんから奥出雲和牛焼肉弁当を受け取り、10時7分発のおろち号に乗り込んだ。

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▲ホーム入線前の奥出雲おろち号 2018-11-16

■木次駅にて
ホームでは、恵みランドの車内販売の方がスタンバイしており、プリンや牛乳、チーズなどを販売していた。ここでお目当ての木次パスチャライズ牛乳を購入。この牛乳は、地元の木次乳業が昭和53(1978)年から販売している日本初の低温殺菌牛乳で、一般的な高温殺菌牛乳に見られる独特のにおいがなく、味はコクのある甘みがふんわりと広がり、まるでさらっとしたクリームを味わっているような濃厚な牛乳本来の味を楽しめる。車内でも買うことが出来るが、恵みランドの販売は出雲八代までなので、早めに確保しておきたい。木次乳業の製品はこの他にも、カスタードプリンやヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、コーヒー牛乳まで充実しており、東京や大阪の専門店でも味わえない味が堪能出来る。

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▲木次乳業の製品を販売している恵みランドの車内販売 2018-11-16

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▲プレミアム牛乳として知られる木次パスチャライズ牛乳 2018-11-16

■木次~亀嵩間
列車が発車し、筆者は、今回の旅のハイライトである亀嵩と八川のそばを購入するまでに、先程受け取った焼肉弁当を頂く。焼肉弁当は、肉にこだわるスーパーマルマン謹製のお弁当だけに、食べ応えは十分。肉は柔らかく脂がほどよく乗っており、醤油ベースの濃厚なタレが馴染んで美味であった。木次を出てから約40分弱。出雲八代で車内販売の方が入れ替わり、クリーム大福を購入することが出来る。ほどなくして出雲三成に列車が着くと、仁多牛べんとうの車内販売が乗り込んでくるので、さらに本格派の牛肉弁当を味わえる。

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▲ボリューム満点の奥出雲和牛焼肉弁当。 2018-11-16

■亀嵩~出雲坂根間
木次から1時間弱。亀嵩に着くと、既にホームには駅でそば屋を運営している扇屋さんのスタッフが3名待機していて、注文を受けたそば弁当を手際よく乗客に渡していた。亀嵩駅は、松本清張原作の映画「砂の器」でもお馴染みであり、知名度が高い。亀嵩のそばはマイルドでコシのある二八そばで、のどごしのよさや香りの高さで期待を裏切らない味であった。亀嵩から20分ほど走ると八川に到着。八川でも店の職人さんがホームで待機していて、そばを目当てに乗客が小銭を持って買う姿が散見された。八川のそばは、トロッコそば弁当と呼ばれ、鰹節や海苔、青ねぎだけでなくもみじおろしや山葵の茎、舞茸、紅白なますも加えられ、インパクトのある見た目だが、味については国内では稀少となった十割そば本来の繊細な旨みを感じることが出来た。亀嵩、八川いずれのそばも、皮ごと挽いた黒味が特徴の出雲そばであり、是非一度は食べ比べてみてほしい。両方のそばを食べ終えた頃には、スイッチバックの起点である出雲坂根に到着した。

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▲亀嵩駅での一コマ。トロッコの乗客は窓からそばを購入する。
2018-11-16(写真はプライバシー配慮のため加工しています。)

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▲乗車のハイライトの一つ、亀嵩のそば弁当。トッピングは鰹節と海苔、青ねぎとシンプルな分そば本来の味が生きている。
2018-11-16

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▲もう一つの名物八川のトロッコそば弁当。十割そばの濃厚な旨みを薬味が引き立てる。 2018-11-16

