第一次世界大戦はなぜ起きたのか?1

ロシアのウクライナ侵攻が第三次世界大戦に繋がる、あるいは既にはじまっているという意見がしばしば聞こえますが、本当にそうなのでしょうか?
「歴史は繰り返さないが韻を踏む(History doesn't repeat itself, but it does rhyme)」という言葉があるように、歴史は全く同じことを繰り返すわけではないけれど、似たような出来事が形を変えて起こり続けます。そこで、ここではこの問題を考えるにあたって、まずはなぜ第一次世界大戦(以下WW1)が起きたのかを振り返っていこうと思います。

高校で世界史を勉強してきた人は、WW1のはじまりといえば「ボスニアのサラエボでセルビア人がオーストリア皇太子を暗殺した」というフレーズを思い出すのではないでしょうか?1914年に起こった、いわゆる「サラエボ事件」ですが、これはあくまできっかけの1つにしか過ぎませんでした。そもそも、最初から「世界大戦」を起こそう、あるいは起きると考えていた国は1つもなかったのです。実際、このサラエボ事件の後でオーストリアでは対セルビア強硬論が強まりましたが、当時同盟国だったドイツの支援があればロシアの介入を防げると考えていました。(オーストリアvsセルビアならオーストリアが圧倒的に強いので短期決着していたと考えられます)このオーストリアの要請に対し、ドイツは「白紙委任(無条件の支持)」を与えました。ここから雲行きが怪しくなります。調子に乗ったオーストリアはサラエボ事件の代償として、ドイツもびっくりするくらいの無理難題をセルビアに突き付けました。元々勝ち目がないと思っていたセルビアはこの難題を呑もうか迷っていましたが、今度はロシアがセルビアに「白紙委任」を与えます。これによりセルビアも調子に乗って要求を突っぱね、オーストリアは宣戦布告しました。

この後ドイツの同盟国であるフランス、またイギリスも参戦を決定し、戦争が勃発しますが、この時でも当事者達は「世界大戦」まで発展させるつもりはありませんでした。例えばあるドイツの指導者は「戦争は3~4か月で終わるだろう」と言っていました。しかし彼らは機関銃、毒ガス、戦車など、戦争の技術がどれだけ高まったのか認識しておらず、扱っている軍人でさえもその威力に驚くほどでした。こうして開戦から5か月間でフランス軍は約85万人、ドイツ軍は約68万人を失うこととなり、引くに引けなくなったヨーロッパの国々は「総力戦」を行うことになっていったのです。

続く


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