■出雲坂根~備後落合間
出雲坂根では、停車時間の5分間を利用して延命水を汲んだり駅での物販を買ったりする乗客が多い。中でも延命水は、この駅の代名詞として知られる天然水で、平成23(2011)年の駅舎改修とともに水汲み場もリニューアルされた。筆者も持参のペットボトルで延命水をご多分に漏れず汲む。苦味の少ないまろやかな味が特徴で、緑茶や紅茶にも最適である。往路は5分しか時間がないので、20分停車する復路での利用が最適。現地でも入れ物は購入できるが、ペットボトルは事前に持参しておきたい。また、駅舎の隣では名物の焼き鳥やそば、お菓子、漬物などを買うことが出来る。訪問時はサンライズ出雲のタオルセットも400円で購入可能だった。

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▲出雲坂根での物販の数々。本格派そば弁当も販売している。
2018-11-16

往路での車内販売は終点まで続き、延命水仕立てのコーヒーやお土産等を購入できる。出雲坂根発車後は三段スイッチバックや奥出雲おろちループなど、トロッコ列車としての見せ所に入っていく。

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▲出雲坂根の名物焼き鳥。焼きたてがそのまま楽しめるのが魅力。 2018-11-16

■備後落合から復路
出雲坂根から約50分。終点の備後落合には12時36分に到着した。折り返しの20分強の時間を経て12時57分に木次に向けて戻っていく。復路のおろち号では、前述の出雲坂根以外にも出雲三成で20分の長時間停車があり、駅に併設の仁多特産市で買い物も行うことが出来るので足を運んで頂きたい。尚、復路ではコーヒーやグッズ販売等の車内販売が出雲三成まで行われるものの、弁当や食事の車内販売は行われていないので、食事を重視するのであれば、往路の利用は必須である。

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▲備後落合にて折り返しの準備を行うDE10 1161号機。
2018-11-16

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▲準備中の復路の車内販売。 2018-11-16

■食事の予約先
多くの旅行サイトやブログ、また出雲の國・斐伊川サミットのホームページなどに詳細が記載してあるが、敢えてここでまとめておきたい。なお、列車内で食べられる食事は、前日までの予約が必要なもの(車内販売されないものもあり)が多く、当日の車内販売も数が限られているので、前もって予約されることをお勧めする。

●スーパープレミアムアイスクリームVANAGA
●カスタードプリン
恵みランド(電話0854-42-5151) 前日までの予約可

●奥出雲和牛焼肉弁当
マルマン雲南店<※現在はホック雲南店に変わっています>(電話0854-47-7225) 前日17時までの予約要

●焼きさば押し寿司
道の駅さくらの里きすき(電話0854-40-0540)前日までの予約要

●笹寿司
飯田屋(電話0854-52-1044) 前日までの予約可

●仁多牛べんとう
竹葉(電話0854-54-0213) 前日までの予約可

●てなづちの里の「クリーム大福」
田村屋(電話0854-54-1517) 前日までの予約可
※販売は土・日・祝日のみ

●亀嵩の手打ちそば弁当
扇屋(電話0854-57-0034) 予約は当日の10時まで

●八川のトロッコそば弁当
八川そば(電話0854-52-1513) 予約は当日の10時まで

■終わりに
三江線が2018年の3月末に廃止となり、木次線は次の廃線候補として新聞や各種メディアにも度々取り上げられるなど、沿線人口や乗客の減少により、存続の危機が叫ばれている。奥出雲おろち号も経年40年を超えるDE10(もしくはDE15)と12系客車によって運行されているため、老朽化による継続運行が危ぶまれているとも言われており、状況は予断を許さない。今回の乗車は、自然や人とのふれ合い、おもてなしの素晴らしさを食を通じて改めて感じることが出来た旅となった。このレポートが、奥出雲の食や自然、人の温かさなど、豊かな魅力の再発見につながり、木次線に乗って頂く一助になればと願っている。

謝辞
今回の奥出雲おろち号乗車に際し、雲南市観光ガイドの上代昇さんには木次線沿線の観光に関する助言等で大変お世話になりました。紙面をお借りして感謝を申し上げます。

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▲乗車中にお世話になった雲南市観光ガイドの上代昇さん。
(写真掲載は本人の許可を得ています。)2018-11-16

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